第六章 無限に広がるGODの世界
GODの値段は、進が貯めに貯めた貯金からでも、十分払える金額。
そして、GODを調べているうちに、月下が何故自分にこのゲームを進めたのか、その深層心理も進は分かってきた。
子供達限定のサーバー、COWでは、野球やサッカーが思う存分楽しめる『グラウンド』や『芝生』があったり、ボードゲームやカードゲーム、雑談が思う存分楽しめるカフェもCOWのあちこちにある。
しかも、カフェやレストランでは本当に食事を取る事ができる・・・が、リアルの食品が胃袋に入るわけではなく、あくまで『食べた感覚』が味わえる。
だが、それでも十分に凄い話だ。
正確には、脳を錯覚されているのだが、ダイエット器具としてもGODが注目されているネット記事を見た進は、思わず唖然としてしまう。
そして、カフェで食事を注文して食す際には、GOD通貨である『DC(ドリーム コイン)』が必要であり、この仮想通貨は課金で簡単に現金から変えられる。
GODを持つ子供は、お小遣いを全てDGに変換するのも珍しくはないらしく、親側が使うDCを制限したり、安易に課金できないようにロックをかける・・・等、『親側』の設定も充実しているGOD。
物価は現実世界と変わらず、食事をする以外にも、COWでは『ゲームセンター』や『ショッピングモール』もあり、DCの使い道はそれぞれ多種多様に分かれている。
ゲームセンターも現実世界と変わらず、UFOキャッチャーや音ゲー、メダルゲーム等の多種多様のゲームが満載。
更にこのゲームセンターで、GODの通貨を増やしたりする事も可能。
だが両親にDGの制限がかけられている場合、儲けたDCは全プレイヤーに均等に分配される。DCが目的ではなくても、メダルゲームを楽しんでいるプレイヤーも少なくはないからだ。
その上、UFOキャッチャーで手に入れたぬいぐるみやフィギュアは、後々郵送で送られる。
ショッピングモールでは、流行の服を試着できたり、GOD以外のゲームの体験版がプレイできたり、雑貨を見て回ったり・・・と、本物のショッピングモールの様な豪華なラインナップ。
そして、ショッピングモールで気に入った物を見つけた場合は、連動するスマホアプリを通じて、ネット通販で購入できるシステムになっている。
購入にはDCではなく現金が必要になるものの、わざわざ自分から出向いてショッピングモールを散策する必要も、親が子供と連れ添いながら服を探す必要はなく、現実世界の混雑防止にも一役買っている。
また、COWサーバーでは、子供が無理なく払える金額や品揃えで、五千円以上の品物はそれほど売られていない。
なので、子供のDC使い過ぎをあらかじめ防止するシステムも導入されている。
GODでは現実と同じ季節が反映され、春には桜は、夏には向日葵が、秋には紅葉が、冬には積雪が、まるで現実世界と同じくらいリアルに体験できる。
お花見を楽しむのも自由、虫取りをするのも自由、紅葉狩りをするのも自由、雪合戦をするのも自由。
とにかくGODでは、多くの子供達が多種多様に楽しんでいる。
また、サーバーはCOWだけではなく
大人専用の『AOW(アドット オンリー ワールド)』
大人子供性別問わず、様々な趣味で構成されている複数サーバー『HW(ホービーズ ワールド)』
等、GODはもはや、衛星と惑星が共生する『宇宙』の如く、広大な世界と多く人々がひしめき合っている。
キーン コーン カーン コーン
キーン コーン カーン コーン
「・・・あっ・・・」
気づけば、もう午後の授業は全て終了していた。下調べだけで、進はすっかりGODの魅力に取り憑かれてしまったのである。
ずっと下ばかり向いていた進は、痛くなった首を回しながら、いつもよりもちょっぴり晴れやかな気分になった自分の心に気づいた。
流れゆく時間をただ呆然と過ごしていた彼にとって、久しぶりに熱中できる事が見つけられた喜びは、まさに『藁を掴んだ』感覚である。
「月下ー、帰ろーぜー。」
「あ、ごめん。今日委員会会議なんだ。」
「そっか・・・
お前から教えてもらったGOD、俺もやってみようと思うんだけ
ど・・・」
「あっ!
じゃあ、キャラ作成時の画面でさ、『お友達紹介コース』を選んで
よ。」
月下はそう言うと、徐に鞄の中からノートを取り出し、端を引き千切る。そこに何かを書いて、進に手渡した。
そこには『ツキノシモ』と書かれている。どうやらそれが、GOD内で使っている、月下のプレイヤー名らしい。
「実はね、今『お友達紹介コース』を選ぶと、紹介したプレイヤーにも新
規プレイヤーにも、『5000DC』がプレゼントされるんだ!」
「へぇー・・・
・・・まさか月下、ソレ狙いで俺にGODを勧めたのか?」
「あー・・・じゃあ会議行ってくるー」
月下は、そそくさと教室から出ていく。そのちゃっかりした配慮と態度にに、進は思わず笑みを溢す。
だが、教えてもらった事自体は、本当に有難いと感じていた。
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