第三章 ゲームも進化した
「・・・ねぇねぇ、進は『ゲーム』とかはやらないのか?」
「・・・『ゲーム』かぁ・・・
昔はよくやってたけど、今はもう全然だな。最近だと、スマホがあれば
できるんだっけ?」
進は、お弁当に添えてあった箸を咥えながら話す。
ちなみに月下はいつもパン。4時限目が終わると大半の生徒が、そのコンビニか、学校内の学食、購買へと向かう。
買える品物がそれぞれ違う為、一年生の後半辺りになると、何処で何が売られているのか大体記憶できる。
月下が足繁く通っているのは、そのコンビニ。コンビニに売られているパンを2・3個と、適当に飲み物を買って、また学校へ戻って来る。
毎回買うパンは決まっておらず、よく進のお弁当に入っているおかずと一切れを交換している。進にとって、コンビニのパンですらも高価に思えてしまう。
かつてコンビニでバイトをしていた時は、賞味期限が迫っている品ならいくらでも提供してもらえたからである。
『世の中に只より高いものはない』とは、よく言ったものである。
只でパンが食べられる事が当たり前になっていた進にとって、代金を支払ってパンを食べる事自体が、とても馬鹿馬鹿しく思えていたのだ。
コンビニだけではない、カラオケ店のバイトをしていた際にも、売れ残ったメニューを消費するのも、バイトの特権であった。
カラオケ店の店員からは、「そんなに貧しい家だったっけ?」といじられた時も。
だが、進はそんないじりにも明るく冗談混じりに返しながら、恩恵を有り難く頂戴していた。
実際に店側も助かっていたのは事実である、売れ残った商品は、店側が責任を追って処分する。その処分にかかるお金も、お店側が負担する。それが少しでも削れるのであれば、店側としても喜んで進に提供していた。
しかし、そんな環境に慣れてしまった『罰(ばち)』なのか、それとも『自業自得』なのか・・・
「そうそう、今ってダウンロードするだけで、RPGでもパズルでもシュ
ーティングでも何でもできるからさ。
昔みたいに、ゲーム機やカセットを買う必要もなければ、無料で遊べる
ゲームもあるんだ。」
「懐かしいなぁ・・・
今はもう『カセット』なんて必要ないんだろ?」
「それもダウンロードで全部できる。」
進が最後にゲーム機に触れたのは、高校受験が始まる3年生直前。
受験にうつつを抜かさない為、貯金の為、ゲーム機やカセットは全て売り払ってしまった。
だが、それと同時にスマホデビューも果たしている。スマホでゲームができる事は知っていたが、そこまで進化しているとは思わなかった進。
進はスマホを『連絡用の道具』としか認知しておらず、SNSも友人に勧められた始めたに過ぎない。
もはや今の時代、連絡方法もSNSに変わっているのである。『メール』という単語自体、もはや『古臭い言葉』と化している。
進もSNSで友人と安易に連絡が取れる事に関しては喜んでいたものの、それ以外にSNSを使う事はほぼ無い。
魅力的なキャラや、煌めくファンタジー世界がSNSを通じて宣伝をしていても、進の興味をそそる事はなかった。
というのも、最近では誰でも『課金』に足を踏み込みやすくなったと同時に、『課金』に関するトラブルも多く発生している。
特にお金の管理がまだあまり上手くない子供が、親のキャッシュレスを勝手に使ったり、違法なサイトで課金を無料にしてもらう代わりに個人情報を売り渡してしまったり・・・と。
ネットの問題もそうだが、スマホの問題もまだまだ終わりが見えない。
学校側も生徒に色々と特別講義を受けさせて対策はしているものの、大人の仕掛けた巧妙な罠や詐欺には、もはや誰にも追いつけない。
最近では課金関連で家族との間に亀裂が生じたり、友人関係が崩壊する話もよく聞く。
SNSやネットを覗いていれば、そうゆう話はいくらでも出てくる。進もそれらに脅されてしまった人の一人なのである。
別に課金やゲームが悪いわけではない。それらを使って、悪いことを企んでいる人間が悪いのである。
ただ、そうゆう被害に遭ってしまうと、払ったお金は戻って来ない。
特殊詐欺やオレオレ詐欺も、騙されて奪われたお金は返って来ないのが普通。
そのまま泣き寝入りした悲劇は、ニュースでもしばしば取り上げられている。
『正直者が馬鹿を見る』・・・とは少し違うものの、現代において、簡単に他人を信用したり、他人に同情するのは、破滅への道。
それは進も月下も、学校側に散々教えられてきたのである。だからこそ余計に、手を伸ばしにくい存在になってしまった。
元々好きなアニメも映画もない進にとって、『コラボ』やら『期間限定』という言葉にすら魅力を感じていない。
大人よりも流行に敏感な学生なら、そうゆうゲームには少なからず手を伸ばすものの・・・
進のスマホの中に入っているアプリは、数個程度であった。逆に月下のスマホになっているアプリは、軽く十を超えている。
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