(二)-8

 しかしながら、このとき私の知らないところで事態は悪化していた。というのも、寺庄はこの件を、弁護士を介して会社を訴えていたのだ。

 寺庄本人はともかく、彼の父親は国家公務員の官僚で、彼と同じ帝大卒だった。そのため、その友人知人の中に法律に詳しい人間、即ち法曹が幾人かいたようだった。それもあり、寺庄は父親に泣きついて弁護士を立てて裁判に訴え、悪評と軽蔑けいべつ顰蹙ひんしゅくの求心力を核とするプライドを守ることに決めたらしかった。

 面談では、「産休を取ること自体は問題がないのだがねぇ……」とマネージャーは口を濁した。


(続く)

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