敵
バブみ道日丿宮組
お題:メジャーな負傷 制限時間:15分
敵
僕は無力だった。
目の前で殺される彼女の姿をただ見るだけで、手を伸ばすことすらでき……いやしなかった。
拘束というものも一切されてない状態で、僕はただ死ぬのを眺めてた。ナイフで刺された傷がじんわりと痛むのと、頭痛が酷くした。
これでいったい何度目だろうか。
僕の周りはみんな死んでく。
はじまりは両親。あおり運転からの事故で、乗ってた僕以外みんな死んだ。家に残された妹でさえも、強盗が家に侵入し、四肢損害という形でばらばらになった。
天涯孤独となった僕は、広い家でただ一人生活してた。
お金は保険金として支払われ、学生時代を過ごす分には十分なほどの額がうまれた。親戚の元にはいかなかった。腫れ物のように思われてたから当然だ。お金欲しさに話かけてきた人もいたけれど、その後事故にあったということを噂に聞いた。
そうして僕は大学生になり、伴侶を得た。
そのはずであったのに、繋がりをもったはずなのに、幸せを願ったはずなのにーー。
プロポーズして、わずか3日にはこうなってしまった。
その後ーー事件として扱われ、僕は病院で過ごすことになった。
残されたのは、思い出という儚い記憶。
彼女の親とは会わなかったというよりかは、会う機会すらなくなった。
挨拶という挨拶もできなかった。
事件現場にいた男としての認識でしかない。
僕は誰ひとりとも交流してはいけないのかもしれない。
ただのAという人間として世界に浮遊しなくていけないのかもしれない。
退院後、家に戻るといろいろな手紙が届いてた。
いわゆるカルト集団の勧誘。
ーーあなたには救いが訪れます。あなたをぜひメンバーに加えたい。
笑いがこみ上げてくるような文言が書かれてた。
でも、そういった集団に僕はいるべきかもしれない。
世界が否定するのならば、僕が世界を破壊しなければならないのかもしれない。
そう認識を改めると、書かれてる地図の場所へと足を向けた。
敵 バブみ道日丿宮組 @hinomiyariri
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
関連小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます