第51話
場所はフレッゾの街がある荒野。
そこには俺が無数に解き放ったゴーレムたちがいる、そいつらと視界を共有することでフレッゾの街の冒険者と兵士たちとアンデッドリザードマンたちの戦いについての情報を逐一確認できる。
最も夜だし冒険者たちの方も光も何もない荒野に打って出るわけにもいかず、フレッゾの街の入り口に集まっているだけの状況だった。
一方のリザードマン軍はフレッゾを街を取り囲み、全方位から攻めてやろうという感じである。
……ただリザードマンたちのほとんどはアンデッド、見たところ知性のある上位のアンデッドモンスターになってるヤツは見当たらないし、壁を登ったりできるのか?
詳しくは俺には分からないが案外形だけで フレッゾの街に降伏宣言でも迫るするつもりなのだろうか 、俺にはこの世界のアンデッドが朝も活動できるのかについても知らないしな。
まあそれは後回しにして例のリザードマンネクロマンサーのところの近くに待機させてあるミニチュアサイズのリザードマンゴーレムと視界を共有した。
連中が今どんな会話をしているのかちょっと確認してみよう。
「完全包囲完了しました。いつでも突撃出来ます」
「よしっ先ずは先鋒に突撃の指示を!」
「ううおオアア~~~~」
「グルール様! ソイツはアンデッドリザードマンです!」
「……間違えた、全く……夜だと生きてるヤツとアンデッドの区別がつきにくくて困るな! 何よりコイツら臭いんだが!」
「それはネクロマンサーに弟子入りしたグルール様のせいかと、他のリザードマン達にもアンデッドの異臭は不評ですよ」
「…………マジで?」
そして会話内容を確認するがまあ大したものではなかったな。
このネクロマンサー野郎、もう完全に勝ったつもりでいるようである。
部下に対して説明する言葉もコントみたいと言うか………。
俺はそう言う余裕ぶっこいてるやつの鼻っぱしらをへし折るのが好きなのである。
そうっこいつら気付いていないのだ、自分たちの頭上にこの俺が用意した特大のゴーレム、ハンドがいることに。
黒い雲と化した雷雲の手がゆっくりと地上に降りてフレッゾの街を取り囲むリザードマンたちを飲み込んでいく。
あの手に飲み込まれたら最後、その内側にあるのは荒れ狂う氷嵐と稲妻の坩堝である。
リザードマンのアンデッドなんぞ瞬く間に凍り付けにされ、稲妻で粉々だろうな。
ハンドからは発生した稲妻によって所々体がピカッと光る。さらに稲妻の音も轟くのでアンデッドたちがやられはじめた事は直ぐにバレる。
流石にネクロマンサーたちも気づき始めた、しかし真っ黒な雲が自分たちを攻撃しているとはまさか 思わないのか状況が理解できないのかネクロマンサーたちは混乱していた。
ドゴォオオオオオォーーーーンッ!
「なっなんだこのとんでもない音は!?」
「かっ雷かと!」
「馬鹿な、雨なんて降るはずがない!」
「しかし……」
フレッゾの街の人間たちは稲妻の轟音に対してリザードマンたちが何か攻撃をしてきたのかとこちらも混乱していた。
どちらも混乱していると何をしでかすかわからないのでさっさとリザードマン たち の掃除を完了してしまおう。
ハンドがフレッゾを包囲するリザードマンネクロマンサーやアンデッドリザードマン達を手の平で掬うかの様に呑み込んでいく、やがてハンドがフレッゾをくるっと時計回りに一回転した。
あの一番偉そうなリザードマンネクロマンサーもハンドに呑み込まれたよ。今な。
「なっなにが起き……ギャアアアアアアッ!」
ドゴォオオオオオオオンッ!
やがてリザードマンネクロマンサーの断末魔が俺の耳に届くが、すぐに稲妻の轟音にかき消された。
荒野に隠れていれば良かったものを、この俺がいる時にこのフレッゾの街で現れたのが運の尽きだったな。
最強の億エルフさんの最強たる所以をその身に味わうがいい。
億エルフサンダーイグニッションだ。
俺は心の中でまた今後使うつもりもないワザ名を唱えるのだった。
「さてっと、リザードマンたちの掃除は終わったぞ、お前らはどうすんだ?」
「……くそったれ」
「テレポート!」
魔族2人組は魔法で一瞬にして消えた、あのインテリ風……そんなポンポンテレポートなんて反則魔法使うなや。
「………はぁ~~まっいいか、何はともあれ追い返せたんだしな」
足元がフラつく、やっぱりあの酩酊魔法……結構強力だ………な。
俺は意識を手放した。
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