むず痒い
シヨゥ
第1話
出会いというのは偶然におこるものだ。もし必然的に出会おうものならそれはどちらかがストーカーの可能性がある。気を付けるべきだ。もしかしたらかなり前からターゲットにされ、つかず離れずの距離で観察されていた可能性すらある。
話しがずれた。出会いというのは偶然起こるものだ。学校で、職場で、道端で。偶然出会うのだ。
そしてたまたま気になりだしたらそれは恋だ。ひとめぼれだ。恋に落ちる瞬間は見ていてむず痒い。
本日入社した後輩ちゃんに御同輩がひとめぼれしたらしい。ずっと彼女を見ている。そして視線が合うと不自然に逸らす。ああなんてむず痒い光景だ。
その視線が気になりだしたのか彼女もまた彼を見だした。そして視線が交わるとにこりと笑う。その笑顔に不格好な笑みを返して視線を逸らす。ああむず痒い。
「こら」
そんな2人を観察していたら先輩から小突かれた。
「暴力はいけませんよ。パワハラで訴えて勝ちますよ」
「何言ってんだ。これぐらい暴力にはならねぇよ。それよりあの光景を楽しんでないでどうにかしてくれ。むず痒くてたまらん」
「先輩もですか」
「あぁ。あいつがあそこまで心を乱しているのを見るのは面白いんだが売り上げに響かねん。どうにかしてくれ」
「とは言っても当事者間の問題ですしね……いっそのこと、くっつけてしまいますか?」
「なんでもいい。あとは任せた」
無責任にも問題を放り投げて先輩は仕事に戻っていく。仕方がない。ここは第三者委員会でも組織して強引にでも仲を発展させるしかない。まずは女性陣を抱き込もうか。そうやって考え始めると楽しくなる。なぜだか仕事よりもやる気が湧いてくる。どうやら色恋というのは他人事でも楽しいようだ。
むず痒い シヨゥ @Shiyoxu
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