第4話

 学校から帰宅すると、小さい猫さんが玄関で「にゃ~ん!」と鳴いて出迎えてくれます。その様子を見て心がほっこりして、思わず笑みがこぼれてしまいました。


「おかえり奈柚なゆずちゃん、夕立が降りそうだったから洗濯物を取り込んでおいたよ」

 部屋に入ると大きい猫さんが洗濯物をたたみながら振り返り、声をかけてくれました。


「ただいま、大きい猫さん。いつも、ありがとう」

 実はしばらく一緒に暮らすうちに、段々と大きい猫さんと意思疎通が出来るようになってきたのです。


 大きい猫さんはとてもお利口でいろんな家事ができます。大きい猫さんのおかげで体操着とブルマが雨で濡れずに済みました感謝です。


「あれ? 腕のところ怪我してるよ」

 私は大きい猫さんの体に傷があるのを見つけ、驚いて声をあげました。


「洗濯物を取り込んでいたら、大家のおばさんにいきなり箒で叩かれたんだ…この変態!って…」

「なんて酷い…!?」

 包帯がなかったので、私はハンカチを大きい猫さんの腕に巻いてあげました。


 その晩はライターで明かりを取りました。とうとうアパートの電気まで止まってしまったからです。

 隣駅の百円ショップまで歩いて行くのは遠かったけど、1個50円のライターを買うことができたのでラッキーでした!。

 でもキャットフードとパンを一個買ったら、もう残りのお金は全部無くなってしまいました…。


 どうしよう…このままじゃ猫さんたちを餓え死にさせてしまう…。一人ぼっちから解放された私は、今度は別の不安に直面してしまったのです…



◇◇◇



 それは、よく晴れた週末の土曜日のことでした。


「ちょっとATMまでお散歩に行ってくるにゃっ!」

 大きい猫さんは何かを決意したような顔になり、二本の後ろ足で器用にシャキーンと立ち上がりました。そして、一匹で散歩に出かけてしまったのです。

 

 その日の夕方、心配して待っていると、大きい猫さんが家に帰ってきました。何処から持ってきたのか、両手にたくさんの食べ物を持って。


 その後も大きい猫さんはお散歩に行く度に、たくさんのお土産を持って帰ってくるようになりました。


奈柚なゆずちゃん、止まってたガスと電気、使えるようにしてきたよ」

 大きい猫さんのおかげで、私も小さい猫さんも餓えずにすむようになったのです。


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