短編:ロボットの国

MrR

ロボットの国は平和です

 Side Xー111


 丸っこくて洗濯機だか冷蔵庫みたいなボディをしている。


 中にはカプセルみたいな形をしたりとか戦車だったりとか様々だ。


 僕は丸っこいカプセルのようなボディで二つ目。

 軍用だからかグリーンカラー。

 武器も内蔵している。


 それが僕、Xー111だ。



 最終戦争で文明が滅んでからどれだけの年月が過ぎただろうか。

 

 僕達はロボットの王国を建国した。


 ロボットの王国は製造工場に作った。


 色んな人達との出会いがあり、色んな人達との別れがあった。


 時には争いもした。


 かれこれ二百年以上の月日は経過しているがいまだ文明復興の兆しは見えない。


 小、中規模のコミニティが点在している。

 

 大規模と言ってもせいぜい野球ドームから遊園地ぐらいの面積である。


 そして野盗やら突然変異した化け物やらが彼方此方にいる。


 それがこの世界だ。



 ロボットの国の一日は忙しい時は忙しい。


 暇な時は暇だ。


 農業とか水の浄化処理とかやって周辺住民相手にぶつぶつ交換している。


 対戦ゲームで盛り上がったり、訓練と称して武器を撃ち合ったりとかもした。


 中にはゲームや漫画、小説やらを創るクリエイティブなロボットまで現れ始めた。


 自分達の事をこう言うのもなんだが自分達はロボットなのだろうかと考える時もある。



 時代が時代なのかやはりと言うか攻撃を仕掛けてくる人間もいた。


 化け物もいた。


 同じロボットもいた。


 とても悲しいことだ。


 自分達はロボット。


 とても長い時間を生きている。


 死の概念を半ば超越している。


 それでも僕達はやがて物言わぬ機械になるだろう。


 その時が来るまでに死を選択してもいい。


 戦って死ぬ事もあるだろう。


 でも眼前のクソ野郎にくれてやる程人生に絶望はしてないし、自分の命は安かないとは思っている。ロボットだけど。



 また一体、別れの時がきた。


 運悪く敵の攻撃で大きな損傷を負ってしまったのだ。


 別れの時はどうするかと言うと思い切ってなにもかも溶かしてしまうのだ。


 放置してもジャンク品として漁られるぐらいならそうした方がいい。


 僕達はそう思っている。


 だけどメモリーチップだけは保管している。


 ロボットに涙を流す機能はない。

 

 必要ないからだ。

 

 でも切ないとか心が苦しいとかそう言うのは分かる。


 ただそれを上手く表現出来ないのだ。



 歴史上、永遠に繁栄した国は存在しない。


 ロボットの国は何時か忘れ去られる時がくるのだろう。


 それはどんな理由になるかは分からない。


 でも僕達はこの国で生きている。


 辛い事。


 悲しい事ばかりでもない。


 楽しいことだって沢山ある。


 それを記憶しつつづけて、その記憶を次の世代に受け継いでを繰り返す。


 それが僕達にとっての生きることだ。


 今日もまた一日がはじまる。


 ロクでもない一日かもしれない。


 退屈な一日かもしれない。


 驚きや発見がある一日かもしれない。


 生きるとはその積み重ねだと思う。


  

 人間の旅人の誰かが言ってくれた。


 もう君達は立派な人間だと。


 人間よりも人間らしいと。

 

 その言葉は僕達の誇りでもある。


 だから今日も一日を生きていく。

 

 このロボットの国で。


 END

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