第2話 転生




『哀れな魂よ。あなたに新しい人生を差し上げましょう』


新しい人生?


『海にちなんだ名前なので、海の生物へと』


ふむふむ


『そして長生きしたいとの要望がありましたので、長生きできる生物へと』


それはいいな、もうあんな死に方はしたくないもの。


『なるほど、それでは身体も頑丈にして、生半可な攻撃は効かないようにいたしましょう』


あぁ、助かります。


『うん、ではこれがいいですね。では、海の管理は任せましたよ』


それは初耳なんですがーーーむにゃ


『いってらっしゃい、あなたに幸がありますように。』







♢♢♢





(ん...)


全身を覆う冷たい感触に気がついた私は、ゆっくりと目を開ける。


(あれ...私は何をして......っっ!!)


記憶が蘇り思い出されるのは貫かれた腹の傷と落下する感覚。


あの瞬間、私は死んだのだと思っていたが...


痛みはないから傷はない..でも意識はある..ということは!!


(これが死後の世界ってことかぁ...)


ふよふよと浮いている感覚もあることだし、私はもう死んでいるんだろうと結論づけた。



(というか、ここどこよ?目の前真っ暗で何にも見えないし)


私は周囲を見渡すと、上の方に何やら光を見つけた。


(光だ!!まずは状況を確認しよう!)


そう考えて私は無我夢中で光に向かった。


今の私には足がないようで、足のような場所をひたすら動かすことで移動ができていた。




そうして徐々に周囲に光が戻ってきたとき、私は唖然とした。


見渡す限り一面の水色、そして魚、魚、魚。


目の前を優雅に泳いでいる。


(は!?水の中!?なんで私水の中にいるの!?)


そういえば飛行機から落ちた時、下は海だったな。


まさか、一命を取り留めたのか?


そして気がつく。


(私の身体、なんか変じゃね?)


なんとかして見れないかと頭を悩ませていると、何やら周囲の状況がわかるようになってきた。


(!!何これ!!?周りの地形とか、何がいるのかが全てわかる!!)


どうやら私は新しい能力に目覚めているようだ。ふふふ。


それはさておき


この能力で自分の確認してみたところ。


とても大きい顎、胸びれのような前肢、長い尾の先端に尾びれ、そして頭の上に鼻孔。


シルエットがあれに似てるのだ。


あの海に生息する世界最大の哺乳類。


クジラに。


(え、私クジラになってない?)



♢♢♢




思い出してみよう。


空中に放り出されて、落ちていくところで記憶は途絶えている。


その後ここで目覚めた。


それまでの間....




あ“!!!


なんか私、神様と話してたわ!!


なんかめっちゃ綺麗な女神様がいました!!!


新しい人生だとか海の生物にとか、長生きしたいとか話したわ!!


なるほど、それらを合わせて考えると....



(私、クジラに転生したのか)


確かに、でかいから襲われて死ぬことはなさそうだ。


でも、クジラが長生きできるかどうかなんて知らないんですが!?


多分、何かと間違えているんだろう。


そういえば...


ここって地球なのかな?


私はとりあえず、海面に出ることにした。


キラキラと光る水面に向かって泳ぎ、水面に顔を突っ込んだ。




ざっばああぁぁぁん



凄まじい量の水飛沫がとんだが、私は空を見ることができた。


今は夜だったのか、月が見える。二つも。





自然に流しそうになってしまったが、ちょっとストップ。


今おかしかったよね?もう一回確認しよう。


月が見える、二つも。




....





はい、ここは地球じゃありませんでした。


あの女神様は、私を異世界転生させてくれたようです。


クジラと言ったらのあれ、とりあえずやっておきました。


あの、水を吹くやつ。


あれ呼吸だからね、やらないと死んじゃうかも。



それよりも!



(異世界転生と言ったら、魔法とかも使えるのかな!?)


私は俄然そこが気になる。


とある異世界転生小説には、スライムに転生してたくさん魔法を使ったりしているのをみたことがある。あの小説はマンガ化もされているし、アニメもやっていた。


つまり、私にも魔法が使える可能性がある。



(まずは、ステータスを確認しないとね!)


というわけで、異世界と言ったらのあの呪文を唱えていきましょう。


せーの!!


(ステータスオープン!)


唱えた瞬間、目の前に文字列が浮かんできた。



名前:なし

種族:オリジン

加護:創造神の加護

生命力:∞

スキル:《海魔法》《音魔法》《無限成長》《鑑定EX》



ほうほう。


私はクジラだと思っていたのだが、違うのか。


オリジンというのはなんだろう?


【オリジン】

世界に1個体しか存在しない種族の総称。数が増えた場合、種族名称が制定される。

※最初の個体には敬称として種族名の頭にオリジンとつく。

(具体例:オリジンエルフ、オリジンドワーフ等)



なるほど。


つまり今現在、この世界でクジラは私しかいないということか。


というかエルフいるのこの世界!!


完璧異世界やんけ!ヒャッホイ!!



ゲフンゲフン、話を戻そう。


私は初めての生物ってことでいいんだよね。


...いいらしい。おっけい。


神様がサムズアップしてる気がした。



この創造神の加護っていうのがどういうモノなのかな?


《鑑定EX》、発動!!



【創造神の加護】

創造神が自ら与えた加護。神の権限の一部を行使することができ、魔力の上限がなくなる。

《物質創造》《時空魔法》の行使が可能となる。



はいきました!チート!チートですよ!


将来役に立ちそうですねぇ!!いつ使うかわからないけど!!!



というか、生命力∞ってのもやばいよね。


生命力っていうのは、わかりやすくいえばHPだ。


なくなればおしまい。死亡です。


これが∞な訳ですよ。



女神様ありがとう!!!


これで長生きできます!!!

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