転生したので異世界でクジラとして生きていきます!
ひかもり
第1話プロローグ
私の名前は七海 あおい。高校2年生だ。
突然だが、今日の私はことごとく運がないようだ。
最寄駅までの道路の渋滞。
子どもの悪戯により発生した電車の遅延。
携帯電話の充電切れ。
それらの影響で集合場所に着くのがギリギリになってしまった。
私、学級委員なのに。
クラスの点呼も終わり、全員で飛行機に乗り込む。
色々あったが、今日は待ちに待った修学旅行!!
高校生活最大の行事とも言える修学旅行、全員が浮き足立っている。
かくいう私も親友ふたりと談笑しながら出発の時を待つ。
この時の私は、この後あんな恐ろしいことが起きるなんて思いもしなかったのだ。
♢ ♢ ♢
東京から沖縄へ向かう飛行機に乗ってから約1時間経過した頃、事件は起きた。
ある1人の男性が突如立ち上がり、通路に出て飛行機の操縦席へと歩いていく。
「ここから先は立ち入り禁止です。席へお戻りください。」
乗務員から注意を聞いた瞬間、男は懐から何かを取り出した。
「動くなぁ!少しでも動いたら撃つ!!」
機内に響く低い男性の声。
恐怖に怯え、言葉を失う乗務員。
「な、何をしているんだ!危ないからそれを降ろしなさい!!」
1人の男性客が声を上げ、男に掴みかかった直後、
パン!!
鳴り響く乾いた破裂音。
膝から崩れ落ちる男性。
そして、、、煙が立ち上る銃口。
倒れた男性客からは、血が広がっていく。
「っっ!!いやあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!」
1人の女子生徒が悲鳴をあげ、機内が阿鼻叫喚をきわめた。
「静かにしろ!!今度はお前を撃ち殺すぞ!!」
天井に向け再度発砲した男はその女子生徒に怒鳴りつけた。
女子生徒はビクッとして静かになった。
「この飛行機は俺たちがハイジャックした。命が惜しければ指示に従え!!!」
男はマスクを被り銃を構え、客席にいる制服を着た少年少女に恫喝する。
同時にさらに複数の覆面の男が銃を持って立ち上がり、私たちに銃口を向ける。
私も通路側の席で動くこともできずに固まっていた。
「政府にはすでに要望は伝えている。そして我々の行動に真実味を持たせるため、機内に設置したカメラは某動画サイトでLIVE中継されている。」
犯人が指さした先にはビデオカメラが置かれており、座席の全体を映し出している。
「お前らは政府に確実に要求を呑ませるための人質だが、人質だからといって容赦はしない。妙な真似をしたら殺す。」
ハイジャック犯はそういうと、機内の前と後ろに複数の人員を置き監視を始めたのだった。
「碧、怖いよぉ...」
隣に座席に座る私の親友、“平塚あかね“は涙を流し私に抱きつく。
「うん...きっと大丈夫だから....」
私は、そう声をかけることしかできないのだった。
♢ ♢ ♢
ハイジャックされて1時間が経過した頃、
「おしっこしたい...」
「え?」
窓側の席に座る親友“西条のぞみ“がボソッと呟いたのが聞こえ、私が振り返るとそろそろとトイレに向かうのぞみの姿が。
「(のぞみっ。危ないよっ)」
「(大丈夫っ。今は近くにいないからっ)」
足音を立てないようそろそろとトイレに向かい、あおい達の視界から消えた。
「大丈夫かなぁ...」
音を立てずに用事を済ませたのぞみがトイレの個室から出た瞬間、
「なんでここにいやがる、妙な真似すんなっていったよなぁ?」
「!!」
待ち構えていたのは覆面の男。
のぞみは即座に駆け出した。
「おい、奴を殺せ」
「は!」
覆面の男は別の男に命令した。
「なんか騒がしくない?」
「うん、のぞみが行った方向だね...」
私はあかねはのぞみの行った方向に顔を向ける。
「ちょっと私行ってくる。」
「え!危ないよ!」
「のぞみが大丈夫か見てくるだけだから...安心して?」
私は立ち上がり、のぞみが行った方向に歩いていくと、
「あおい!逃げて!!」
こちらに逃げてくるのぞみの姿、その後ろには銃口をこちらに向けた男の姿が。
「っ危ない!!!」
私は咄嗟に銃口の向く先からのぞみを押しのけると、その瞬間銃声が鳴り、私の身体を銃弾が貫いた。
「うっっっ!!」
「あおいちゃん!」
倒れた私にのぞみとあかねが駆け寄り、ハンカチで傷口を拭う。
銃弾が貫いた箇所を手で押さえるが、血液は止まることなく傷口から溢れ出る。
熱い、熱い、熱い
傷口が燃えるように熱い。
身体に力が入らない。
思わずあおいは吐血してしまう。
「親分、別の奴をやっちまいました。」
「ちっ、まぁいい。見せしめにはなっただろう。」
ハイジャック犯はあおいの傷を拭う2人を蹴ってどかすと、私の髪を掴んで持ち上げる。
「んっ...」
「今みたいに妙な真似したら、こうなるからな」
そうして男は私を地面に落とすと
「おい!誰かこいつを外へ捨てておけ!!」
♢♢♢
私は担いで飛行機の荷台へ連れていかれた。
「親分からは、荷台の荷物ごと捨てろって言ってたからな。ここに置いておけばいいだろう。」
男は荷物の上に私を放り投げると、荷台の鍵を閉め、元いた場所へ戻っていった。
私はこのまま死ぬのだろうか。
流れた血は多く、意識が朦朧としてきている。
あかねとのぞみは無事だろうか。
みんなは無事だろうか。
飛行機の荷台の扉があき、私は荷物と共に空中へ投げ出される。
落下していく荷物とともに、私の脳裏には今までの思い出が走馬灯のようにフラッシュバックする。
あぁ、私は死ぬんだな。
まだ17年しか生きていないのに。
こんなに心残りが多かったら、死んでも死にきれないよ。
来世では長生きして、心残りを残さない...ように...
しなく...ちゃ......。
こうして私は命を落としたのだった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます