第2話 ヒロインのキャラを吟味しよう!

「おはよう。私はあなたの幼馴染のナツキ。」


目を閉じた和哉の脳内にバイノーラルのような声が響く。


(幼馴染?ナツキ?・・・)


(・・・なんてな。)

(知ってるよ。)

(だって彼女は俺が作り出した架空の存在なんだからな)



「おはよう。私はあなたの幼馴染のナツキ。」


(いい声だぜナツキ)

(俺の好きな声優の声で喋らせてみたんだ)

(折角だから俺の名前を呼ばせよう)


「和哉!起きなさい。遅刻しちゃうわよ。」


(おお、良い感じ)

(「和哉!」のところがゾクッとくるよ)


(しかしだな。)


(ルックスをうまくイメージできてないな)

(じゃあ、あらゆる女性を片っ端から代入してみよう)


女優・アイドル・声優・アニメのキャラクター・・・

はたまた政治家や・女性芸人・フェミニスト・・・

顔は?・身長は?・髪の長さは?・胸は?・リアクションは?・・・


(なんかアバターを選んでるみたいだな)


ナツキは弱音を吐くこともなく、和哉のリクエストにどこまでも付き合ってくれる。


「和哉くん!大好き!」

「和哉のバカ!信じられない!」


(まるで俺のツボを探すような行為だ。)


「おい和哉、コーラ買ってこい」


(いや、俺の知らない俺というやつを、ナツキが引き出すようなプロセスか?)


「和哉センパァい」


(お、これ良い感じ。でも他のパターンも試してみたいな。)


「コラ和哉、このばかちんが」


(これは無いな)




いつまでも続くアバター選び


(このまま今が永遠に続いてしまってもいい)

(このまま何も完成することもなく)

(ただ期待や希望の光が続いていく時間だけでいい)


そうやって和哉はナツキとの時間をいつまでもいつまでも楽しみましたとさ。


おしまい。


・・・のはずだったんだが

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