第22話 空間移動
トイレ事情について話し合った後、俺はまた街に繰り出していた。
慎重にゆっくりと辺りを見渡しながら、ゴブリンに見つからないように歩く。
ゴブリンの数はまた更に増えており、危機感を覚える。
ゴブリン達が野良なのか、それとも
しかも、笠原達が俺らを襲ってきた理由も不明だ。あそこまで執着したのだ。笠原の澪に対する歪んだ愛情はきっと本物なのだろう。だが、フードの男達、
欲望のままに生きるのが目的なのか、はたまた何かしらの大義があるのか。
(ま、どう言う理由であれ女の子を強姦しようとするようなクズをメンバーにするような集団なんて俺は認めないがな)
彼等は、笠原が澪に対して行おうとしていた事に協力までしていたように見える。それだけ見ても、彼等とはとても分かり合えそうにない。
とは言え、一匹狼を気取るつもりもない。ただでさえ、ゴブリンなどに対する対抗手段がないのに、更に別の魔物まで出てきて、人間まで敵になった。
未だ攻撃手段が一般人並みの俺がそれらに対抗するにはやはりこちらも集団に所属する必要があるだろう、
ただ、未だ国や行政からの連絡は途絶えたままだし、人が集まった所に行ってもそこが本当に安全な集団かどうか判断に困る。
とりあえず武器がたくさんありそうな大きな警察署に向かっている。
その間の家々を物色しながらだが。
そう言うわけで、俺がしているのは窓ガラスが割れている家の物資の物色だ。住宅街ということもあって一軒家が多く、窓ガラスが割られている家も多い。
「失礼しまーす……」
誰もいないとは思うが、一応念のため声をかけながら割られた窓ガラスから中に侵入する。
黒い服に黒いニット帽、口はマスクで隠しており手にはゴム手袋をつけている。靴はもちろん履いたまま。
(完全に泥棒だな……)
そう思いながら、まず視覚、次に聴覚、そして嗅覚を使って人がいないことを確認する。
室内は俺の部屋と同じくらい荒らされており、ゴブリンが侵入したのは間違いなさそうだ。
他人の家独特の匂いは少しするものの、気配も物音もなく、机には埃が溜まっている。既に空き家のようだ。
ありがたい、などと思いながら、俺はこれらの物資を回収する。
二人とも掃除、料理、裁縫など家事万能だったのはありがたい。
(俺はそっち方面からっきしだからなぁ)
掃除は月一度するかどうか、料理は卵焼きも作れないレベル。裁縫なんて高校の家庭科以来だ。
(おっ、電池式のバッテリー! ありがてぇ……)
今時なかなか無い電池型のスマホのバッテリーが棚に入っていた。電気が使えなくなった今、重宝するものだ。
そして、二階に上がろうとすると……。
(うっ……、臭うな……)
腐臭が漂ってくる。恐らく死体がある。それが人かゴブリンかは分からないが。
だが、俺は二階にたどり着いたとき、元来た道を引き返すことになった。
何故なら、二階の廊下には大量の死体が散乱していたからだ。臭いし、蠅がぶんぶんうるさいなとは思っていたが、まさか廊下に散乱しているとは。
一瞬だが、ゴブリンの死体も複数あった。と言うことは、恐らく、ここの住人と死闘を繰り広げたのだろう。そして人間が負けた。
俺は心の中で合掌し、次の家へと向かった。
そしていくつかの家を回った俺は、室内は荒らされているものの、遺体のない家の二階に篭り一度休息につく。
「……ゴブリン、多いな。大通りにはうじゃうじゃいやがるし、小道も歩哨みたいな奴らがちょいちょい歩いてる」
人に支配されている魔物もいる。それを考慮すれば、ゴブリン達が二人一組で歩いていることも納得だ。
人間が指揮しているならそれくらいはできるだろう。それと同時にホブゴブリンがコンビニを占拠している理由も。
(ここで
日も暮れ始め、そろそろ一息つきたいところだ。
俺は自身の権能に意識を向ける。
すると、
本来は古い順に移動先が上書きされていくのだが、移動先を固定することにより、上書きされないようにすることもできる。
そんなことをした覚えはないのだが、俺の部屋が既に固定されており、もう三つがフリーとなっている。四箇所全てを固定にもできるしフリーにもできる。家で二度の
(うーん、ぶっちゃけもういらないだろうけどなぁ……)
少し覗いてみるが、ゴブリン達はどう見ても俺が出てくるまで永遠に待つ気としか思えない。
(まあそれは相談してからにするか。どうせ空きが二つあるし)
窓ガラスが破壊されているが、死体のないこの家は緊急時の
そう考えた俺は、白雪家とこの誰かの家を
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