【装備成長】スキルレベル3
再びミース、ゼニガー、プラム、ハインリヒ、ルインの五人で建物内を歩いている。
どうやら以前来た道とは違うようだ。
「――とまぁ、ミースたちにもいずれワールドクエストに参加してもらうことになるかもしれないが、それより先に色々とやって欲しいことがあるんだ」
「やって欲しいこと、ですか?」
「レッドナインの復活にも繋がるかもしれない、大事なことさ」
レドナの復活と聞いて、ミースは息を呑んだ。
ついに――と緊張して身体が硬くなってしまうのが分かる。
それを見たハインリヒは少し困り顔だ。
(やれやれ、十剣人のみんなが脅かしすぎてミースが萎縮してしまっている。
ハインリヒはそう考えながら、少し目的地まで回り道をして〝ある場所〟へ寄ることにした。
今までの静かな通路とは違い、人々の声が聞こえてくる賑やかな場所だ。
そこで剣術の稽古をしている一般の団員たちが視線を向けてきた。
「あー! 団長が自らスカウトしてきたっていう新人だ!」
ミースは大声をかけられてビクッとした。
気を張り詰めていて団員たちの存在に気付いていなかったからだ。
団員たちはワラワラと周囲を取り囲んだ。
どうやらミースたちに興味津々のようだ。
「団長! おかえりなさい! そちらの少年少女たちが噂の新人ですよね!?」
「ああ、そうだ」
「お、俺が噂に……?」
ミースは首を傾げた。
なぜ自分なんかが噂になっているのかと。
「先に本拠地に報告しておいたんだ。将来有望な若者を三人連れて行くとね」
「将来有望ですか……?」
ミースは疑問を投げかけたが、それは団員たちの声によってかき消された。
「あの団長が自らスカウトって珍しいよ!」
「そうそう、団長はこう見えても面倒くさがりで、自分で人の面倒を見たくないからオレたちも自主練ばかりさ!」
「お、おいおい。もっと団長である僕を労り――」
「だったら、団長が稽古を付けてくれよ! ずっと約束をすっぽかしてるだろう!?」
「うっ、それは……」
ハインリヒは他者に稽古を付けるのが苦手なので黙ってしまった。
そしてダッシュで逃げる。
「すまん! 今忙しいので!」
「あ、団長! いつもそうやってはぐらかす!」
かなり情けないハインリヒを四人は追いかけることにした。
追いついたあとのハインリヒは表情をキリッと作りながらミースに言う。
「どうだい? あんな感じで一般団員も大勢所属しているんだ。それに、ほら」
ハインリヒは遠くを指差した。
そこには以前見たような畑部屋がある。
違うのは人が大勢居て収穫中ということだ。
「非戦闘員だっている……というか、十剣人とかの戦闘要員よりも多いくらいだ。ギルドと言っても、必要な力は色々ということさ。急いで道を決める必要もない」
「……それでも、俺は強くなりたいんです」
「まぁ、キミの意志は尊重したいところではあるね。おっと、そろそろ目的の場所に到着しそうだ」
やけに厳重な扉をいくつも抜けた先に、一つの部屋があった。
そこは粗い石造りではなく、滑らかな金属で作られた小部屋だった。
今までの部屋は多目的に作られた部屋に見えたが、ここは中心にある〝モノ〟に特化された部屋のようだ。
そして、ミースはそれに見覚えがあった。
「これは……エーテルコア?」
「そうだ。正確にはレッドナインのものとは大きさが違うけどね」
たしかに数十倍の大きさがある。
「我々はレッドハートと呼んでいる」
「レッドハート……」
「ミースにはこれを修復……いや、【装備成長】させて欲しいんだ」
「い、いやいやいや、俺ができるのは装備だけで……」
「本当にそうかな? ちょっと自分のスキルを再確認してくれ」
ミースは言われた通り、【装備成長】のスキル説明を再確認することにした。
やり方は、最初にスキルを受け取ったときと同じように頭に刻み込まれている。
【装備成長レベル3(レア度Fスキル):レベル1,ダンジョンドロップ品を同種合成させて強化する。レベル2、装備品以外のアイテムにも適用できるようになる。レベル3、魔石による付与効果を得る】
「レベル3? これは……スキルが成長している!?」
「そう、やっぱり成長するスキルだったようだ。とても珍しいケースだけどね」
驚いているミースのことを気にも留めず、ハインリヒは白く輝く魔石を手渡してきた。
「それをレッドハートに合成して欲しいんだ」
「わ、わかりました……」
ミースは言われた通り、いつもの手順で合成をしてみた。
すると、レッドハートは微かにだが輝いた。
「よーしよし! 成功だ! ミース、見てごらん」
「……レドナのエーテルコアも輝いている?」
二つのエーテルコアは共鳴するかのように、同じように微かに輝いているのだ。
「このレッドハートを強化し続ければ、レッドナインのエーテルコアも同調して機能を取り戻していくはずだ。……無愛想な鉄腕泊からの受け売りだけどね」
「レドナが……生き返る……!」
「ちなみにレッドハートの力が蘇れば、
なぜこの巨大エーテルコア――レッドハートを修復するだけでそこまでの神の奇跡のようなことが起きるのかは理解できないが、ミースとしては悪いことでは無い。
「というわけで、次の魔石を試してくれないかな」
「はい!」
今度は黄金色に輝く魔石を手渡された。
何か先ほどより雰囲気に高級感が漂っている。
「さっきのが最後の町フィアノルンで取れたレアドロップの魔石で、今回のが魔王城ゼクスェクスで取れた物だ。レア度としてはかなり違う」
そう聞いてしまうと、ミースは魔石を落として割ってしまわないように慎重になってしまう。
もっとも、魔石が落ちたくらいで割れるかどうかはわからないが。
「い、いきます……――あれ?」
合成しようとしたのだが、なぜか上手くいかない。
スキルが何かを警告しているようだ。
「ええと……スキルレベルが足りないみたいです」
「やはりそうきたか。あ、ついでにこの剣と剣も合成してみてくれ」
「はい……これもスキルレベルが足りないですね」
「なるほど、なるほど」
ハインリヒはアゴに指をやって悩む仕草をしている。
ついついゼニガーはそこへ口を挟んでしまう。
「ど、どういうこっちゃ? このままハインリヒはんが集めた魔石を合成していけばレドナはんが生き返るんとちゃうんか?」
「木偶の坊、静かにしろ」
「そないなことを言うても……ルインはん……」
「スキルレベルが足りないだけだ。成長型のスキルの場合、冒険者レベルと同じようにそれに相応しい行動をしていけば自然と上がっていく」
そういえば――とミースも思った。
最初はスキルレベルなんてなかったのに、それが今になって確認したらレベル3になっていたのだ。
どこかのタイミングで上がっていたに違いない。
そもそも、装備では無いレドナを最初に〝自動人形の神殿〟で修復できたのは、そのときに既にレベル2だった可能性も高い。
魔石を初めて合成したときはレベル3だ。
「というわけで、三人に提案がある」
「なんですか?」
「冒険者学校へ行ってみないかい?」
ミースたち三人は、突然すぎる提案に首を傾げたのだった。
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