こちら異世界転生相談窓口です

響 花坐

第1話契約の時

〈…なた…あなた、聞こえていますか?〉


真っ暗な空間の中、どこからか透き通るような声が俺の意識に直接呼びかけてきた。

目を開けようとしてみるがどうにも目が開かない、というよりも目が…ない?


恐ろしいほど何も感じない。

手も足も、呼吸すらもできない。


〈無理をしてはいけません!あなたは今、魂だけの不安定な状態…無理をすれば前世の記憶が消えしまいます…今からゆっくりと魂の形を整えます、私の言通りにしてください〉


魂だけ…つまり俺は死んだのか?

でもこうして意識を呼び止められてるってことは…え、もしかして…転生!?


〈まずあなたがよく見ていた風景を思い浮かべてください〉


内心興奮も収まらぬ中、言われた通りによく見ていた風景をイメージする。

いつもの自分の部屋…ポスター、フィギュアにラノベ。

毎日身を粉にして働いた給料を削りに削って揃えたの自慢のコレクション達。

普段から舐め回すように見ていたのでやけにはっきりイメージできた。


〈………そう、いい調子です、もう目を開けてもいいですよ〉


少し声のトーンが下がった気がするが気のせいだろう。

重い瞼を開けると、そこは神々しい光に溢れた真っ白な世界だった。

そして目の前には、先ほどの声の持ち主と思われる女神がいた。

真っ白い装束に、美しい長い白髪。

その美しさは、まさに女神といった感じだった。


「よくぞ目覚めてくれました、選ばれし魂よ」


透き通るような声で女神から放たれたこの言葉を聞き、俺は勝利を確信した。

(だって‘‘選ばれし魂‘‘って言ったもん!これはもう異世界転生でしょ!)

前世で幾度となく見た展開に心の中でガッツポーズをする。


「あなたにはどうか私を救って頂きたいのです」


「はい!わかりました!」


俺が少し食い気味にに返事をすると女神は少し驚いたような表情をしていた。


「…!即答とは、流石は運命によってえらばれた魂です」


そう言うと女神は満面の笑みを浮かべながら両手を掲げ大きな魔法陣のようなものを展開した。


「ではこれより私の力の一部を譲渡する儀式を始めます!」


(力を譲渡!?俺TEEEEEもできるんですか!?やったああああ)

ふと聞こえてきた魅力的なワードに、心の中でガッツポーズをしていると、女神は魔法陣を俺の方に向けて問うてきた。


「わが声に応えた魂の子よ!汝、わが願いを聞き入れ天命を全うするか?」

「はい!」

「ならば、契約の証として、今ここで自分の名高らかに叫びなさい!」


そう言われるまま俺は力任せに記憶にある自分の名前を叫んだ。


「俺は…多田 神人だあああああああ!!!!」


叫んだ瞬間白い空間が霧が晴れるように晴れていき、そして気がつくと俺は……






会社のオフィスにいた。




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