詩「世界の形」

有原野分

世界の形

寝起きの指が太くむくんだまま

複雑に絡まって

今にも一つずつ弾けそうな

そんな夢を朝日の向こう側に見た

顔を背けて二度寝したあなたの

月の裏に不時着した離脱症状

わたしたちは歯を磨いてからパンをかじる

まだ手先に絡まったままの気がする

指という指

それはきっと絡まれるより絡む方が心苦しく

 て

わたしは叫んだ

朝日が昇る前のままの

夜が明けることのない世界に

隣で寝ているあなたに聞こえないように

包丁がカランと落ちた

指から流れる血

太陽を殺したい

それがきっと

世界の正しい形なんだと思いながら

野次馬根性の堂々たる光

ニュートンのリンゴを壊すように

猿が狂ったように腰を動かす

光が世界を犯していく

メランコリックな花はいつだってみにくくて

背中に背負った愛犬の骨は

チタン製の鎖につながれている

枕に顔を押しつける

遠吠えがあなたの小さな喉の奥からこだます

 る

降りてはわいてくる守護霊のような雲

風が光から逃げるように

ぶつかって跳ね返って死んでいった

窓ガラスに刻まれたSOS

わたしの指が世界の片隅をつき刺した

引き抜きたい

美しく

穴の開いた風船のように

どうかこの世界が

萎んでいきますように

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詩「世界の形」 有原野分 @yujiarihara

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