【完結】転生して悪役令嬢シナリオをクリアするだけの簡単なお仕事です
るぅるぅです。
1.予定通りみたいです
「危ないーーーっ」
目が眩む程に眩しく光るトラックのライトに照らされたのは、私と飛び出した猫ちゃんだった。
道路を渡ろうとしたのね。とっても可愛らしいグレーの縞々猫ちゃんを私は抱えて人生で味わった事の無い衝撃と聞いた事の無い気持ち悪い音を聞いた。
衝撃が止んで猫ちゃんは動けない私の手からするっと抜けて、とことこ歩き出しこっちを「にゃ?」って可愛い顔で見ていたの。
無事で良かった。
身体の感覚が痛いってのすらないけど濡れて寒いのは分かる。お気に入りだった会社の制服、きっと破れちゃったわね。お局様に怒られちゃうな、満足にお茶も淹れられない癖に借りてる制服をダメにするなんてーって…
お得意様に買ったカステラは無事?
手を伸ばそうとした、と思う。
届いたのかは分からない。
♢♢♢
「死亡寸前の記憶をお教えください。本人確認します」
「ひゃっ?誰?」
「僕は魂の管理者です」
「私…死んだの?」
目を覚ましたら、変な空間に真っ白な帽子付きのパーカーみたいな服を着て無表情の男の子が立っていた。
服には三角を組み合わせた独特の模様があり、私には彼の身体自体から光を放っているようなおかしな影が作られてる…
ざっと自分の見た記憶を口にすると、男の子はこくんと頷いた。
「ありがとうございます」
「私の記憶はそこまでしかないですね〜」
「車の事故で死亡、
「名前バレてる」
「把握してます」
「ふぇえ…淡々としてますねぇ。おつかれさまとか無いのかしら、大仏様の顔ですたーんすたんって書類さばく役所の人みたい」
「それは失敬、何卒数が多いもので」
身体を確認してみると、胸元、腕、太ももの部分が破れてセクシー状態になってる会社の制服が見えた。「いやーっ恥ずかしいっ!」当然叫びながら両手を使って必死で隠す。
「こんなお姉さんの服見て何とも思わないなんて…君は出来る男なのねっ…」
「僕はもう数え切れない人と年月を見てきたんです。身体は脆くて朽ちるのを美月さんは今しがた体験したばかりなのにまだ生きてるつもりなんですね。それは幻影です、美月さんが話しやすいようにしているだけ」
男の子は「こうした方がしっくりくるかね?」と黒い絵の具のようなものを手からぶわっと出して次の瞬間皺だらけで白髪の小柄なお爺さんになった。
「見た目などいくらでも変えられるのだよ、お嬢さん」
声は男の子のままだ。
「見た目ショタのおじいちゃんだったか…」
ここ、天の川かな?ラメが新人レジン作家に、キラキラの夜空を作る為ぶちまけられました!と言わんばかりの不自然な光の数。トラックのライトに照らされるよりずうっとマシだから良いかぁ…とか考えていると、この世界の大仏顔さんが話しかけてくる。
「さて。これからの転生先をご紹介します」
「選べるものなんだ…はっ!ちょま!私の家族がどうなるとかお葬式は一応見届けさせてくれるとかそういうのは無いの?」
「無いです。死んで戻る事も出来ないんだから無関係です。生まれ変わるのに記憶も消すのが基本です。忘れて諦めてください」
「簡単に言ってくれる〜。せめて猫ちゃんはその後も無事だったの?それは教えてよ」
「無事も何も。あれは美月さんを予定通り死亡させる死神猫です。最初から生きてません」
「げっ、ハメられたの?うわぁ、予定通り過ぎるー私の人生って何だったのよ〜っ」
「それなりに楽しかったと調書には書かれてました。人生も死生も僕達の仲間や女神が管理して回しますから。はい、さっさと頭切り替えましょう。次の魂を移す先を選んでください。後押してるんで」
「順番制なんだ…」
お爺さんの姿だとテンションが上がらないよ。
「あ〜のぅ。せっかくだからイケメンになってプレゼンして貰えませんか。せっかくだから」
「良いですよ」
あっさり魂の管理者さんは背の高い流し目がとろけそうな色気のあるイケメンに姿を変えてくれた。
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