こめかみって“痩せる”もの

加齢による容姿の変化には寛容になろうと努めてきたけれど、顔のパーツでひとつ、どうしても納得いかないのが「こめかみ」である。


毎日化粧やら夜の手入れやらで鏡に向かっていると、「前より目尻が落ちてきた気がする」「眉が薄くなって雑に描けなくなってきた」などなど、どうしてもネガティブな感想を持ってしまう。その中で一番理不尽だと思ってきたのが「こめかみが痩せてきた」である。頬がたるんできた、顔のラインがぼやけてきた、そんなのはもはや今となってはどうだっていい。こめかみが痩せてから、一気に「老化が進んだ」っぽさが現れてきたのだった。


10代~20代の方の顔には、どことなくパンと張った、“ハリのある”肌の質感があると思う。それが30代を超え、40歳を過ぎると、ごく一部の美魔女の方々を除いて、「顔の上半身」がやせてくるように感じられる。


わかりやすいのは目の周辺。目尻にシワができやすくなり、目の下のクマが濃くなったり眉山が目立ったりする。その中で目立ちにくいのがこめかみなのではないかと考えている。ひっそり肉が落ちて、生え際と眉・目との間がうっすら窪み、えもいわれぬ影が作られる。顔の上半身以外は、代謝が落ちていって痩せにくくなっているというのに! そんなところだけ自然に痩せるなんて!


化粧の際にハイライトを入れない(なぜなら単純に面倒だから)のに、ハイライトの必要性をひしひしと感じるようになった。ふっくらとはいかなくても、ある程度ハリのある肌に見せられるというのがわかりやすい効果・効能であることに、化粧を始めて26年、やっと思い至った。


身体の下半身にある余計な脂肪がこめかみに回ってくれたら、と、毎日化粧水や美容液、乳液をつけるたびに思う。そんなに都合よく下半身からじゃなくてもいい、せめて顔の中だけでもうまくくっつけたりはがしたりできないもんかな……とも思う。

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