赤星病院conspiracy

@manacuba

第1話 実在の作者manacubaによる前口上

読者の皆さまの前に唐突にご挨拶する者は「心の病」からの自伝的闘病小説であり、はたまた、ダンテ・アリギエリ的恋愛潭、そして邪悪な目標のために作られた向精神薬リスパダール をめぐるconspiracyまさしく「陰謀」––––正確さを期して憲法用語で言うなら共同謀議を記録したノンフィクションでもある『赤星病院conspiracy』の実在の主人公兼作者、語り部のmanacuba(スペイン語読みでマナクーバ)であります。


レディース・アンド・ジェントルマンついでに共謀共同正犯の皆さまもしばらくの間––––それは、私たちが恋人を連れそりバーに赴き、立派な黒革で覆われたメニューから、自分にだけではなく隣のパートナーにも気の利いたチョイスをしばし考える。そしてここは任せて、と、初めにギムレットを二杯、少しばかり通ぶって、ヘンドリックス・ジンを指定し、酒の蘊蓄を垂れながら、バーテンが夏の夕暮れの倦怠にインスピレーションを与えてくれる凍えたショートカクテルを作る工程は眺めながら、そして徐ろに口にし、目を見開き、声にならない感嘆の表情で、お互いを見つめ合うまでの短い時間––––どうかそのくらいはお付き合いください。


昔の日本人の作家––––ようやく日本の隅々に豊かさが行き渡り、人々が人生におけるあまりに深刻で出口の見えない苦しみや葛藤や、敗北を運命づけられた政治的闘争を扱った純文学から、新しい世代の文学、偉大なる二人の村上、村上龍と村上春樹が現れる前までとしておきましょう––––旧世代の文学者たちは自分の書くべき長編小説の練習いや、そう呼ぶには素晴らしい小規模な文学たち––––として短編小節を書きました。


私も偉大な先輩たち、私の直接の先輩二人の村上よりもさらに前の世代の老人たちに倣って、まずは短編を、自分の実体験をもとにし––––初めからイマジネーションで全てを作り上げるのはご勘弁ください––––まずは短編を書いてみようと思いました。それが皆様にお読みいただくこの『赤星病院conspiracy』となります。今はまだネット上のブログでしかありませんが、いずれ立派な大部のハードカバーとして公刊され、書店で手にとっていただけたらと存じます。


なにせこれは短編でありますので、私が体験した「人間喜劇」の要約であり、長い物語のつまみ食いでしかありません。それゆえ書かれていない前後の辻褄を合わせるために作者自らこのような形で補おうと筆を取る––––現代的にキーボードをカシャカシャしているわけです。


このような共同謀議による強制入院に遭ってしまえば––––もう病気がほぼ治ってしまったと判断しているのだし––––そのような犯罪組織からは、別れを告げるのは当然、向こうもそれを望んでいるでしょう。口には出しませんが。


私は不満を口にせず大人しく去る。患者を貶めてしまった主治医横川、赤星病院代表も何も言わず新しい病院への紹介状を書く。もう二度と会うこともない。昔の病院の入り口をくぐることはもうない。


––––はずだったのです!そして問題はその紹介状なのです。若き美貌の精神科医、美谷川真由美医師––––がちょうど違う病院に移ると聞いたのでついて行きました––––私の入院中、何も知らされていない、それゆえ汚い謀略に一切関わる必要のなかった––––あどけないお嬢さんは、まだ私が病気だと思ったままなのです。


私はてっきりかつての主治医横川は紹介状には書くか、こっそり美谷川医師に伝えてくれているとばかり思っていたのです。


そこで私は彼女、まだお嬢さんとはいえ責任ある医師としての守秘義務のある美谷川真由美医師に真実を伝えようとしました。ここで私は入院中自分のPCの中をウイルスで覗き込んで良いと約束したことをすっかり忘れていたのです。


私は再びconspiracy に巻き込まれ、美谷川は新しい病院、倫敦橋精神病院に出て来れなくなってしまうのです。倫敦橋での治療は今のところ一度きりとなっています。


おそらくこれは正しい推理だと私は自負していますが、倫敦橋精神病院は院内のPCにコンピュータウイルスが送られ、何か自分たちの秘密が握られる、あるいはこちらの方が確実だと思われますが、患者の個人データが盗まれ、ハッカーである首謀者氏に脅されたのでしょう。


そして私は再び古巣の赤星病院という戦場に舞い戻ることもなります。その時ハッカーから要請があったのか、私から書くと言ったのかはもう思い出せませんが、横川医師を説得するために、共謀の概略と美谷川お嬢さんの危機、そして私が何故薬に頼らず病気が治癒したのかを簡潔に小説の形で綴ったものが、皆様にお読みいただく短編小説『赤星病院conspiracy』となります。


ではここまでとしておきます。これは長編小説『赤星病院conspiracy』の下準備、前哨戦。いずれ完全の形で皆さんにお見せしましょう。私が再び、そして読者の皆さんが邪悪な共同謀議に巻き込まれないことを願いながら。

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