バタフライ・リープ
衣笠 織
第1話
──ああ、また僕は君を救えなかった。
両手を広げ、空から落ちてくる彼女を見て、何度目かの絶望感が僕を襲う。
次こそは、次こそは君を助けてみせる──
首にかけたネックレスの蝶のモチーフを握り、ぎゅっと目を瞑った。
「周、起きてー!学校遅刻しちゃうよ!」
弾むような明るい声と体を揺すられる振動に目を覚ます。視界に入ってきたのは、見慣れた天井と──
「やっと起きた!おはよう、周」
にこにこ笑って僕の顔を覗き込む、幼なじみのあげは。
「……支度するから、下で待ってろ」
あげはを部屋から追い出して、辺りを確認する。カレンダーの日付は今年の四月十五日。ベッドの傍らには蝶のモチーフがついたネックレスが不自然に輝いていた。
ああ、戻ってきた。ネックレスを拾い上げて陽の光に照らしてみる。きらきらと輝く青色が鮮やかでとても綺麗だ。
僕のこのネックレスには不思議な力が宿っている。あげはが自殺をする度に、このネックレスを握りしめて「次こそは」と願うと、決まって高校二年生の四月十五日へと時間を巻き戻してくれる。
──今度こそ。今度こそは、あげはを救ってみせる。
ネックレスを首にかけ、蝶を握りしめた。
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