『ニジ・カンドラ星人が来た』

やましん(テンパー)

『ニジ・カンドラ星人が来た』


 『これは、すべて、フィクションです。また、悪意はございません。』





     ・・・・・・・・・・


 ニジ・カンドラ星人は、かつて、銀河系のエースであった。


 その母星は、華やかで、清潔で、ちょっと危なくて、しかし、宇宙の秘密の多くを、探りだし、コントロールする技術を産み出したのは、じつに彼らが誰よりも先であり、まあ、なんだかんだと言っても、最終的には、大概、みな、うまくゆく惑星だった。


 しかし、あさどら星人や、ひるどら星人が台頭し、力を得たのに反比例するように、彼らは、落ち込んでいったのである。


 いまや、貧乏金なし状態であった。


 その母星は、輝きも賑わいも失い、吹き抜ける乾いた風に、打ち捨てられた様々な機械や、宇宙挺が、侘しく佇むのみである。


 まさに、『盛者必衰』の格言通りの存在である。


 しかし、けっして、諦めたわけではなかった。


 惑星の地下にあっては、着々と、再興のプログラムが、進行していたのだ。


 つまり、虎視眈々と、復活を狙っていたのである。


 そうして、その、復活をかけて、進出しようとしたのが、まだ、文明開花して間がない、後進惑星、地球だったのである。


 ほどなく、あさどら星人と、ひるどら星人が地球をバラバラにする前に、(この宇宙では、)彼らが先に、地球を占領したのである。


 落ちぶれたとはいえ、地球人の原始的な技術や武器では、まったく、歯がたたなかったのである。


 ニジ・カンドラ星人は、正義感が強く、きれいずきで、ユーモアに富み、受けた恩義は忘れない。怨みもだが。


 彼らは、地球人に、大宇宙で生き延びる意義や、秘訣、新しい技術など、まあ、様子を見ながらではあるが、伝授していた。


 地球を、このあたりの、同盟惑星として、育てたかったのだ。


 まあ、ほかの意図もないではなかったが。




 しかし、なにかと、騒ぎを起こす地球人には、我慢強い彼らも、次第に、腹に据えかねるようになっていったのである。



        🌎



 『総督、地球人は、まったく、あつかいずらいです。狡猾ではあるが、信義に欠け、戦い好きで、互いに殺しあいも辞さない。自分達が負けるなら、地球なんか絶滅させてよいと、考える。野蛮です。また、たいへん、失望です。』


 司令官が、地球総督、トピラーに訴えた。


 『短気は危険だ。司令官。非常に原始的な種族だが、才能はある。有能なものを、育成しているか?』


 『もちろん。その為の、教育施設は、たくさん、創りました。が………』


 『が?』


 『が、根が反逆者的なのです。隙あらば、我らを攻撃したがる。通常のやり方では、洗脳できない個体が、かなりいます。闘争本能が強く、やたら、出世したがる。仲間を、蹴落としてでもね。謀略を巡らせ、徒党を組む。たいへん、やっかいな、種族なのです。このさい、多少。思いきった、強力な刺激を与えてやるべきでありますな。つまり、身の程を、悟らせるべきです。改造波、を使いましょう。』


 『いや、自分は、そうは思わない。彼らのやり方は、尊重しなければならぬ。大皇帝陛下のご意向も、そうである。』


 『畏れながら、閣下。あさどらや、ひるどらが、狙っておりますぞ。情報では、どうやら、同盟を作ろうと、していると。戦いになった場合、地球人を、戦士として使うには、もっと、強力なやり方が必要ですし。』


 『私が、甘いと?』


 『いえ、閣下。しかし、貴方は、学者さまで、文官です。ここは、我々、武人にまかせてみてください。かならずや、大皇帝陛下や、あなたさまのご意向に沿う、平和な、美しく栄える惑星にしてみせましょう。地球人類の、大改造を実行します。なに、改良した、強力改造波を、地球全体にくまなく、もれなく、照射するだけです。我らには、影響はない。すぐに、地球人たちは、平和を愛し、我々と、自らすすんで、共同するようになります。まあ、一部、約8%程から、10%程は、うまく適応できず、錯乱する個体はでるでしょう。それらは、食用にすれば、よろしい。かと。』


 『食べるのは、簡単だが、しかし、それは、皇帝陛下の許可を受けねば。』


 『なんと! あなた様ほどの方であれば、専決事項でしょう。』


 『いや、しかし。』


 『閣下、中庭をご覧なさい。あなたの、ご英断を、みな、待っておりますぞ。あなたが、実際に、偉大なる総督であることを、証明するべきであります。』


 司令官が、テラスに出る扉を開けた。


 すると、ニジ・カンドラの、兵士たちの叫びが聞こえたのだ。


 『総督、万歳。我らの栄光を与えたまえ。総督、万歳……………』


 『あれが、皆の声なのです。落ちぶれた我らの、復活を望む叫びなのです。』


 総督は、美しく華やかな噴水で、手を洗って言った。


 『あなたの、好きなようにやるがよい。私は、干渉しない。』


 『ありがたき、おことば。』


 それから、地球人は、あさどら星人、ひるどら星人の連合軍と、戦うこととなった。


 地球人の半分以上が、命を落としたが、ニジ・カンドラ星人が持つ兵器にも助けられ、なんとか、あさどら・ひるどら連合軍を、撤退させることに、成功したのである。


 地球は、それ以降は、平和になり、まさに、ニジ・カンドラ星の再来とまで言われるようになったのだ。


 ニジ・カンドラ地球は、その先、長く栄えたのである。


 ただし、地球人は、有能な一部以外は、食用として、飼育される立場になり、和平を結んだ、あさどらや、ひるどらにも、食用として、輸出された。


 ここに、支配系の地球人と、食用地球人が、分かたれることになったのである。

 



      めでたし、めでたし。

 

 


 


 


 



 


 

 

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

『ニジ・カンドラ星人が来た』 やましん(テンパー) @yamashin-2

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る