第2話 運命の赤い糸


俺と赤い糸で繋がっていたのは芦途さんではなく…学校で最も愛されてる美人三人衆だった。


いや、なんで三人!?


周りを見ても皆一本だけで俺みたいに数本繋がってる奴は居なかった。


しかし俺と繋がってる女子三人は赤い糸を全く気にしてない様で呑気に会話を続けている。


赤い糸に気付いてないのか?しかしこれは好都合。三人に気付かせない内に赤い糸を跡形もなく消してやる!


俺は鋏を取り出し、赤い糸に刃を当てた。しかし・・・。


「いっ!?」


赤い糸を切ろうとした瞬間バチッと静電気の様なものが発生して俺に糸を切らすのを拒んでる様だった。


「なんっで、切れないんだ!」


人差し指で糸を持ち上げてみるとシュルシュルと糸が回り益々糸が絡まってしまう。


「はぁ〜…。どうすっかなこれ」


一人、赤い糸を見つめて頭を抱えていると。


「成海、どうしたんだよ〜。さっきから一人でぶつぶつと。」


最悪のこのタイミングで俺に近付き肩を組んできた奴が居た。


「さ、真田!・・・な、なんでもねぇから向こうに行ってくれ」


サッと赤い糸が繋がってる右手を隠しクラスメイトの真田、通称エロを極めしリーダーから距離をとるが俺の微かな動きにもこのクラスメイトは敏感に反応した。


「今何か隠しただろ!何を隠したんだ、見せろ!エロ本か?エロ本なんだな!」

「か、隠してねぇから!大体お前、もうちょっと自分の欲をだなぁ!」

「ん…?成海、お前にも赤い糸が繋がってるな」

「なっ!?」


しまった!真田に気を取られて後ろに居る後藤堅物に気付けなかった!後藤の言葉にクラス中が反応し、一斉に取り囲まれる。


「え、成海の相手って誰?」

「もしかしてメガネ《芦途》ちゃんじゃない!?ほら、二人って良く一緒に居るし。」


俺から芦途さんに視線を移した皆の視線は芦途さんの右手に注がれていた。


しかし、芦途さんの右手には赤い糸などなかった。芦途さんには運命の相手は居ないってことか?だとしたら誰と一緒になっても幸せな家庭を築ける?それがもし、俺だとしても・・・。そんな淡い期待も次の芦途さんの言葉で砕け散ることになる。


「・・・私の運命の相手は何処か別に居るようです。なので成海君の相手は私じゃないですよ」


肩を竦めて困った様に笑う芦途さんだったがクラスの連中は残念そうに視線を反らし始める。


「じゃあ一体誰なんだよ。」

「・・・ん」


静かになった教室に小さな、けれども凛とした声が響き渡った。


「え、ユズっち?」


そこには先程まで楽しそうに話していた三人の内の一人、神楽さんが眠たそうな瞳のまま手をあげていた。


「・・・多分、その相手…私。・・・違う?」


首をコテンと傾けながら問う神楽さんにユズっち派のクラスメイトは天を仰いで膝から崩れ落ちてしまう。


「な、なんで…ユズっちが!?」

「グッバイ、マイエンジェル・・・」


クラスの男共はこの世の終わりみたいな顔をしていた。中にはショックのあまり気絶して保健室に運ばれる者も。しかし神楽さんはそんなことを気にもせずに地獄からさらなる地獄に突き落とすかの様に続ける。


「・・・私だけじゃない。この二人もそう」

「ちょっ、ユズ!?な、なんでいきなりそんな・・・」

「はぁ?赤い糸ぉ?あっ、マジじゃん!何これ!?全っ然取れないし!」


神楽さんはポカンと話の一連を見つめていた浅倉さんと新田さんの二人の腕を掴んで引き寄せた。するとみるみるうちに頬を紅く染め、慌てふためく浅倉さん、眉を吊り上げキレる様に糸を引っ張り上げる新田さんと両者対照的な反応が返ってくる。


「う、そだろ?な、なんで二人まで?」

「あぁ〜!!そんなのあんまりだ!酷すぎるぜ、神様!」


まさかの事実に再び男共は倒れてしまう。それを気にせず三人はこちらの方に近付いてくる。


いや、少しは気にしてあげて?


屍の様に伸びてる男共に目もくれず彼女達の瞳には俺だけが映し出されていた。


「ま、そう言う訳だから」


そう言う訳とはどういう意味だ。まさか、結婚を前提に付き合えと言うんじゃないだろうな。


「わ、私…運命なんて馬鹿馬鹿しいと思っていたの。でも、相手が成海君なら信じてみてもいいかなーって」


信じるんじゃない!俺は断固として信じねぇからな!!


「アタシさぁ、アンタの顔タイプじゃないし性格も陰湿ぽくて好きじゃないけど友達がアンタの事信じるってなら私も信じといてあげる」


いや信じなくていい、信じないでください!しかも君、悪口しか言ってなくないか!?


グイッと新田さんにネクタイを引っ張られ、神楽さんに腕にしがみつかれ、浅倉さんに真正面からの上目遣い攻撃を仕掛けられた俺は逃げることすら出来なくなり只々地獄の時間が過ぎ去るのを願っていた。


その後、チャイムが鳴っても中々現れることなく10分遅れでやってきた担任の先生に意味ありげに微笑まれたんだが絶対わざと時間を遅らせただろ!




♢♢♢♢♢♢

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