第45話旅路(番外編)

焚火はパチパチと音を立て、火の粉を散らす。


目的地まであと、数日。


「・・・そろそろ交代だぞ」


馬を使えないので徒歩で目的地に向かっているところだった。


交代で寝て、交代で起きる。


ニナに声をかけると面倒そうに起きる。


「次は私ね・・・でも少しだけ話をしない?」


「まあ、いいが・・・」


焚火に薪をつぎ足し、大きく背伸びをしてからニナは呟くように口を開く。


「あなたはサーウェスに似ているわね。魔物に憎しみはある?」


「いや、それはないな。もし恨むとしたら・・・自分自身だな」


皮肉っぽくコバヤシは呟いた。ここに来るまではロクな人生ではなかったのかと思ってしまう。


それも当然だが。


ニナは遠い目をして、コバヤシに語る。


「サーウェス・・・彼はね。ゴブリンに家族を殺されたの。憎しみを持っていたのは分かってたわ。でも、冒険者としては間違っていると思ったの」


意外な一面だった。もっと冷静な冒険者だと思っていた。


続けてニナは話す。


「あなたは間違えないで。憎しみで強くなっても、後悔するだけ。あなたは人間なんだから生きる時間も少ないでしょ?私たちハイエルフと違って老いていく。・・・だから後悔しないように、憎しみを糧(かて)に生きるような人生にはしないように!」


「ああ、そうなれるといな。ニナ、ありがとう」












夜空の星たちは、俺たちをほのかに照らす。


「おやすみ」


綺麗な空のもとゆっくりと目を閉じた。

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