第33話待ち受けるもの2

「すまない。遅くなったな」


別行動していた勇者パーティと合流した。


どうやら勇者パーティが探索した方は大した収穫はなかったようだった。


もっと大規模に敵が展開していると思ったのだが、思ったよりゼパルの部下は少ないようだった。


「アンジェリカ、これを」


「なんだ?」


先ほど手に入れた敵の配置された場所の地図を手渡す。


「これは・・・!助かる、どこで手に入れたんだ?」


「ゼパルの部下のダークエルフの連中が持っていたものだ。隠し持っていたのを手に入れた」


「さすがだな」


皆に「小休憩だ」というと冒険者達は腰を下ろした。そして、アンジェリカは持っている地図を見る。


・・・と、


「なんだ?」


「コバヤシも見てみろ」


アンジェリカはコバヤシを呼ぶ。一緒に地図を見るように言われたのでコバヤシも目を通した。


「私もみたい」とアリスもこちらに来た。


コバヤシがアリスもレンジャーの技術があることを説明するとアンジェリカは大きく地図を広げた。


「私が見た感じ部下は10人くらい、奥には恐らくゼパルがいる」


「ああ、部下もそんなことを言っていたな」


落ちた天使の1人、ゼパル。


ダメージを与えられるのは俺とニイナが持っている魔剣と聖剣のみ。


・・・だから呼ばれたのだろう。


「コバヤシ、ニイナがゼパルに肉薄出来るとは限らない。なのでコバヤシも積極的にゼパルを取りにいっても構わない」


「わかった」


地図に書かれた最奥はいま居る場所からそう遠くはない、なので直ぐに戦いになる。この人数ではこっそりと先に行くのも難しい。


それに、冒険者が来ているのもバレているのかもしれない。


コバヤシは冒険者グッズからマジックポーションを取り出す。


自分を落ち着かせるようにグイッと一気に飲み干した。


「さすがに緊張しているな。コバヤシ」


アンジェリカが少し笑ってこちらを見る。


「ああ。そうだな・・・戦うのは2度目だが、あいつはとんでもなく強かったからな。・・・怖いさ」


「大丈夫だ。この依頼に来ている冒険者は強者ばかり、いざとなったら私たちも援護する」


俺の背中をバンッと誰かが叩いた。


「俺たちもいるんだ!・・・少しは任せろ」


「ありがとう。カイン、背中は頼んだ」


アンジェリカは「行こう」と冒険者達に言った。皆、緊張しているのが分かる。


「みんな、大丈夫。どんなに強い悪魔だって連携すればきっと上手くいく・・・!私たちの冒険者としての強さ、人間の強さを見せつけてやろう!」


ニイナが皆に鼓舞すると全体の雰囲気が変わる。勇者ってのは、


「すごいな」とコバヤシは独り言のように呟いた。














冒険者の一団が進んでいくと、思った以上にゼパルの部下と思われるダークエルフが配置されていた。


この感じだと既にバレていたようだ。


どうせ逃げ場もない、進むしかない状況だが、それは相手も同じこと。


「いくぜ。武勲を上げるいい機会だ・・・!」


いのいちに飛び出したのはアレスだった。青い炎が灯されたデカい蝋燭で囲んだ祭壇の様なモノが部屋の中心にあり、そこを見張っている敵に槍を構える。


コバヤシは「ウル」とルーン魔術を使用するのを確かに聞いた。魔術を使った身体強化で滑るように接近する。


「誰・・・」


「ガハッ・・・!」


敵が気づいた時には手遅れだった。右の方にのどを一突き、そして左に薙ぎ払うように正面から動脈を掻っ切る。


流れるような動きだ。


「皆いくぞ!出来るなら捕縛しろ、数では相手が上だがこちらは戦闘のプロだ!負けるのはありえん!」


冒険者達が一気に加勢にでる。これは乱戦になりそうだ。


「死ね!冒険者ども!」


メイスを装備したローブを着た集団、邪教団でも相手にしている気分だ。


この世界に来て乱戦は初めてだ。しかし他の冒険者は相手に比べて連携がとれている。俺はパニックになった訳ではないが正直こういう場面に出くわしたことがないので置いて行かれるような感覚になっていた。


「まいった、誰を援護してどういう風に敵を倒していけばいいか分からない・・・!」


いつも敵を倒す手順を決めて戦ってきたのもあるが、こういうアドリブを利かせる場面に俺は弱いらしい。


アンジェリカがふと、俺の背中を叩いた。こちらの状況を見透かすように話しかけてきた。


「コバヤシ、スラ子と私たち勇者パーティを手伝ってくれ。見たところ乱戦慣れはしていないようだしな。それに・・・」


アンジェリカはこちらを見ると、


「ニイナとコバヤシだけが落ちた天使を倒せる戦力だ。・・・死ぬなよ?」


「ああ・・・!」


乱戦の最中遺跡の最奥、祭壇を抜けた先に気配がある。・・・ソイツは恐らく俺を待っている気がする。


「行こう、スラ子・・・!」


「うん!」


勇者パーティとコバヤシは乱戦の最中、敵を倒しながらそこに向かっていく。


ニイナも乱戦のやり方と言うかそういう場面に慣れているのが一緒にいて分かる。


(まだまだ俺はこういうのに慣れてないな)


そういう場面に対応できないのは正直悔しい。


「ふっ!」


先行するニイナ達のこぼした敵を魔剣で仕留めていく。


そんな中、


「待って!皆!」


先行するニイナが俺たちに何か言っている。


「どうした?」


「あれ・・・!」


後衛のダークエルフ達はゴーレムを召喚し、攻めてきた俺たち勇者パーティに立ちはだかった。


岩で出来た巨体、コアに特殊な術式を書き込んだ羊皮紙を使い使役する上位魔術。


「ゴーレム・・・!まさかこんなものまで・・・!?」


「うわあ・・・厄介だね。でも魔術でなんとかなりそうだ」


ブローは上位魔術での書き換えを行えば無力化できると言った。ただ、少し時間がかかる上に背中に特別な術式を書き込んだ羊皮紙を貼る必要があるらしい。


「わかった。俺はどうすればいい?」


「僕に敵の攻撃が当たらないようにしてほしい。皆、申し訳ないけど頼んだ」


「まっかせて!」


俺は乱戦は今は出来ないことは分かったので、スラ子とブローに近づく敵を倒すことにした。












「スラ子、魔力の消耗は考えないほうがよさそうだ。全力で守るぞ」


「うん!」


立ちはだかるゴーレムに言った。


「・・・来い、化け物・・・!」

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