第32話待ち受けるもの
「シャイターン様、冒険者が数人この遺跡に探索に来ているようです」
「そうか。処理は任せるぞ、ゼパル」
「御意」
ゼパルは頭を下げるとシャイターンは帰還する。
一度、人間の魔剣使いに敗れた。・・・もしあの男が来ているなら次は倒す。
悔しい、という感情より胸が高まり楽しみだという感情が先行してしまう。
今回は部下も連れている。雑魚は部下に任せればいい。
「ゼパル様、ご命令を」
「もし魔剣を持っている冒険者がいたら私が殺す。他の冒険者はお前たちがやれ」
「了解しました」
フルンディングが怪しく紫色に輝く、つい魔力を込めすぎてしまう。
「ククッ次は・・・仕留める」
ゼパルは愉快そうに笑った。
「ねえ、コバヤシ君」
「なんだ?」
アリスが唐突に声をかけてきた。
「あの時・・・あの人間みたいな魔族(?)ゼパル、だっけ・・・に襲撃された後なんで出て行ったの?何か理由があるの?」
・・・。
「俺が原因なんだ。因縁、みたいなものだな」
言葉を選んでコバヤシは呟く。魔剣が悪い、みたいな言い方も嫌だった。
「そっか。でも・・・コバヤシ君は悪くないよ。だって殺しに来たのは向こうからなんだから」
「ありがとう」
軽く話しながら遺跡を進んでいく、魔物はそれ程いなかったがなんだか嫌な予感がする。
強い魔力も感じる・・・気がした。
「コバヤシ」
スラ子も何かを感じたのか、俺に話しかけてきた。
不安そうな顔だ。というかスラ子はスライム族だったな。魔物の気配に敏感なのかもしれない。
「待って、何か声が聞こえた気がする。静かにして」
アリスは何か聞こえたらしく口元に手を当てる。
・・・・!
・・・・。
遺跡というのは大体道が入り組んでいて何かあっても陰に隠れる事が出来るのだが、今回のルビス遺跡は入り組んだつくりではない為、隠れるところがない・・・もし強力な敵に先に気づかれたら面倒だ。
それにしても、
「アリスはレンジャーの技能も習得しているのか?」
静かにコバヤシはアリスに話しかける。
「まあね。私は細かいところをやってあとはカインとエリスに任せてるんだ」
遺跡のマッピング、罠の検知など普通の冒険者ならあまり取得しない技能だがそれがあるのとないのでは遺跡探索では話が違う。
「止まって」
アリスは手信号で俺たちに話す。
・・・つきあたりの扉の向こう、敵は3人。
落ちた天使ではないが、シャイターンに従っている部下かもしれない。
(ダークエルフか・・・殺すのか?捕まえるのか?)
(捕まえよう、情報を持ってるかもだし)
(ふっふっふ・・・私に任せて!)
スラ子は自慢げに俺たちにそう言う。
(大丈夫なの・・?)
アリスは不安そうに答える。
(うん。でも・・・囮がいるともっと簡単だよ)
スラ子が作戦を説明する。・・・殺すよりスラ子が拘束した方が簡単そうだ。
スラ子は俺に杖とアダマイト魔石、冒険者グッズを渡す。
・・・!?
スラ子が荷物捨て身軽になると、形態を変える。アリス達は面食らった顔をしていた。当然だ。
(ふふふ、スライムだからね。この大きさなら気づかれないよ)
スラ子は大きな水たまりくらいのサイズになって暗闇に隠れる。
(驚いてる暇はないね。わかった囮は私に任せて)
俺たちは辛うじて隠れられる陰に身を隠し、拘束はアリスとスラ子に任せる・・・!
・・・・!
「なんだ?さっきのゴブリンの群れの生きのこりか?」
「なんだ!お前は誰だ!」
扉の向こうから話す声と物音が聞こえる。
・・・!
・・・・!
「いいよー!」
俺たちが扉を開けると、
「くそ!離せ!」
「お前ら、ただでは済まさんぞ!」
どうやったのか2人は拘束して、あとの1人は気絶している。
「アリス、どうやったんだ?」
カインは驚いていたが、
「スラ子ちゃんはスライム族でしたね。恐らくその伸縮性の体で拘束したんでしょう」
エリスは1度スラ子のこの形態は見たことがあるので驚いた様子ではなかった。
「ふん。貴様らなどゼパル様がいれば相手にもならない・・・!」
「・・・!」
コバヤシは緊張感から唾を飲む。やはり、いるのか。
「向こうの勇者パーティに連絡しよう。この先にゼパルがいるなら合流すべきだ」
エリスは羊皮紙に魔力を円環させる。いつもの連絡方法だ。
「ブローさん、聞こえますか?」
・・・。
・・・・。
エリスが話をしている間に捕まえたダークエルフから情報を得ることにした。
「ゼパル以外に落ちた天使は何人いる?」
「ふん。誰が言うか」
「・・・そうか」
コバヤシはヘブンズギルをダークエルフの動脈につきつけた。
「(答えろ)」
言葉に魔力を込める。さすがに怯えたのか、震えながら答える。
「ひ・・・たすけ・・・」
「殺す気はない・・・返答次第だが」
「わ、わかった・・・!地図がある・・・助けてくれ・・・」
そういうと地図をコバヤシに渡す。少しやり過ぎたか・・・。
「・・・コバヤシ君。そういう所がダメなんだよ」
「済まない、やり過ぎたか。本気ではないんだが」
アリスに窘められると素直に謝る。
「皆さん、向こうは探索がある程度終わっているようなのでこちらに合流するそうです。少し先に進んで待ちましょうか」
ダークエルフの3人を縛り、先に進むことにした。
「待っていろ・・・!」
コバヤシはマジックポーションを口にすると自分を鼓舞するように呟いた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます