第17話悪魔の城

「ん・・・」


「コバヤシ!良かった・・・生きてる!」


気づいたらどこかも分からない広い部屋のベッドに寝かされていた。スラ子は半泣きで嬉しそうにこちらを見る。


「・・・っ!」


体を起こそうとしたが、なにやら体が重い。


「お目覚めですか、冒険者様」


「お前は・・・!ここはどこだ」


よく見るとお高そうな部屋だった。城の一室、という感じだ。


そして、体を触ると腕と背中に包帯が巻かれている。


「助けて・・・くれたのか」


タイミング良く、大きな扉が開き、既に見慣れた顔が入ってきた。


「お。起きてたのね。ようこそ、わたくしの城へ」


淑女のような仕草でドレスの裾を持つと、こちらにカーリは歩いてきた。


「魔眼で魅了する気か。そもそもなんで俺たちを助けた?」


「失礼ねー!私だって礼くらい返すわよ!」


年齢相応の仕草で拗ねた態度、毒気が抜かれるな。


彼女はいたずらっぽく笑うと言った。


「そもそも・・・助けてくれたの、あなたからじゃない?悪魔を助けるなんて異常よ?」


「うっ」


痛みを無視して体を持ち上げると、ベッドに腰かける。気まずい沈黙。


カーリは色んな角度から俺を見ている。・・・何か言ってほしいのか。


「なんだ」


「そんなに警戒しなくてもいいじゃない?だって殺す気ならもう殺してるし」


言われればそうだな。と納得してしまう自分もいる。


カーリは変わらずこっちをいたずらっぽく見ているし、スラ子は・・・。


「コバヤシ、ダートについてた毒を直して、傷も治癒してくれたんだよ。きっと、大丈夫」


スラ子はこちらを安心させるように見てきた。・・・まったく。


メイドはこちらを見ると、気まずそうにする俺を笑いながら言った。


「あなたの気持ちは分かりますが、逃げろ、という私の忠告を再三無視して助けられたんですよ?ここであなたを殺したら畜生ではありませんか」


「ああ・・・その、警戒して悪かった」


ベッドから立ち上がろうとするが、まだめまいがする。毒が残っているのか。


「無理はしない事です。ケーキも用意しました。どうぞお召し上がりください」


ケーキ・・・。


「どうしたの?コバヤシ、ケーキ嫌いなら私が食べちゃうよ?」


「い、いや・・・その、嫌いなわけないだろ」


カーリは我慢の限界と言わんばかりに爆笑した。


「ふふっ。ねえあなた、スイーツ好きでしょ?」


「・・・・」


これは了承したのに近い。しかし、そもそもスイーツ好きだとは・・・言ってない。


「ほら、アーン。してあげようか?」


カーリは笑いながらケーキを差し出す。


「それは私がやるの!」


スラ子が阻止すると、あら、とカーリはおどける。これでは友達の家にいるみたいで、なんか恥ずかしかった。


















さて、と。


メイドは食器を片付けるように部下に指示する。


「さて、冒険者様。そろそろ国に返してあげますが」


含みを持って言葉を続ける。


「あのノアと名乗る代行人、恐らくあなたを視認したでしょう。もしあなたが不利になるのであれば、この城で状況が落ち着くまで匿っても構いません」


「・・・いや。帰るさ。勇者パーティも心配するだろうし」


「わかりました。無事をお祈りしています」


「あなた、死んでもいいの?あの教会はタチが悪いわよ?」


カーリは心配そうにこちらをみる。


「俺は魔王を倒さなければならない。だからいつまでもここにいるわけにはいけない」


「そう・・・。そう、よね。魔王・・・」


一瞬、どこか迷いがあるそぶりで、またね。と手を振った。


視界が歪む。


気づいたら、国の門の前に飛ばされていた。


「コバヤシ、大丈夫かな・・・?」


「なんとかなるさ。ダメなら国を追われて2人で戦うだけだ」


「うん・・・」


到底どうにかなるとは思えないが、2人で宿に帰った。

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