第13話潜入

カーリは意識が朦朧としていた。


何度も責め苦を受けていたが、居城を吐くことはなかった。


「あなた達人間のほうがよっぽど、悪魔じゃない・・・?」


「黙れ・・・!悪魔が人間に逆らうというのか!」


バシン!


鞭で背中を叩かれる。修正(なおる)とはいえ、痛いものは痛い。


血だって出るし、泣きたくもなる。しかし、カーリは笑っていた。・・・これが人間。


「わたしが動けるようになったら途端に逃げ出す癖に、あなた達弱者は立場が変わると途端に残虐になるのね」


もう痛みにも慣れてきた。・・・終わることはないけれど。


「神官長、カーリを捕縛した冒険者が謁見に来ました」


「ふん・・・たかが冒険者ごときが邪魔をしに来たか・・・」


「・・・。」


「お前は用済みになれば処刑してやる。精々あがくがいい」


・・・期待している訳ではないけれど。


「ふうん・・・そう」


コバヤシが来てくれるような、そんな気がした。




















「こんにちは。こちらは神の家・・・教会です。信仰する者の家です。あなたにも神のお恵みがあるよう」


「えっと・・・ああ。神は信じてるよ。」


どうにも胡散臭い。神官長は優しそうにみえるのだが何故か、疑ってしまう。


「その・・・前回の依頼で捕まえた悪魔なんだが・・・いまは何をしているんだ?」


「ああ。かの者はいま私たちの審判を受けています。何も心配することはありません」


審判・・・聞きなれない言葉だが、拷問はしていないようだ。


「ああ・・・それならいいのだが」


適当に言いくるめられている気もしなくもないが、そそくさと教会を返された。


ガタン、と教会の大扉を閉め。通りに出ると、


「・・・」


メイドに突然頭を下げられた。


「・・・!?」


急に視界が歪むと裏路地に転移させられた。これは・・・魔術!?


「ウェポンサモナー!」


武器を構える。こいつ、悪魔か。


距離を置こうとすると、手を掴まれた。


「お待ちください」


「・・・なんだ」


武器を持っているわけでもない。そもそも武装していないようだった。あえて攻撃しない証拠としているような・・・。


「あなたに、お願いがあります」


「悪魔が、人間にお願い・・・?一体なんだ」


「あなたを付けさせて頂きました。何故、あなたはこの教会に?」


「カーリ、と言ったか。少し処遇が気になっただけだ」


驚いたようにメイドはこちらを見る。・・・そんなに変なこと言ったか・・・?


「あなたは、悪魔が審判されていると聞いて心配になった。と・・・?」


「心配するほどではないが拷問と彼女は言っていたからな。もし本当にそうだったら少し可哀そうだと思っただけだ」


「彼らは彼女を拷問し、情報を吐いたら殺す予定です」


・・・!


さすがに、少し言葉をためらった。殺される・・・見た目は少女程だが確かに彼女は悪魔だ。それは当然の帰結であろうとは思う。


処刑されると、いうのか・・・。


「何故あなたを付けたのかは経歴を見たからです。魔物とパーティを組み。何人も人を殺し、人殺しと呼ばれたことも」


「別にそれは・・・」


「誤解、ですよね?それは私たち悪魔も同じことです」


言葉を先回りされた。誤解か、確かに悪魔全員が虐殺を楽しむ外道だとは限らない。


しかし・・・。


「今夜彼女の部屋の警備が一度だけ、手薄になります」


「・・・」


「助けてあげて欲しいのです。もちろん報酬はありません。ただ正体はバレません」


「・・・わかった。」


「おお・・・!いいのですか?あなたは悪魔に手を貸す、と?」


「まだ少女だ。殺すのを見過ごすのはためらわれる。それに・・・」


コバヤシは目を見て言った。


「あいつらは胡散臭い、神の名を語っているのにどうにも、な」














コバヤシは手を差し出す。


「助けよう、ただし彼女にもう二度と俺に近寄らせるな」


  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る