第12話混浴
「ふう・・・」
湯船に浸かると、コバヤシは体をゆっくりほぐしていた。この国に来てからの久々に心地よいオフロ。
ニイナが紹介してくれた宿はすごく上等で、金持ちなんだと実感させられる。しかし、コバヤシはどこかゆっくり休む気持ちになれないでいた。
「明日にでも教会に顔を出してみるか」
別にこの世界の教会に興味があるわけではない。ただ、
「拷問・・・まさかな。あんな少女にするわけがないよな」
教会の話はイシュタルから聞いている。神の使途と言われる、悪魔をせん滅させるために作られた組織。
なんだか、胡散臭い気がした。
「コバヤシ、いる?」
「ああ・・・誰だ?」
扉が開く音、そこには。
「スラ子!?」
タオルで隠してはいるが、スラ子はゆっくりこちらに進んでくる。
「一緒に入りたくて・・・だめ?」
「い、いや・・・」
ダメではないが・・・というか今更スラ子の体を意識してしまう自分がいた。ただでさえ恥ずかしいこの状況はさらに悪化の一途を辿る。
「ようやくみつけたわ!」
この声はまさか・・・。
「イシュタル!?はあ・・・これ以上勘弁してくれ」
「むーーー!」
スラ子は不機嫌そうに俺を見る。・・・いや俺のせいじゃないだろ。
「ふうん。二人でオフロなんて、すっかり出来上がってるのかしら・・・?」
この状況、2度目か。
相変わらずの威圧感でイシュタルはこちらを見る。まあ、裸で来てないだけましか。
「・・・。」
「なあ、その・・・二人は仲が悪いのか?」
彼は全く空気が読めていない。別にライバルという訳ではないが、それに近い関係にあるのは確かだ。
「コバヤシは私とイシュタル・・・さんとどっちがいいの?」
「い、いや・・・」
「ふうん・・・切り込んできたわね」
彼は困った顔をしている。そもそもこんな美人の知り合いがいるのになんとも思わないのが異常なのだ。
私は、コバヤシが好き。きっとこのイシュタルと呼ばれる人も惹かれているのだと思う。
「そもそもだ・・・男が入ってるときにはこないだろ、普通」
「話をそらさないで!」
我儘なのはわかってる。でも私だって女の子なのだ。
「いや・・・別に婚姻するわけでもないしいま決めなくても・・・」
「あなたよくいままで生きてこれたわね?鈍感にもほどがあるわ・・・」
イシュタルさんは片目を瞑ってあきれ果てた、という顔をしている。そもそもが彼のせいであることを自覚していない事に最近ようやく気付いたようだった。
「俺は出るぞ。二人で仲良く入っててくれ」
ザバッと立ち上がると、彼はお湯から上がる。逃げるように場を後にする。
「あなたも、苦労してるわね。スラ子ちゃん?」
もう彼は出て行ってしまったけど、私もすこしお話をすることにした。
「苦労・・・というか。なんかコバヤシって・・・変!」
「変、ね。ふふっわたしもそう思うわ。あなたもそう思うなら合っているのでしょう」
先ほどとは打って変わってイシュタルは愉快そうに笑う。
「わたし結構人間見てきたけど、あんな男見たことないわ。きっと、不器用なのね」
「コバヤシは不器用・・・なのかな?戦ってるときはすっごく強くて器用なのに」
「ああいう人はね、自分のことが分からないのよ。だから不器用ってことよ」
「ごめんなさい。なんか私、誤解してたかも」
イシュタルは優しく笑うと、「いいのよ」と言った。
とっても、優しかった。
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