第6話勇者の信念

「今回の相手はムシュフシュだ。幻想種とも言われる種族で並みの冒険者ではまず殺せない魔物だ」


アンジェリカが作戦について話す。


「聖剣でバーーっと倒したらダメなのかな?」


「ニイナ、距離を詰めて攻撃する前に死ぬぞ。物理的には死なないがカリュバーンの再生効果は毒に対しては効果はないんだ」


ブローがくぎを刺すとニイナは真面目な顔で頷く。


流石に今回は難しい相手だ。毒のブレスは強力で、喰らってしまえばただでは済まないだろう。


「コバヤシ、なにかアイデアはあるか?」


「地形はどんな感じなんだ?」


「遺跡だ。神代の頃の神の神殿だ」


ふむ。とコバヤシは腕を組む。


「なんでもありなのか?」


「・・・いや。崩落させたりとかはダメだぞ」


「そうか・・」


アンジェリカが呆れて言った。


「普通はそんなことは言わないが君は言うと思った」


ブローはこちらを笑いながら見る。


「なんだ?」


「君ってさ、天然だよね。魔術師なのにらしくないというか・・・まあそれも面白いところなんだけど」


どこかこのブローという男は何を考えているのか分からない。どこかマリーンに似ている。


・・・弟子だと言われても違和感はないな。


「そうか」


「マトモな冒険者は私だけか・・・今回の相手はやばいんだぞ」


「じゃあさ!盾使おうよ!」


盾・・・なんのことだろうか。伝説のアイテム、聖剣や魔剣は1こあるだけですごいはずなのだが、このパーティはまだもう1こ何か所有しているんだろうか。


「オハンの盾、か。カラドボルグの一撃にも耐えたとされる伝説の盾・・・しかしあれは」


「そいつは凄いな。前衛職がそれを持てば解決じゃないか」


コバヤシが言うとアンジェリカは困ったようにため息をついた。


「あれはな、ギルガメッシュ王の宝物だ。勝手に持ち出せば殺されるかもしれないしそもそも貸してくれるとも思えない」


「だってそれじゃなきゃ突破出来ないでしょ?聞いてみよう!」


とりあえず、聞いてみる価値はあるだろう。一同はギルガメッシュに会いに行くことにした。
















「いいぞ。貸してやろう」


ギルガメッシュ王の返事は思ったより意外なものだった。あっけなくオハンの盾を貸してもらえたのだ。


馬車に向けて意気揚々と街中を歩くニイナ。


「お。ニイナちゃん、これ食べてくれよ」


それはパンを砂糖で揚げたものだった。ニイナは美味しそうに菓子を頬張る。


「美味しい!ありがとう!」


「ニイナちゃんは良い宣伝になるからね!ほら好きなだけ持って行ってね」


気のいい屋台のおじさんが袋に菓子を入れて渡してくれる。


この国は良い人がいっぱいいる。・・・この国は私が守る。


「頑張らなきゃね。みんな!」


「ああ・・・!」


「程ほどに頑張るよ」


勇者パーティはこの国の希望だ。私はそれを誇りにしているし、それを一度も疑ったことはない。


だからこそ、毎回生き延びなければいけないのだ。


自分にカツを入れ、戦いに向かう。


時々勇者は辛くないか、と聞かれることもあるがそんなことはない。












「勇者は誰にも・・・負けないんだから!」


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