15 岸川亮 8月1日 18時00分
電気街にあるハンバーガーショップを出て、駅の反対側、昭和通りをさらに路地に入った場所にある練習スタジオに到着した。
18時から練習開始だというのに、まだ誰も着いていないようだ。
軽く予想していたことだが、若干の苛立ちをため息に乗せて吐き出さざるを得ない。
時間はちゃんと守るべきじゃないか?という旨のことを30分近く遅刻してきたメンバーに話すと、「亮は意外とパンクじゃないんだな~」といって笑い出されたことが何度かあった。
練習時刻に遅れてくることなんか、パンクでもロックでもジャズでも何でもなくて、ただ単に時間とスタジオ代の無駄だと思うのだが、これ以上雰囲気を悪くしてもあまり意味がないと思い追求はしなかった。
まあ、どうしようもないクズのやる音楽こそがパンクなんだ!という考えがあってもいいだろう。
我がバンド『FISH SMELLS』は若いバンドだ。23歳の俺が一番年上で、あとはみんな20歳前後、ボーカルのユーキに至っては19歳だ。
単に年齢的なものだけではないのだろうが、自分以外のメンバーに対して違和感を覚えることが多くなってきた。コイツらはファッションで音楽やってんだろうな~、という感覚だ。
そのくせ口では「音楽に命賭けてます!」みたいなことを平気で言っちゃうようなヤツらだ。
まあ俺が加入して1年ちょっと、それなりにキチンと活動してきた『FISH SMELLS』を今投げ出すことは、時間を浪費したことを自分で認めるようなものだ。まだこのバンドをやめることに意味はなくて続けることに意味がある。まだまだバンドとしてやりたいことがそれでも沢山あるのだ。
本当に100%現状に満足して活動しているバンドマンなんか、多分存在しないのだろう。そう思いながらセッティングを一人始めた。
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