12 佐野洋平 8月1日 17時45分
いつもの電車に乗り自宅へと向かう。
それにしても……と高橋かれんのことを考えてしまう。なかなか変なヤツになってきたようだ。
高橋のことは彼女が入学してから担任している訳だが、当初と最近とでは印象が全然違う。
入学当初は、長い黒髪を背中まで垂らし(前髪も長くほとんど目元の印象がない)、陰気なボソボソしたしゃべり方をする生徒という印象しかなかった。
休み時間もほとんど机に突っ伏していて、たまに誰かが話しかけてもほとんど反応がない、と苦情気味に他の生徒に言われたこともある。
このままクラスに馴染めず、退学ということになってはマズいと思い(俺は基本的には職務に勤勉である)、何かと声をかけ気を遣っていた。
最初は俺に対してもほとんど最低限の反応しか示さなかった高橋だったが、次第に普通の反応が返ってくるようになった。
そして4月終わりの体力テストの結果が意外と良いことを知った俺は、ダメ元で自分が顧問をする女子サッカー部に彼女を誘ってみた。
流石に団体競技はやらないだろうと思っていたが、彼女は実にあっさりと入部した。
不思議に思い、後日尋ねてみたところ、「もともとテレビなどで見ており、サッカーに興味はあった。ただ引っ込み思案な性格ゆえにきっかけがつかめなかった」という主旨のことをたどたどしく話してくれた。
それが今やどうだろう?
夏になりサッカー部のレギュラーに定着し(もともとの部員が少ない)すっかり女子高のノリにも慣れた彼女は、まるで女子高生のような話し方をするのだ。
高橋が入学当初のような感じで、何か問題を起こしたり、あるいは何も起こさないまま学校を辞めるようなことにならず本当に良かったと思う。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます