アキバ狂騒曲

きんちゃん

1 岸川亮 8月1日 17時00分

 俺はこの街が嫌いだ。

 東京の街はどこも人でごった返していてやってらんねえが、中でもこの街にはヘドが出そうになる。                          

 土日も平日も、街を歩いているのはオタクという名のクソばかり……           

 10年前「オタク」という呼び方にはもっと軽蔑の意味が込められていたように思う。少なくとも「自分オタクですから!」と開き直るようなヤツは(オタクの種類にもよるが)つまはじきにされて当然、みたいな空気があった。

 それが今やどうだろう?度のきついメガネにバンダナ、ヨレヨレのシャツをケミカルウオッシュのジーパンに入れて……みたいな古式奥ゆかしいオタクなど存在せず、見た目は普通のヤツらばかりだ。もちろん顔を見れば大体はどんなヤツかは分かるものだが……。それでいて電車の中なんかでは仲間内で声高にオタク談義を展開させて、全く悪びれる様子もない。


 そんなヤツらの目が一番輝くこの街、秋葉原。

 俺がヤツらに抱く感情は、そのまま自分の現状に対する不満の表れなのだろう。

「そんなに嫌ならばこの街に来なければ良いのではないか?」

 そう言う人がいるかも知れない。俺もそう思う。だが、そうもいかない事情がある。

 俺がギタリストとして所属するバンド『FISH SMELLS』のリハーサルがいつも、この街のスタジオで行われるからだ。

 そして今日も、リハのためにいつものスタジオに向かっているところだ。



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