第55話 卒業

 プロポーズをしてからの行動は早かった。

 まず、家に帰ってきたお父さんに報告をして、結花も話の途中で帰ってきたから加わる。

 正直、反対とかされたらどうしようとか悩んでたけど結果は、喜んで良かったと泣いてた。


 泣くとは思わずに最初の反応は、雫と二人して顔をポカンとしてたけど、ずっと泣いているお父さんを見て本当に許可出たんだと自覚もできて雫がお父さんにお礼を伝えていた。


「やっぱり、とても良い子だね」


 手で涙を拭きながら自分の肩を軽くポンと叩いて言われた。

 どうやら行事を見に行った際、自分と雫の仲が、あまりにも近かったから顔を覚えてくれたみたい。


 そんな時に帰ってきた結花が慌てふためく様子をしてて事情を説明して納得してくれた。

 結花も雫がお姉ちゃんに義姉になってくれるのを喜んでくれるぐらいなので驚く。 


「二人とも反対とかしないんだ?」


「お姉ちゃんに男とか想像できないから、予想通りで安心しただけ」


 お父さんも頷くだけで何も言わないでいる。

 凄いイメージ持たれてるけど、二人の想像通りになってるから当たっているな……。

 自分のお母さんにも報告したいと言ってくれたのでまた雫と墓参りに行った。


 次の休みの時に雫のご両親に挨拶に伺う予定になった。

 雫がこっそり家の玄関で待っていたので手を振る。

 自分は、スーツをビシッと決めて髪型も結んで親ウケを狙う作戦だ。


「か、かっこいい……」


「そう?」


 口元に手を当てて顔をガン見しながら雫が言っている。


「怜の姿は好印象に見えるよ! お母さん、どんな反応するのかわからないから怖いけどね」


 付き合っていることを言うのも勇気いるだろうから、わかるけど同性とのお付き合いだから余計に話をできなかった。

 それに報告も何もない状態での結婚挨拶となると許可の難易度も高くなるだろう。


 自分も緊張してきたけど真剣な話しだから、ここで折れるわけにも行かない。


「家に人を呼んでるって伝えているから説得を頑張ろうね!」


「うん!」


 外で軽くハグだけして家に入る。


「お母さん、改めて紹介したい人がいるの」


 玄関で雫のご両親を呼んでいる間、ただじっと姿勢良く待っていた。


「あら? どうしたの? 前の時に家に入れたことある子じゃない」


 何も知らないので友達だと思っているから頬に手を付けてどういうことかしら、と考えているように見える。


「雫さんとお付き合いさせていただいた千葉 怜です。お付き合いの報告もしないといけなかったのですが自分が反対されるのが怖くて言えずにいました。本当にすみません。報告をしなかったから、このような状態になってしまいましたが今日、家にお伺いしたのは雫さんとの結婚のご挨拶に来ました。順序が違いますが雫さんとの結婚を許してはくれませんか」


「ふふっ、実はその──睦み合っているところを見てしまったから、もしかしたらと思っていたけどそうなのねー」


 微笑ましく言っているけど、付き合っているの綺麗にバレているし、これは大丈夫なのか?


「お母さん、知ってたの!?」


 声を裏返るような大声で言っているから、雫を落ち着かせるために背中を擦る。


「でも雫が楽しそうだから全然反対する気はないかな」


 優しい声で伝えられたので嬉しくて二人の前でガッツポーズをしてしまう。


「そんなに嬉しがっているとか雫は幸せ者ね」


 二人で照れながら雫のお母さんに挨拶もできた。


 三年生になってからは面接の練習とかにも参加してた方が何かと便利だからと教えてもらったので参加したりして、みんな忙しく過ごした。

 雫は、試験とかあるから会うことを控えて卒業間近になった。


 後、何日か経ったら卒業するのかと思うと今まで色んな出来事があったな、としみじみ思う。


「卒業しても会う約束とかしよう!」


 四人でそう話し合うことも増えた。

 迎えた卒業式。

 みんな、すでに泣いている子も何人かいる中で笑いながら卒業できた。


 賞状筒を手に持ってクラスで記念撮影撮ったり四人だけで撮ったりした。


「早すぎだよね。三年間も過ごしたように感じないよ」


「そうだね」


 雫が隣にいて悲しそうな表情をしていた。


「雫、マイホーム欲しくない?」


「なに、いきなりー」


 悲しそう表情していたのに話がぶっ飛んでいることをいきなり言い出すから笑っている。


「実は、もう買っちゃったんだよね。そこで一緒に暮さない?」


「もう! 買っちゃたとか怜は、行動早すぎるんだよー」


 嬉しそうに笑って一緒に暮らすから別にいいけど、と言ってくれたので最低限の荷物を持ってすぐに同棲を始めた。

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