第37話 年越し

 季節は、すでに冬。


 あれから夏休みは、バイトと部活の合宿で雫とは、ほぼ会えないまま虚しくバスケ仲間と勉強するように日々を過ごしていた。


 一年生の間に稼いで二年生には、進路とか色々あるだろうからバイトできる時間があるとしたら、これが最後の稼ぎ時になる。


 でも四人で会いたいと思って、三人にメールをしたら大晦日だけは、三人とも予定が空いていたので会う予定をした。


 この地域の近くにある神社で待ち合わせをして魔のコタツから頑張って抜け出して目的地の神社に行く。


「あー、寒いー」


 思わず声が出てしまうほどの寒さで息を吐くと白くなっている。

 マフラーとコートをしているので、寒い外の中でも少しは耐えられるはず。


 最初に来たのは雫だった。

 雫に駆け寄って新年の挨拶を済ませる。


「あけおめ!」


「ふふっ、あけましておめでとうございます」


 自分とは大違いで、きちんとした挨拶を返された。

 少し笑いながら返された気もするけどそこは、考えないようにする。


「寒いね。雫は、手袋してないんだ」


「うん、手袋とかあんまりつけないから」


 自分も手袋つける方ではない。

 理由は、携帯とかの物が扱いづらいからだ。


 少しは、体温が高いから、雫にそっと手を近づけて恋人繋ぎする。


「えっ、人いるのに……!?」


 雫の反応を見てさすがに他の人にも見られるから着ているコートのポケットに繋いでいる手を入れて隠す。


「これならいい?」


「──うん」


 許可も出たしこの状態で真帆ちゃんと澪ちゃんが来るのを待つ。

 夜は暗いから雫の服装あんまり見てなかったけど、もふもふのコートを着ているからもふもふしている動物を連想する。


 着込んでる姿も可愛いとか最強だな。


「おまたせー! あっ、あけましておめでとー!」


「おめでとう」


 真帆ちゃんと澪ちゃんが二人並んでこっちに来た。


「おやおや、そのポケットの中には、どんな状態になっているのか気になって仕方ない!」


 真帆ちゃんがニヤニヤしながら指を指してくる。


「惚気てるんだから邪魔しないの」


 澪ちゃんが真帆ちゃんを叱りつけていて雫の様子を伺うと真冬なのに顔に手で仰いでいる。


「雫、大丈夫?」


「う、うん……。ちょっと暑くなっただけ」


 暑いなら恋人繋ぎしないほうがいいかと思って手を離そうとするけど──手が離れない。


 雫がギュッと握って外せない。


「このままでいい……」


「あっ、はい!」


 雫に言われた通りに繋ぐままにした。

 神社は、長蛇の列だったので参拝するまで手を繋ぎながら四人で会話したりして時間を潰す。


 自分達の番が来たので参拝してお願い事は、雫と幸せに過ごしたいと願うことにした。


 おみくじなどを引いたりして見せ合ったりお守りも購入した。ペアのお守りやつだから他の二人にバレないように雫にこっそり渡す。

 内緒だから人差し指を唇に当てて教える。


 理解してくれたみたいでコクリと笑いながら頷いてくれたので安心。


 神社ですることもなくなったので日の出みたいという話になったから山を登ることになった。

 いきなり急だなー。


 最近では、真帆ちゃんはカメラを欠かさず持ってくるのが当たり前になっているし、貸しを作らないようにするけど作ることの方が増えた。

 何をするかは、結花と共同で漫画制作しているから要望したポーズを自分がする感じ。

 本当に一人でするのは、恥ずかしいようなポーズさせてくるから真帆ちゃんを見る目が変わったことは秘密だ。


 何でもするって言ってしまった自分が憎い……。



 登山の山は、そんなに高くないから全然登れるけど他三人が思いの外体力ないことに気付く。

 雫は、お姫様抱っこをすればいいか。


「きゃっ!」


 休憩している雫にいきなり、お姫様抱っこをしたら驚いて声が出す。

 体育祭以来のお姫様抱っこだな。


「お姫様抱っことかしなくていいよ! 私、頑張って歩く!」


 反撃している雫も可愛い!

 思わず頬が緩めんでしまう。雫は、自分の頬をぷにぷにと伸ばしている。


「あんまりするとキスしちゃうよ?」


「キスは、ずるいよ……」


 キスという単語で大人しくさせて頂上に到着することができた。

 他の二人の様子を見ようと後ろを見たら、結構離れた距離にいたはずなのにいつの間にか隣に並んでずっと見ている様子だった。

 このやり取りずっと聞いてたのか……。


「力が、みなぎるようなご褒美を見せられたので元気でました! ご馳走様です!」


「尊い!」


 真帆ちゃんは、はしゃいでいるし澪ちゃんに至っては、もう尊いしか言っていない。言語も喋れなくなった状態にしてしまったか。


「あっ! 日の出だよ!」


 雫が見ている方向を見て、太陽が登っているのを綺麗だと思いながら見ていた。


「記念に四人で写真撮ろうよ!」


 真帆ちゃんのカメラもあるし提案して四人、仲良く年を越すことができた。

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