第33話 差し入れに行こう
僕は久しぶりに王都のメインストリートを馬車に揺られながら貴族学院へ向かっていた。
季節は移り変わっていて、木々の新緑もすっかり青々と輝いてる。
正面にはお母様。隣にはセブがお兄様への差し入れを抱えて座っている。
今日はなかなかお屋敷に帰って来られないお兄様へ差し入れに来たんだ。
結局、僕の誕生日でさえもトンボ帰りで、すっかりお兄様不足の僕だ。
萎れてる僕を心配したセブがお父様に相談してくれて、今日の差し入れ兼、学院見学になったんだって。
ちょっと病み気味のお兄様からのお手紙をセブに見せたのも大きかったかもね。
お屋敷に帰れない事を怨む呪いの言葉が多くなってて、ちょっとヤバかったもの。
僕も沢山甘えたいけど、今日はお兄様をいっぱい癒やしてあげちゃおうっと。ふふ。
学院の門の前に立ってるのは…やっぱり!お兄様だ!
僕は馬車から降りるや否やお兄様に飛びついた。ああ、この匂い久しぶりだ…。好き。
お兄様は僕をぎゅーっと抱きしめると、お顔にチュッチュが止まらない。
「あらあら、相変わらずなのねリュードは。」
お母様とセブの呆れ顔が目に入ったらしく、お兄様は気まずげに咳払いするとお母様にご挨拶をした。
僕も急にここがお屋敷じゃなかった事を思い出して、恥ずかしさに耳まで熱くなっちゃった。
それからお兄様はお母様とセブと何やら話してから一人で僕の所に戻って来ると、僕の肩に手を回して歩き始めた。
「お母様とセブはこれから王宮まで行ってお父様にも差し入れするそうだ。
リオンは学院見学もあるから終わった頃セブが差し入れを持ってリオンを迎えに来てくれる。
まず、私の寮へ案内しようね?」
久しぶりにお兄様の蕩ける笑顔を見て、僕はコクコクと頷くことしか出来なかった。 はぁ、眩しくて目が潰れるよ。
すれ違う学院生に素っ気ない挨拶をして急ぎ足で寮室に案内するお兄様。
先ずはお部屋を見せてくれるのかな?
扉が閉まってガチャリと鍵が掛かった音がした途端、僕は抱きしめられた。
「リオン…。リオン不足でどうにかなりそうだ…。」
怖いぐらいのお兄様の眼差しに、僕はなす術がなくお兄様を見上げた。
身体が何だか熱く感じてしまう。
そんな僕を見て、お兄様は顔を顰めると大きく深呼吸して片手で顔を覆った。
「リオン、そんな顔をしたら、流石の私も我慢が出来なくなってしまう。私をこれ以上煽らないでくれ。」
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