第30話 お屋敷訪問
僕の可愛いワンコに懇願されて、僕は初めてお母様抜きでユア様の王都のお屋敷へ遊びに行った。
ユア様の家はタクシーム侯爵家だけあって一際立派なお屋敷だった。
ユア様のお母様にはお茶会でいつも可愛がって頂いているので、僕はすっかりリラックスしてユア様のお屋敷訪問を楽しんだ。
最近考えた新作おやつを手土産に持っていったら、とっても喜んで下さった。
褒められた僕は嬉しいやら恥ずかしいやらで、はにかんでいたら『…いぃ。萌えるわぁ…。』って小さな声が聞こえてきたんだけど、まさか侯爵夫人が仰ったとは思えなくてキョロキョロしてしまった。
空耳だったのかな?
ユア様はまとわりつく弟くん二人を振り切って、今は広いお庭のピンクのお花が咲いてる木の側に二人で足を投げ下ろして座ってる。
春の初めのこの時期に咲くこの花が僕は大好き。辺りいっぱいに良い香りを漂わせてる。
ユア様の侍従が敷物を敷いたり、軽い飲み物や食べるものをバスケットに用意してくれたのでピックニックみたいでウキウキしちゃった。
セブやユア様の侍従や護衛騎士はそこそこ離れた場所に控えてるよ。
こちらからはよく見えない場所に邪魔しない様に待機してるみたい。
僕たちは子供だからいくらお屋敷内とはいえ、二人ぼっちにはしないよね?何かあったら困るでしょ?
蛇とか、蛇とか、蛇とか出るかもしれないし。
僕が急に心配そうな顔で周囲をキョロキョロしてたら、ユア様が僕の手を繋いできた。
「リオン様にひとつお願いがあるんですけど…。以前カフェでしたように僕にアーンしてくれませんか。」
ユア様は言いながら顔をじわじわ赤らめて手を強く握った。
お兄様にはお仕置きされちゃったけれど、ユア様は僕の可愛いワンコだからいいよね?誰も見てないし。
期待にフルフルするしっぽが見える様で、僕はクスリと笑うと手土産のアイシングクッキーをアーンしてあげた。
クッキーの屑がユア様のお口元についてしまったので、覗き込んで小指で唇を拭ってあげたら、ビクリと身体を強張らせてしまった。
ユア様がじんわりと汗ばんだ赤い顔で固まってると思ったら、急に口を尖らせてソッポを向いてしまった。
「リオン様はずるいです。僕をこんなにドキドキさせて平気な顔をしてるんだから…。」
珍しいユア様の反応に、お?これがお母様から教えてもらったツンデレか。ツンなのか?
と僕は面白くなってしまって、思わず可愛いユア様の頬っぺたにチュっと口づけた。
ギギギとゆっくり僕の方に振り向くとユア様は目をギラつかせて言った。
「…リオン様のそうゆうところが大好きだけど、大嫌いですっ!僕の気持ちなんてちっとも分かってない…。
僕はリオン様が大好きだからそんな事されたら僕だってリオン様に口づけたい!
いいですかっ、口づけて!」
僕はユア様の迫力に押し切られて思わずコクコクと頷いていた。
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