第10話 兄リュードsideカフェで

それは突然胸が掴まれた様だった。


悪友らと急に空いた授業とお昼休みを使って王都で息抜きに来てた時に、その光景は目に飛び込んできた。


私の可愛いリオンがよくわからないオオカミの様な男の子とケーキを食べさせあってる!

頭が真っ白になるってこんな時の事を言うのだろうか。


さっきまで友人達と馬鹿を言い合って楽しかった気持ちが急に冷え込んで、絶望感がヒタヒタと近づいてくる感覚だ。



私のこんな気持ちを知ってか知らずか、可愛いリオンは僕にハッと気づくとあっという間に店を出て私の前に嬉しそうにやってきた。

オオカミ野郎としっかりと手を繋いで。


私はこめかみがピクピクし始めるのに気づきながらも心を落ち着かせる様に、殊更丁寧にオオカミ男と挨拶を交わした。


オオカミ男はタクシーム侯爵家の嫡男ユア様だった。

そう言われてみるとタクシーム侯爵に面影がある。

タクシーム侯爵は財務大臣で侯爵家の中でも力のある家だ。


爵位もスペード家より上で、子供と言っても無下には出来ない。

青筋は立ってる気がしたけれど殊更丁寧に扱った。


思わず冷気は発してしまった気はするけれど。


このままリオンを家に連れて帰ろうかと思ったが悪友達に呼びかけられて、我に帰った私はリオンを悪友らの目に晒させたく無い、ただそれだけでその場を離れる事にした。


後ろに護衛騎士もリオンの従者セブも付き従っているのが見て取れたので、王都でも心配は無いだろう。


いや、リオンがこれ以上人目に晒されるのは心配かもしれない。

実際私がリオンに気づいたのもスペードカフェの方に多くの視線が流れてて気になったからだ。

多くの視線はやっぱりというか僕のリオンに集まっていた。


キラキラと煌めきながら揺らめく背中までのミルクティー色の艶やかな髪。

知性を感じる額を出して、今日は一部をゆったりと編み込んで遊びのある髪型だ。


ああ、可愛い。


優しげでいて好奇心に満ち溢れたアーモンド型の晴れた日の真っ青な海の色に似た瞳は、出会う人の視線を奪ってしまう。

あの瞳に囚われたなら、どんな人でも逸らすことなど出来はしないのに。


華奢ながらもしっかりとした身体つきは手足の長さを強調してバンビの様なしなやかさを感じさせる。


儚げさと無邪気さと艶っぽさ、合い反する様なその絶妙なミックス感がリオンを活き活きと際立たせている。


目を奪われてしまうのはしょうがないのだけれど、リオンを溺愛する私としては誰の目にも触れさせたくは無い。


ああ、リオンが成長していくのが何だか怖い気がするよ。

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