噂のアダルトショップ ーAV買うとおまけで濃厚サービスついてくる!?ー

北条むつき

エピソード1

「だから、俺でいいの?」

「おお、行ってこいよ。お前のためだ。ただAV買うだけだろう」


 悠平ゆうへいと同級生である淳二じゅんじと数名の男子が、街中にあるアダルトショップ前でウダウダと会話を交わしていた。


「だから、ここのアダルトショップって、以前から噂があるやつだろう?」

「いいじゃんかあ? お前、丁度いいじゃん。卒業してこいよ。アハハハッ」


 童貞の悠平に淳二が声を掛ける。このアダルトショップ長政ながまさには、以前からある噂があった。

 週末の夜、十八時以降に来店すると、アダルトショップらしく、無名AV女優が宣伝活動のためか、イベントで来店した客をイベント終了後、一名が選出され、ある濃厚なサービスが受けられるという噂だった。

 そしてそのAV女優とセックスが出来ると言う馬鹿馬鹿しい噂が、通う男子校に流れた。

 一時は、学校内でも、十八歳未満の学生は、絶対に付近には近づかぬようにと、先生から注意喚起されるほどまでだった。


 実際、店のイベントに行って、コトを成したというモテない男子の妄想話が学校中に広まった時期があった。

 それは学校内でAVの流通が激しかった頃の話だ。今はもうその頃とは違い、スマホ一台で、どこでもそういう動画は見れてしまう。そんな噂は影を潜めたかにみえた。


 だが、淳二が悪ふざけで、卒業した先輩が、高校時代に、童貞を卒業したことがあると言う情報を聞きつけたのは、つい先日のことだった。


「先輩。それ、マジで言ってるんすか?」


 ある時期のある週末だけの特別企画イベント。本当にAV女優とのセックス者が選別される。と、その先輩は、童貞卒業をこの長政で済ませたという情報だった。


「行ってこい! もうそろそろ十八時だ。うらやましいなあ? おい」


 淳二が、俺に笑いかけて、DVD代として二万円を渡した。ゴクリと唾を飲み込むと、俺は咳払いをして、緊張のまま店内に入った。


 店内では、名前も聞いたことのないAV女優が来店しており、握手会が実際に開かれていた。そのAV女優のDVDを片手に数名ほどの男性客に混じりサイン会に並ぶ。


 目玉企画というイベントだけあって、大勢の男性客がいるのかと思ったが、さほど客はおらず、たった数名の中に、高校生が一人混じる状態だった。


 緊張の面持ちで、サインをもらい握手をする。握手する手が汗ばんだ。その姿にAV女優は、嬉しそうにウインクし、くじ引きのくじを引きながら、投げキッスをしてくれた。


「もしかして、緊張してる?」


 その言葉だけで、気分が高揚しそうになった。その女優は顔を近づけ、耳元で小さく囁く。


「一等よ? 後で裏で待ってるね?」


 俺と握手した後、女優は、くじ引きのボールの色を店員に見えるように上にかざした。いきなり店員がベルを持ち、『チリンチリン』と音を店内に響かせると同時に店員の声が店内にこだまする。


「おめでとうございます! 一等賞です」


 イベント開始から数十分で終了の合図がなった。

 するとおもむろに、他の男性客たちは、舌打ちをして俺に睨みを効かせた。

 マジかあ。この後、どんな展開が待っているのだろうと、緊張で持っていたDVDを落としそうなりながら、会計レジに進む。


 他の男性客たちもレジに進むが、AV女優が男性店員に声をかけて、奥の扉に入って行く。男性客たちは一様に悔しい顔をしながら、店を出て行った。


 DVDの代金をレジで済ますと、俺は店員に呼び止められた。


「お客様は、一等賞です。奥の部屋にどうぞ」


 店員に促され奥の部屋に案内される。

 緊張の瞬間。扉を開けると案外だだっ広い部屋があり、中にはテーブルと簡易椅子が置かれて、その椅子に七十代ぐらいのお婆さんが、投げキッスをして座っていた。


 婆さんは、入れ歯をカタカタいわせながら、くるみと製菓を片手に持ち言った。


「さあ、いらっしゃい。パックンチョの時間だよ。はい、アーン」

「えっ……。まっ、マジ……。罰ゲームじゃんか!」

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