枝垂挫ゆいは可笑しくなった。
九日晴一
Said goodbye.
(0
懐から落ちたものを見下ろす。
黒く冷たい拳銃が、水たまりに波紋を生んでいた。屈んで手に取ると、自分は何を思ったか、それを掲げた。
重なる波紋が伝わり、スニーカーのつま先に阻まれる。
銃口の先に立つ少女が、薄く笑っていた。儚い佇まいで、今にも透けてしまいそうで怖かった。
けれど、込められた弾丸なら間違いなく心臓を撃ち抜くことができる、と直感が囁く。それこそが正しい行いなのだと思えて、自分が恐ろしく感じる。
引き金、指をかけ。
感じる重さ、わずか。
音はくぐもり、あっさりと。
最後になにかをつぶやいて、少女は崩れた。
こぼれた血液は涙と混ざり合う。絵の具を筆で組み合わせるというよりは、バケツの水に垂らしたかのような広がり方だ。
水面に立ち尽くす影。燃えるような赤色が涙に褪せていく。変化していく。
いつしか。
自分が立つ境界の向こう側は、黄色い景色で埋め尽くされていた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます