姫陰陽師、なる!
野之ひと葉
ー邂逅編ー
序
《……に、頑固なんだから!》
ずっと聞こえていた雑音だったものが、その時急に言葉になって聞こえてきた。
いつもと同じまどろんだ中途半端な意識の中、耳と一緒に目もぼんやりと戻ってくる。とはいえ、実際の目で見えているのとは違うことはわかるそれは、色はわからないまま、物の輪郭だけを写した。それでも、そこにいるのが背を向けた女性だとはわかる。ふわふわと揺れるのは、長い髪。足もとに向かって広がる着物は馴染みのない形をしていた。
《自覚が必要ってこと、かな?》
また、声。
動きを止めた女性は、しばらくすると、頭の高さに右手をかざした。その手のひらから空中に波紋の様に金色の光が広がった。
それと同調するように、私に中の何かが動いて、ざらりと全身が内側から撫でられる。肌がざわめいたのは錯覚だろうけれど、生々しい。
《リンクは、できてるわね》
驚嘆に何もできずただ彼女を見た私に聞こえてきたのは、安堵の声。
《仕掛けは順調に機能してるし。できれば、仲介者なんていない方がいいんだけど、しかたないか》
今度は左手が、空中に金色の光の波紋を描く。
とたん、浮遊感にすべてが曖昧になっていく。
《ねえ、聞こえてたりするのかな? お節介なのはわかってるけど、でも、苦しそうなの、見てるのつらいから。あなたはね、もっと自由になっていいんだよ。自分をかわいそうにしちゃだめなんだからね》
小さくなっていく声がとても優しかった。
そして、私は――
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます