第17話 今夜は二人きり 1

 間瀬ませたまるの家では。お盆の時期、毎年、父親の実家に里帰りしている。

 しかし、今年はあらたがいるためたまるは留守番することになった。

 つまり、一晩、たまると新は二人きりとなる。

 母は、出かける前、たまると新に

   「新ちゃん、たまるのこと頼むよバカなことしたら殴っていいから。」

   「はい、叔母さま。」

   「たまる、新ちゃんを守るんだよ、そそうするんじゃないよ。」

   「分かっているよ、母さん。」

俺は母からの信頼度はかなり低いと思った。


 俺は新に聞く

   「新は実家に帰らないの。」

   「帰ったら、二度と戻って来れないかもしれないから戻らないわ。」

間瀬の本家は複雑で厄介やっかいなところらしい、俺の本家に対する考えは甘いかもしれない。

 それより、問題は今だ、俺は一晩、煩悩ぼんのうと戦わなければならない、しかも負けることは許されないのだ。

 ようはいつもと同じように過ごせばいいだけである・・・うー、緊張してきた。

 午前中はそれぞれ参考書をする、そして新は昼食を作り始める。

 なぜか、俺は自分の部屋で正座して待つ、ドアがノックされる

   「入っていい。」

   「どうぞ。」

エプロン姿の新が入って来る、やはりエプロンいいなー

   「何、正座しているの。」

   「いや、なんとなく。」

俺はごまかす。

 昼食は緊張で味が分からなかった。

 午後の勉強も無事に終え、二人でショッピングセンターへ買い物に出かける。

 相変わらず、新を振り返って見る人は多い、結婚したら買い物はこんな感じだろうか。

 結婚!いやいや早い早い、結婚するとは限らないのだ。

 帰宅すると新は夕食の準備、俺は風呂の準備をする。

 夕食を食べながら、新が聞く

   「美味しい?」

   「うん、美味しい。」

本当は、味が分からない、新がさらに聞く

   「どうしたの?今日、ちょっとおかしいよ。」

   「そうかなー、夏バテでもしているかな。」

俺はいい加減なことを言う、新は俺の横に来るとおでことおでこをくっつける、新さん、近い、近いです。

   「熱は無さそうね、叔母さまに留守を任されているんだから、何でも遠慮なく

    言ってね。」

添い寝してください!違う違う、俺は頭の中をグルグル回転させながらなんとか

   「お構いなく。」

と言った。

 風呂も新が入っているとき、耳をふさいで音が聞こえないようにして耐えた。

 入浴後、勉強は一番忍耐力と必要をした。

 新のパジャマの胸元が気になるし、いい香りがする。

 普段はここまで気にならないのに・・・

 12時頃、勉強は終わった、今日はもう寝よ。

 しばらくするとドアがノックされる

   「入っていい。」

俺は床に正座し

   「どうぞ。」

と言う。

枕を持った新が入って来る、えっ、なにこれ、俺は心の中で焦るが平静を装う

   「どうしたの、新。」

   「一緒に寝ようか、だめ?」

俺は心の中でイエス、イエスですよ新と叫ぶが、口から出たのは

   「俺たちはまだ学生だからちゃんとしてからにしよ。」

   「そうよね、たまるの言う通り、おやすみなさい、スキよ。」

と言って出て行った。

 俺のバカ、なんで肝心な時にまともなこと言うんだー

 翌朝、俺は新と朝食を食べる。

 今日は味がするさとりりを開いたのだろうか。

 新が言う

   「昨夜はごめんなさい、忘れて。」

   「いつか、俺の方から言わせてくれ。」

   「うん。」

新は笑顔を見せる。

 両親は午前中に帰って来た。

 よほど、俺が信用できないのだろう。

 しかし、母は一晩でやつれた俺を見て笑った。

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