02
先頭を歩くルカがふいに立ち止まった。
「ルカ?」
「———妙な気配が…」
素早く周囲を見渡し、視線を止めた先からガサリ、と音が聞こえた。
木々の間に大きな———狼に似た二頭の獣が立っていた。
赤い瞳が怪しく光っている。
「魔狼!?何故こんな所に!」
「ロイド!二人を護れ!」
フレデリックは素早く腰に下げていた護身用の剣を抜いた。
フレデリックとルカが魔狼を塞ぐように立つと、ロイドは呪文を唱え始めた。
足元が丸く光ると、地面に銀色の魔法陣が浮かび上がる。
「二人はこの中に入って」
「リリー様…私…」
「———大丈夫。ルカもフレッドも強いわ」
魔法陣の中で、リリーは震えるマリアの手を握りしめた。
一頭の魔狼が飛び掛かってきた。
喉元に喰らいつこうとするのをフレデリックが剣で受け止める。
ルカが腕を振ると複数の光の矢が飛び立ち、獣の脇腹を襲った。
苦しげな咆哮を上げ身を捩らせた隙をつき、フレデリックは魔狼の首を切り割いた。
「あと一頭!」
間を置かずに斬りかかるが素早く避けられる。
すかさずルカが光の矢を打ち込み、倒れ落ちた魔狼の首をフレデリックが剣で切り落とした。
「何故こんな所に魔物が…」
ルカが魔狼の死体を確認するのを横目で見ながら、フレデリックは剣に付いた血を払うと鞘に収めようとした。
けれどその瞬間、茂みから黒い影が飛び出してきた。
「後ろっ」
「まだいたか!」
新たな魔狼はリリー達のいる魔法陣へ飛び掛かってきた。
「イヤ———ッ!」
マリアの悲鳴と共に、魔法陣の中で激しい白い光が立ち上がった。
光は周囲に溢れ出し———弾け飛ぶように消えた。
「なっ…」
「魔狼が…?」
光の消えた後には、獣であったと思われる黒い塊があるだけだった。
「今の光は一体———」
フレデリックが振り返った先に、まだ光が残っていた。
「あ…」
白い光が、マリアの身体を包み込むように揺れていた。
「いや…そんな……」
信じられないというように、ゆるゆると頭を振る。
「今のは…マリアが?」
「…この白い光…力…まさか」
何かに気付いたように、ロイドは目を見開いた。
「ロイド?」
「聖魔法———」
「聖魔法?」
「〝聖女〟だけが使える、浄化の力だ———」
ああ、始まってしまう。
祈るようにリリーは天を見上げた。
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