第104話 おふたりさん、お仕事です
≪学年対抗綱引き、3年生の部優勝は……3年3組です!≫
「うおー!」
「さすが先輩方! 後にちゃんと続いてくれるぜっ!」
「これで面白くなりやがった!」
ははっ、すごいね? 3年も勝っちゃったよ。これは……マジであるぞ? 逆転総合優勝がっ!
「おい、蓮! 紫組なんかヤバくないか?」
「当たり前っすよ! 目指すは総合優勝だけっす! ねぇ先輩?」
沢山の生徒でごった返す学食。そんな片隅で俺はいつものメンバーと優雅な昼食をいただいている。いやー、こんなに気が楽な昼ご飯は最高だなぁ。
「そうだな。まず反撃の狼煙は上がった。ここから勢いに乗って突き進むのみだ」
「おぉ、なんかすげぇやる気じゃないか蓮っ! だったら俺達赤組も負けてられないぜ!」
「絶対に負けませんよ? 栄人先輩!」
やはり、そんを盛り立てる作戦は効果抜群だったな。まさか本当に綱引きで優勝するとは思いもしなかったわ。まぁそういう意味では、俺達が優勝できたのは更に想像の範囲外だったけどな。
そう、すべてはそん率いる1年3組の怒涛の快進撃から始まった。決して体格のいい奴が多い訳ではなかったけど、そんの掛け声に皆が呼応する姿はまさに鉄壁!
しかも皆体を寝せて上を向き、全体体重を綱に乗せる。勢いではなくジリジリと引っ張って行く作戦は見事だったと思う。おかげで無駄な体力を使う事なく決勝へ進出し、そのまま優勝ときたもんだ。
まぁ、驚いたよね? でもその瞬間、紫組団長は好機と見たんだろう。めっちゃ俺の方見てたしね? 全力で目合わせない様にしましたけど、1年が優勝したとなると、今度は俺達が危機的状況に陥った訳だ。
そしてヨーマの無言のプレッシャー……俺は考えた、考え抜いた。そして、身を賭してある作戦を決行する。
『お前ら、綱引き優勝したらリレーメンバーだけじゃない! 綱引きに出た男子全員に、美女揃いの我がクラスが誇る最高の3人から、タオルの贈呈と癒しのお言葉があるぞっ!』
その言葉が、俺達男子の心に火をつけた。いや、勿論3人から(特に沼尾さん)からは批難もありましたよ? でも、そんなのヨーマにあれを暴露されるのに比べたら全然痛くないのさっ! とまぁ、そんな事もあり、そんに1年が使っていた戦術を教えてもらったりなんだりで……
『よっしゃー! 優勝だ!』
『急げ! 俺高梨さんっ!』
『あっ、こら卑怯だぞ!』
『早瀬さーん』
『……沼尾さん……』
見事優勝した訳だ。大丈夫、早瀬さんと沼尾さん、凜には懇切丁寧にお礼言ったし、笑って許してもらえたしね?
となると、あと肝になるのはクラス対抗リレーと色別対抗リレーか……気を抜くなよ? そして勢いそのままぶち当たれ!
「月城? ちょっといいかしら?」
「ん? なっ、なんでしょう?」
昼食を終え意気揚々とテントへ戻って来るや否や、待ち受ける女子達の熱い? 視線。
これ恐怖症治ってなかったら気絶もんだったろうな。てか治っててもなんか見えない圧を感じるんですけど? 沼尾さん?
「私達は別にタオル渡したり、頑張れとか言うのは構わないんだ。でもさ、女子達も頑張ってんのよ」
女子……? なるほど、現に前半はうちの男性陣がへなちょこで、女子に頑張ってもらってたもんな。沼尾さん含め、皆の言いたい事も分かる。
「そうだよね」
「でしょ? だからさ、私達にもなんかご褒美とかない訳?」
「ごっ、ご褒美?」
「そうよ」
ご褒美って……3人によるサービスを受けた訳だから、だったらそのお返しに……
「じゃあ男子でイケメンだと思う奴に……」
「却下! うちのクラスでイケメンクラスの奴なんて居ないでしょ? ねぇ?」
「そうだよー」
「そうだそうだ」
「沼尾さんそれは言いすぎじゃ……」
「だって琴ちゃん? 事実だよ?」
うおっ、ひでぇ。ヨーマ並みの直球じゃないか! まぁ確かに超絶イケメンレベルの奴は……居ないな。
「んー、じゃあどうしようか?」
「そこが月城? あんたの腕の見せ所よ?」
見せ所って……どんだけレベル高い課題だよっ! くそっ……男子の顔面レベルじゃ門前払いだろ? 他に何か方法は? 顔面……イケメン……超絶……
ん? 待てよ? 何も同じ組の奴じゃなくても良いんじゃないか? ある程度皆が知ってて、周知のイケメン……居るじゃないかっ! 俺に借りがあるであろう奴がっ! ……いや? 奴らがっ! さてと、だったら一言断り入れとかないとっ!
「あのー早瀬さん?」
「えっ? 何かな?」
「こらっ、また琴ちゃんに何か頼むつもりでしょ?」
「違うって! あのさ、早瀬さん?」
「うっ、うん?」
「ごめんっ! 栄人少しだけ借りますっ!」
「えっ? かっ、借りるって、わっ私は別に栄人君とは……」
よしっ! 断りは入れたっ! 本当にごめんよ? 早瀬さん。けど、これしか方法がないんだ。
「分かった。じゃあさ、女子の皆が午前以上に頑張ってくれるなら……2年4組委員長っ! 片桐栄人からタオルと労いのお言葉がもらえます!」
「4組の……」
「片桐君ってあの?」
「イケメン栄人君!?」
ザワザワ
よしっ! テント内の女子達が騒ぎ出したぞ?
「片桐か……なかなか良いチョイスじゃん」
なに? 反応してない女子が居るだと? 沼尾さんを始めパラパラとその姿が見受けられるな?
……ふふふっ、そうだろうと思ったよ! だから用意してるのさ? もう1つの秘密兵器を!
「でしょ? でも実はあともう1人居るんだ。聞いた事ないかな?」
「へぇ、誰?」
「……1年3組、木村相音。サッカー部所属」
「はっ!」
おぉ? なんか名前言っただけで沼尾さん反応したんですけど?
「木村……?」
やっぱ名前だけじゃパッとしないかぁ。えっと……あっ、丁度良い所で歩いてるじゃん!
「あっ、あの子! どう? あの小さい子からももらえるよ?」
「ん? どれどれ……」
「かっ、可愛いー」
「何あの子? あんな子1年に居た?」
「待って? 紫のハチマキ持ってない?」
すっ、素晴らしい! 素晴らしいぞ君達っ! ふっふっふ、となれば? これで問題も万事解決だぁ!
「おいっ、蓮!? なんだよ? 次リレーあんだけど?」
「いいからいいから」
「せっ、先輩! 俺もリレーがあるっす」
「いいからいいから」
はい、到着。さぁ、おふたりさん? お仕事です。
「おいっ、ここってお前の所のテントじゃ?」
「はいこれ、タオル。明石もっとタオル渡してくれ?」
「せっ、先輩?」
「はいはい、とりあえずいっぱい持ってね? 島口、こっちにももっとタオル」
っと、これで準備は完了かな?
「おい、蓮! 本当に意味が分からないぞ?」
「はい、君達イケメン&美少年コンビに名誉あるお仕事です」
「イケメン?」
「美少年?」
「全力を尽くし、見事玉入れで優勝した我がクラスの乙女達に、タオルの贈呈と労いのお言葉をどうぞー」
「はっ、はぁ? 意味が……」
「せっ、先輩どういう事……」
「きゃー、片桐君!」
「私が先よ?」
「なにあのあどけない感じー!」
「可愛いー」
「うわっ、待って待って! ちゃっ、ちゃんと並んでっ!」
「なっ、なんすか!? 頭撫でないでっ! 顔も撫でないでっ!」
ふぅ。これで一件落着か。それにしてもこいつらの人気にはホント嫉妬しちゃうぜ。うちのクラスの女子が、あそこまで圧倒的な力を見せつけるとはな……女子の力は恐ろしっ!
とはいえ、これで3年も勝てば玉入れも紫組が独占。おそらく2位辺りまでは順位が上がるだろう。やっぱり最後はリレーか……そこで全てが決まる。まぁその為にも……
「あははっ。はいっ、はいっ、よく頑張ったね? ははは……」
「ちゃっ、ちゃんと渡すっす! わたっ、ぎゃあー髪をグシャグシャするの止めてください」
もう少し頑張ってくれたまえ、イケメン&美少年コンビ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます