第6話犬と魔法剣士

僕達は久しぶりの休日を家で過ごしていた。

家のリビングには、テレビがありこの世界での放送が流れている。

僕達の世界とほぼ変わらない感じだ。

今放送されているのは動物番組。

動物番組といえば犬とか猫が多いよね。

かわいいなぁと見ていてふと気がついた。

らいとって動物好きだったっけ…?

僕はそう思いながらテレビを見ていると、らいとが僕に話しかけてきた。

「なぁ、みら?ふと思ったんだけど、お前の元の世界の家、犬飼ってなかったっけ?」

「うん、飼ってたよ!家ではシベリアンハスキー飼ってたんだ。」

動物かぁ…ここで飼うのもありかもなぁ。

僕はそう考えてると…。

「みらは犬が好きなのか?」

僕は犬と猫どちらかと言えば犬派なんだよね。

「そうだよ。僕は犬が好きかな?えっ??もしかしてらいと?犬飼っていいの?」

僕が目を輝やかせながららいとを見つめると。

「誰が世話するんだよ……」

らいとはとても嫌そうな顔をしてやれやれと言わんばかりのため息をつきながら首を横に振る。

「えーっ!………らいと。」

僕が不機嫌になり、らいとに文句を言おうとした時。

ピンポーン

「やっぱりみらにはペットは無理……ん?」

「あ!なんかチャイムなってる誰だろ?」

そう言いながら玄関に向かう

らいとの後を僕も返事しながら着いていく。

「はいはーい!!」

僕達が玄関を開けると目の前には誰の姿も無かった。

唖然となり周りを見渡しても誰もいない……

あれっ?誰もいない…

よく見ると、1匹のシベリアンハスキーが座っていました。

「あ!誰もいない……ん?犬??」

らいとは犬に気がつくと僕も目の前のわんちゃんに思わずにんまり喜ぶ。

「こんにちは!」

すると目の前の犬が僕達に話しかけてきた!

しかも人間の言葉で!?

僕達はあまりの出来事に固まってしまった……

僕は我に返り1言目に出た言葉は……

「犬が!?」

「喋った!?」

らいとも呆然としながら僕が続けて言おうとした言葉を口にする。

辺りには誰の姿もなく明らかに…このわんちゃんが人間の言葉を話したという事で間違いなさそうだ。

僕達が我に返ると。

「ああ、すまない…私は獣人なのです。」

僕達の目の前にいるシベリアンハスキーは僕達に流暢な人間の言葉で話しかけてきた。

「あ!獣人??」

らいとも我に返り獣人を認識したようだ。

「そうみたいだね。」

僕も冷静になり目の前のわんちゃんの話を聞く。

「失礼した…私の名前はネィジィ。獣人の魔法剣士です」

僕達の目の前のわんちゃんは僕達に挨拶をしてくる。

「魔法剣士!?」

驚きながらもらいとは魔法剣士というワードに反応する。

僕もわんちゃんの次に魔法剣士というワードに驚いた。

「凄いね!?」

そして早速わんちゃん…もとい、ネィジィさんは俯き、話し始めるのでした。

「実は今日、ここに来たのはギルドでお二人のお噂を聞きここにきました。」

僕達は依頼に少しずつ慣れてはきたけど…。

でも、まだまだだから。

ギルド長の配慮でネィジィさんは僕達の所にきたんだろうなと勝手な推測をしてしまった。

「僕達そんなに有名ではないかと……」

僕はやっぱりまだ自信がなくて。

ネィジィさんはでも必死に続ける。

「でもペットの世話から人探しまでそういった仕事も引き受けてくれるとか…」

確かに僕達の最近のギルドの依頼はペット探しが主だった気もする。

そう思っているとらいとは笑いながら。

「まあ…ギルド長の配慮でね。そういった依頼が最近は多いかな。」

「こんな所で立ち話もなんですし中にどうぞ!」

僕はあまりの出来事にびっくりしていて、ネィジィさんを家の中に招き入れる事を忘れていた。

やっと、お話を聞くことが出来たんだ。

「ありがとうございます!では失礼します。」

目の前のシベリアンハスキー……いや、ネィジィさんを応接室に通したのでした。

ネィジィさんは毛並みのいい犬でどこかのお金持ちの家で飼われていたような雰囲気があったのです。

僕達は改めて依頼を聞くのでした。

「では話を聞かせてください。」

らいとはなぜか雰囲気をだして真面目な顔をして言うもんだから僕は隣りで薄笑いをしながらネィジィさんの言葉に耳を傾ける。

するとネィジィさんは一呼吸おき、力強い言葉で話してきたのです。

「是非!!人探しを依頼をお願いにきました。」

ネィジィさんの言葉には熱量があり真剣さが伝わってくる。

らいとも迫力におされてるみたいだ。

「人探し??……それは誰を?」

僕は恐る恐るネィジィさんに問うとネィジィさんは重い口を開くのだった。

「私の主、ネィジェラート公爵様だ!!」

「あなた方も知ってるであろう?この国の貿易長とも呼ばれる貿易商、ネィジェラート様だ。」

僕達はこの世界に来てこの街というか、この国を出たことも無くまだ来たばかりといっても過言ではない。

僕はそう思い口にする。

「僕達はこの世界にきたばかりで何も知らないんです……」

するとらいとはネィジィさんに詳しく聞くのだった。

「で、?その公爵様をなぜ探してるんだ?そんなに有名ならすぐにでも見つかるんじゃねぇか?」

確かに僕もらいとと同じ意見だ。

そんなに世界的に有名な方ならそれこそ世界規模の事件になるのではないかと。

するとネィジィさんは…いや、目の前のわんちゃんは俯きながら話を続ける。

「実は、大切な用事があるといいお出かけになられて戻ってこないんです。」

言って出かけたとしてもどれくらい帰ってこないのかが気になり僕は聞いてしまった。

「えっ?どれくらい待ってるの?」

ネィジィさんはため息をついて続ける。

「一年ほど待ってるのですが……」

らいとと僕は顔を見合わせて驚いてるとらいとは。

「おい、それ!!えっ?一年も待ってるのか?」

僕達がびっくりしていると。

「はい。私ネィジェラート様の事お慕いしておりまして信じておりますの……私…失格ですね…」

僕は何とかネィジィさんを励まそうと言葉をかける。

「そんな事ないですよ!一年も待つなんて凄いですよ!僕だったら一年も待つなんて……するかも……」

「するんかい!!」

らいとが絶妙なツッコミを入れるとネィジィさんは顔を上げた。

「それで…あの…御依頼引き受けてくださるのでしょうか?」

ネィジィさんの力強い真剣さに僕達もやる気が湧いてきた。

「もちろんです!!こいつがおかしい事言ってすみません…」

らいとは僕に謝れよと言わんばかりの顔で僕を見てくる。

「ごめんなさい…許してくださいますか?ネィジィさん。」

ネィジィさんは冗談を言っていたことに気がついてないようだった。

「え??だ、大丈夫ですよ。」

「らいと!ネィジィさんが許してくれたよ!やったぁ!」

僕は嬉しくなってらいとに言うとらいとはジーッと僕を見てたしなめてくる。

「ごめんなさい!冗談です、依頼に対する熱といいますかなんというかその…すみませんでした。」

僕達がそんなやり取りをしているとネィジィさんは声をかけてくる。

「大丈夫です。お気になさらず。仲が宜しいんですね。……私は今、人化できなくなっていまして、その理由が、ご主人様を犬化して探し続けていたらショックもあり獣人化出来なくなってしまいまして…今の私では戦えない状態なのです…」

ネィジィさんはそう言うと辛そうな顔で僕達に視線を戻す。

気づいた僕はちょっと質問をする。

「ネィジィさんは犬化すると嗅覚が鋭くなるんですか?」

そう言うとネィジィさんは頷き続ける。

「そして獣人化出来れば私も魔法剣士として闘えます。」

そんなネィジィさんを見てらいとは立ち上がり

「なるほど!そういう理由で…なら行こうぜ」

そして僕もらいとに続く。

「らいと!行こうよ!あ!でもどこか心当たりありますか?」

僕はネィジィさんの依頼を受けるべく準備する前に聞く。

「犬化のおかけでとりあえず鼻は獣人よりも効くのです。匂いの濃い場所をやっとこの街で見つけたのです…」

ネィジィさんはご主人様を探しながらこの街までやっと辿り着いたんだ。

僕達が助けなきゃ!僕はそう思いらいとを見ると。

「じゃあ早速そこに行ってみるか?」

「うん!行こう!!」

僕も準備をしながら答える。

こうして僕達はネィジェラート様の匂いのする倉庫らしき場所に向かう為出発したのでした。


この街は緑もあり公園もあり近くにはお城もある。近くには港もあり貿易も盛んな街です。

まあ僕達もやっと慣れてきて散策してる時、気づいたんだけどね。

そして僕達の前で鼻をクンクンさせて、道案内をしているネィジィさん。

周りから見たら警察犬を使いながら後を追ってる警察官…みたいな光景なのだろう。

もちろん僕達が警察官!?

そんな事を僕は思いながら後を追っているとネィジィさんは突然立ち止まり後ろを振り返り声をかけてきた。

「こっちからネィジェラート様の強い匂いが……二人ともこっち!」

僕達は顔を見合わせ目配りするとらいとは答える。

「わかった!!」

「うん!!」

僕もらいとに合わせると走り出すネィジィさんを追いかけた。

そして僕達は港にある倉庫が並んでる場所に辿り着いたんだ。

ネィジィさんが匂いの元へゆっくり匂いを嗅ぎながら歩くと何も無いところで歩みを止めた。

「ここ!ここに何かあるみたい!」

ネィジィさんはそう叫ぶ。

僕達3人の目には映らない何かがそこにあるんだろう。

らいとは何かを感じ取ったみたいで僕に言ってくる。

「みら?そこに何かあるのかもな!」

僕は頷き生活魔法を試してみる。

「生活魔法!『ペイント!!』」

僕の手から飛び出したピンクの液体は僕達の前に扉の姿を見せた。

そして扉には巧妙な魔法の鍵がかかり見つけても開ける事も難しかっただろう。

ネィジィさんは倉庫の扉の前で震えながら僕達に言う。

「ここよ……やっと…ここまではこれた……でもね…今の私には力がないの……」

ネィジィさんが力を落として言うと。

今度はらいとが扉の前に立ち念じる……

らいとの身体を電気が帯びていき……

「魔法の鍵よ…開け!」

『ライトニング、アンロック!!』

らいとの手から出た雷は扉の鍵穴に入り込み光が溢れ出しガチャっと音がした。

魔法のドアはらいとの手でギギっという音をたてて開かれていく。

「大丈夫!!僕達が力になるよ!!」

僕はネィジィさんにそう言うと中に足を踏み入れる。

「行こうぜ!ネィジィ…ネィジェラートの匂いの元へ連れてってくれ!」

らいとも扉から手を離して言った。

「ありがとう。こっちみたい!」

ネィジィさんは僕達に言うと駆け出した。

倉庫内はヒンヤリと薄暗く静かな空間だった…

僕達はネィジィさんの後ろを走りながら着いていく。

「クンクン…ネィジェラート様??違う…なんか薬の匂いがする。これは…メルティハート??」

ネィジィさんは何かに気づくと動きを止めると奥から声がしてくる。

「てめぇら、法帝を詰めた箱をさっさともってきやがれ!それとハートも忘れるな!!」

ドスの効いた声が奥から聞こえてくる。

「しっ!!二人とも隠れろ!!」

らいとが僕とネィジィさんを止める。

「メルティハート?それってあの最近有名な麻薬じゃない!?」

僕は最近テレビでそんなニュースを耳にしていたんだ。

まさかそれに関わる事になるとは…。

そう思っているとネィジィさんも大声で言う。

「法帝ってネィジェラート様の事だ…早く行かなきゃ!!」

ネィジィさんが焦っている。

「ダメだよ!今行ったらあなたも捕まってしまう。あの組織はとても危険だよ!」

僕は今にも飛び出しそうなネィジィさんを引き止める。

「何か考えよう……」

らいとは冷静に言うと考えてる。

でもネィジィさんは落ち着けないみたいだ。

「時間がない……私に力が戻れば……」

2人が考えてると僕に名案が浮かんだ。

「そうだ!わかった。僕に任せて!!」

僕が目を閉じ魔力を集中させると…僕の身体は赤く発光していく。

「『フィジィックス!!状態固定!!』そして『フィジィックス発火!!』」

僕が魔法を唱えるとやつらが担いでいた箱は空中に浮いた。

そして麻薬組織の1人の組員は急に火だるまになったのだった。

「うわっ!!急に火がついた!!」

もう1人の組員が驚いて震えながらBOSSらしき人物に答えを求めた。

「うぅ…どうしますBOSS??」

BOSSらしき人物は冷や汗をかいて叫ぶ。

「てめぇら、あわてんじゃねぇ!!誰か知らねぇが邪魔をするんじゃねぇ!」

BOSSらしき人は身体を青く発光し魔力を溜める…そして魔法を放った!

『水の魔法ウォーター!!』

BOSSの水魔法は火で燃えている組員の火を消火した。

チャンスとばかり僕はらいとに叫ぶ。

「らいと!ネィジィさんを援護して!!」

らいとは頷くとらいとは身体に雷を纏う。

『スタンガンショック!!』

ネィジィさんに襲いかかろうとする組員をらいとは雷で仕留めていく。

そしてネィジィさんが箱の蓋をズラし中にいた男を助け出す。

「ネィジェラート様!大丈夫ですか……?」

中から少し痩せこけた初老の男性をネィジィさんは引っ張り出すと、男性はゆっくりと目を開けた。

「こ……ここは………。ネィジィ……君が。」

男性はそう言うと安心したような笑顔を見せるとまた眠ったのだった。

ネィジィさんは目に涙を浮かべている。

「良かった…ネィジェラート様…無事だったんですね……」

ネィジィさんの目からエメラルドグリーンの雫が1粒右手に落ちた…その時…

「あ!力が戻ったわ。」

ネィジィさんの身体は緑色に光る。

『獣人化!!』

ネィジィさんがそう叫ぶとネィジィさんは美しい魔法剣士に姿を変えたのだった。

「あ…凄い…獣人に戻れたみたいですね!!」

僕がそう言うとネィジィさんはマフィアをキッと睨みつける。

「ネィジェラート様は私がお守りしますわ!!」

ネィジィさんの身体はさっきよりも緑色に光り風が起こりネィジィさんを風が包む。

「風よ!私のこの剣に力を!!」

『ゲイルシュトローム』

ネィジィさんの身体を包む風が竜巻をおこしマフィア達は巻き込まれていき、残るはBOSS1人になっていた。

「チッ!俺はまだやられねぇ…」

マフィアのBOSSはそう言うと身体を青く発光させ魔力をためている。

それを見ながらネィジィさんは僕達に。

「みらいさん、らいとさん、ありがとうございます。獣人化できたら後は私一人で十分です」

ネィジィさんはマフィアのBOSSの方を振り返る。

「貴様、よくもネイジェラート様を拐かしてくれたな…」

マフィアのBOSSは水の球をネィジィさんに数発放つ!

しかしネィジィさんは不敵な笑みを浮かべ軽々とかわしていく…

「ふん、遅い。この程度か!」

水の玉はネィジィさんの後ろで破裂すると、そこにあった木の箱は粉々に粉々になった。

「貴様らなどが私に適うわけないだろ……」

ネィジィさんは余裕の表情でBOSSに言う。

「くっ、ならこいつはどうだ!『ウォーターウォールサラウンド!』」

BOSSは更に身体を青く発光させ、BOSSの眼前の床から水が湧き出し高圧の水壁を作る。

ネィジィさんが水壁を剣で水を斬ろうと刃を立てるが跳ね返される。

「そんなもの…!くっ、水とはいえこの厚みでは剣が通らぬか…」

BOSSは笑いながら叫ぶ。

「守りだけじゃねえぜ。おらよ!『ウォーターバレット!』」

高水圧の水の壁から水の弾がネィジィさん目がけて放たれた!

ネィジィさんは凝視し魔力を貯める…。

「壁から水の弾が!?…ならば…『コントロールエアー』」

ネィジィさんの風は水の弾を巻き込みBOSSの顔面めがけて飛んでいきBOSSを捉える。

「がっ、息が、苦し…っっ……。」

BOSSは気絶し倒れた。

そして水の壁は消え去った。

「よし、壁が消えたな。終わったな……」

ネィジィさんは圧倒的な力でマフィアのBOSSを倒したのだった。

「やったねネィジィさん!!」

僕は笑顔でネィジィさんに声をかけるとらいとも隣りで感心したように言った。

「やるね、ネィジィ……。」

するとネィジィさんは僕達の元へやって来てお礼を言ってくる。

「ありがとう二人とも!!二人に何かお礼がしたいのですが……」

僕はそれを遮るように言う。

「今はネィジェラート様のそばにいてあげて…」

らいとも気を使って答える。

「やっと再会できたんだ…俺達はこれで…」

僕達が立ち去ろうとすると…。

「ありがとう!本当にありがとう!」

ネィジィさんは、頭を下げてお礼を言ってくる。

僕は振り返る。

「ネィジィさんの力だよ!僕達は手伝っただけだよ。これから頑張ってね!」

そして僕の先を歩くらいとが、僕に声をかけてきた。

「いくぞ!みら!!」

「うんっ!!」

僕は返事をするとらいとについていく…。

こうしてネィジィさんには、きっとまた幸せな毎日がくることでしょう。

でもさ…1年も待つなんて凄いよね…

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