第5話 了
◆了 視点
ドォーンッ
「は、ひ?!な、何事?!」
僕は、激しい揺れと音で慌ててベッドから起き上がった。
「じ、地震か?だけど、揺れより音が凄かったけど?!」
すぐに窓に駆け寄るが、窓の外は暗くてよく見えない。
「何だろう、町の明かりがみえない?!ん?なんか、声がおかしい?っていうか、声変わり前に戻ってさらに、トーンが高い?」
風邪かな?不味いな、やっと兄ちゃんの四十九日の法要が終わったばかり、これ以上、母さん、父さんに心配かけるわけにはいかないのに。
正直、僕もだけど、二人もかなり落ち込んでるよ。
子供を庇って死ぬなんて、兄ちゃんらしいけど、家族にこんな悲しみを与えるなんて酷いよ。
「とりあえず、一階に行ってみよう。タンスでも倒れてたら大変だ!」
そう思って、ベッドから出ようとして妙な事に気がついた。
「あれ?僕、こんなでかいパジャマ、いつ着たっけ?」
なんだこれ?ズボンがずり落ちるし、袖から手が出ないし、なんか、サイズMから5Lくらいになってない?!いや、もっと大きい?
それに、ベッドまで大きい?うわ、床が遠い???
じ、時間は?今、何時?
げ、目覚ましが両手でないと持ち上げられない、え?!なに?このちっちゃい手!僕は一体どうなった?
ドタドタドタドタッ
僕があわあわしていると、階段を上がる音が聞こえてきた。
バタンッ
「了!無事か?!」
「え?、だ、誰?!」
僕の部屋のドアを開けたのは、なんか、見知らぬカッコいいお兄さんだった。
誰?
「ん?君…は?、了、了はどこだ?!」
僕を気にしつつ、辺りを見回すお兄さん。
でも、今、了って、僕を探してる?
返事をしたほうが、いいのかな?
「と、とりあえず、何が起こっているかわからないが、ええっと?、ボクちゃん?ちょっと、おじさんと下に来てくれるかな?」
ん~っ、ここは頷いておいた方がいいのかな?父さん達が心配だし、なんか、この人から悪意は感じられない。
それに、雰囲気が父さん臭い?
兄ちゃんの四十九日の法要に間に合わなかった、親戚の人かな?
頷いた僕を、お兄さんは抱き上げた?!
そのまま、階段を降りていく、って!?また知らない、きれいなお姉さんがリビングのソファーに座ってた?!
「どうだった?」
「了がいない!かわりに、この子がベッドの上にいた」
ひ、お兄さんの話を聞いたお姉さんが、眉間に皺を作って僕を睨む?!
「それ、了のパジャマだよね?なんでその子がそれを着てるの?ん?」
は、ひぃ?!お姉さん、立ち上がって僕の顔を瞬きせずに睨みながら近づいてくる!
ヒィィ、こ、怖い、まるで母さんが雷を落とす時と変わらないよう、に、逃げたい?!ん????
「了か?」
「か、母さん?!」
なんと、このお姉さんが、りか母さんで、お兄さんは亮平父さんだった。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
その後、僕達はリビングで話合った。
父さん達は、起きてすぐは混乱したけど、母さんが友達にラノベに詳しい人がいて、異世界で若返るって話、沢山聞かされてたらしい。
だから、母さんはかなり早くから冷静だったみたい。
「ええっと?じゃあ、外は異世界?家ごと召喚なんてあるの?」
「わからないわ、こんな事、現実にあるなんて信じられないもの。でも、ドッキリだとして、こんな大がかりなものは知らないし、第一、私達に起きている体の変化は、科学では説明つかないわ」
はぁ、そうだよね。
こんなの、アニメや小説の世界の話だもん。
「でもまあ、この人に髪の毛が戻ってよかったわ。いつも、ご近所さんの若夫婦に引け目を感じてたのよ」
え、母さん今気にするとこ、そこ?
「そんな事より家が心配だ!まだ、ローンが二十年残ってるんだぞ」
「そうよね、やっと先日、変動形金利に借り換えたばかりなのに」
いや、ローンの話がメインになってるけど、論点ずれまくりだから。
「それより、水が出ないのが困るわ。トイレが流れないじゃない。それと、電気は今、点灯してるけど、大丈夫なの?」
「電気は大丈夫だ。太陽電池に切り替えて、蓄電池主体になってる。いざとなれば、自家用車が予備電源になる」
「よかったわ。冷蔵庫が使えなくなったら、困るもの。でも、近くにスーパーはあるのかしら?安売りのチラシが欲しいわ」
いかん、完全に主旨が違ってる。
ここは、僕が言わないと。
「あの、それより、これからどうするか、を決めないといけないよね?」
「そうよね、了ちゃんの保育園、決めないとね」
「了、また、保育園か。大変だな」
「違うよね?!」
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