たった、一度きりの人生
クロロニー
プロローグ 変えられない運命
「――そう。結局、君を変えることは出来なかったってわけね」
喫茶店特有の
「いいや、変わってしまったんだよ、君のせいで」
そして僕の中から全てが消え去ったのだ。彼女の存在を除いては。僕の中にあった
しかしそんな僕の反論を意にも介せず、彼女はゆっくりと首を横に振る。
「ううん、君は全く変わっていないよ。最初に出会った時から」
自分がタイムリープしてきたということを二十年間主張し続けた一人の女は、目を逸らすことなくそう言ってのけた。その瞳は心なしか潤んでいるようにも見えた。
――往生際の悪い。
「わかった。君があくまでそう主張するのなら、僕にも考えがある。一度振り返ってみようじゃないか。僕たち二人の人生と、君の吐いた壮大な嘘を」
一口も口をつけられていないアイスコーヒーのグラスから水滴がしたたり落ちる。彼女がそれを頼んだとき、まさかこんな話になるとは夢にも思っていなかっただろう。それはまるで彼女の焦りを表しているようだった。かすれ声になるほど喉が渇いているのなら飲めばいいのに、マスクを外せば魔法が解けてしまうとでも思っているのだろうか? 今は彼女の一挙手一投足に
彼女は目を
「自分も大人にならなければならない」と思わせられたものだった。今はただ、相手を威圧するための
「……いいよ、それで君の気が済むなら」
やっとのことで絞り出した言葉がそれだった。あくまで自分は嘘を吐いていないと、そういうスタンスでいるらしい。僕がカマをかけているだけだと思っているのか、それともどんな手を使ってでも反論しきる自信があるのか。どちらにしても
「残念ながら逆なんだ。もうこの話は、君の気が済むかどうかという話でしかない」同情なんてしていたらキリがない。一度信じないと決めた以上、それが真実であっても
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