第4話 ゴロちゃんの願い

「でもね、そのボルヴィックはもう日本で買えなくなってしまった……」


 ゴロちゃんの話によると、今まで輸入販売していたキリンビバレッジが二〇二〇年末に販売を停止したとのこと。


「平行輸入品をネットで買うこともできるけど、一・五リットルばかりで携帯できる五百ミリリットルは手に入らない。だから、去年大量購入したのが無くなったら終わりなの。しかも賞味期限が二〇二二年だから、来年には飲めなくなる……」


 するとゴロちゃんは語気を強めて、私に訴える。


「私には時間がないの。狭山湖の水が所沢でも飲めるようなればすべてが解決する。ここには東京からカメラマンが集まるから、わざと大声を出して訴えてるの。バズり上等、大歓迎よ」


 そして怒りを込めて、湖に向かってまた叫び出したのだ。


「狭山湖の水が飲みたい! 東京都の意地悪! 埼玉県人には荒川の水でも飲ませとけってか!? この水を所沢にも分けて! お願いだから……」


 最後は涙声になっていた。

 私は思わずゴロちゃんを後ろから抱きしめていたんだ。

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