くだらない理由で最強パーティーを追放されたので、あえて敵対することにしました

どこかの大学生

第1話

「はぁ、はぁ……。こっちは片付いたぞ! シエラ! ロッドに回復魔法かけてやってくれ! レッド! そっちはもう終わったか?!」


リュートの指示の元、シエラ、ロッド、レッドの完璧な連携により、およそ百体にも及ぶ魔物の軍勢は討伐された。


「やったなリュート! これで俺たちも魔王討伐に一歩近づいたぜ!」


盾役のロッドがリュートの肩を組んで、笑い声をあげる。ロッドはパーティーの中で一番腕力がある。ロッド含め四人全員がまだ子どもと呼ばれる年齢だが、ロッドだけは子どもの範疇を超えていた。


「ねぇ、リュート。私たち、本当に強くなっているのかな。ずっと後ろで同じ魔法を詠唱してるだけだと、なんだが強くなっている気がしないの」


支援役であるシエラは、戦場ではずっと後方で待機させ、時々回復魔法や支援魔法を使っている。


「そんなことないよシエラ。僕たちはだんだん強くなっていってるから、体力もそこそこ増えてるんだけど、シエラの回復力はそれ以上に回復力があるんだよ」


そんな慰めの言葉をレッドが言うと、シエラは嬉しそうに頬を赤らめた。シエラが居るからこそ、パーティーは成り立っているとも言える。シエラの可愛さはレッドたち三人のやる気アップに繋がっている。


「とりあえず、さっさとギルドに行って報酬もらおうぜ。今日は一晩中飲むぞー!」

「おうよ! 今夜は最後まで付き合ってやるぜ!」

「サンキュー、ロッド」


リーダーリュートに並んで、ロッド、シエラ、その隣をレッドが歩く。

ギルドとは、冒険者ギルドの略で、知らない人などいないだろうから、説明はしないでおく。

ギルドに着くと、ギルド内のテーブルに四人腰かけ報酬の分け前と今後のことについて話をする。


「では、まず分け前についてだが」

これもリーダーのリュートが仕切る。


「今回の活躍度が一番高かったのはロッドだ。だから、ロッドに四割。あと三人で二割ずつでいいよな?」

「よっしゃ!」


ロッドが嬉しそうにはしゃぎ、レッドとシエラも問題ないと言って分け前は直ぐに終わった。というか、分け前は常に活躍度が一番高かったやつに四割支給し、残りは三等分するという決まりなので、揉め事になることはない。


活躍度というのは、四人でそれぞれ誰が一番活躍していたかを投票して決める。今回ロッドの活躍は誰もが納得した。百体の魔物のうち、半分を一人で倒したからだ。やはり腕力があると魔物の体を一振で薙ぎ払えるのでかなり強い。


「それで次はこれからについて、だ。特にこれまでと話すことは変わりないが、それでも大事なことだからしっかり聞いてくれ」


三人がリュートに合意の合図を送る。


「俺たちがチームを組んでから、今日で三ヶ月だ。最初はぎこちないチームだったが、レベルもかなり上がったし、今ではすっかり勇者らしいパーティーになったと思う。それでもだ。まだまだ他の上位パーティに比べればまだまだだ。確かに勇者として選ばれたからには魔王を倒す義務がある。その為に今まで毎日レベル上げに専念してきたが、それだけではどうやら足りないらしい」


「足りねぇってどういうことだ? 充分強くなったじゃねぇかよ」


ロッドは単純な疑問を口にする。レッドとシエラも同意見のようだ。

リュートも最初は三人と同じ意見だったようで、頭を掻きながらゆっくりと説明した。


「昨日、勇者協会から聞かされたんだがな。どうやらレベル上げってのは勇者にしかないらしいんだ」


「勇者にしかない……? なら、どうして他のパーティーは私たちよりも強いの?」


「純粋な疑問だよなそれは。俺も協会にそれを聞いたんだが、協会の中でも偉い人しか知らないみたいだから教えてくれなかった。だが、代わりに他のパーティーはどうやって強くなってるのかは教えてくれたんだ」


三人は早く聞きたそうに目を輝かせる。


「他の奴らは、スキルというものを得て強くなっているらしいんだ。スキルにレベルという概念はないが、何度も鍛錬していと、ランクが上がっていくらしい。これからはスキルを身につけながらレベルを上げていくぞ」


「おう!」「うん!」「う、うん」


三人それぞれ一斉に返事をして、話は後半へと移って言った。


「それでスキルのことなんだが、身につけるのがかなり大変らしいんだ。ほら、今までの俺たちの戦い方はどちらかと言うと、ひたすら武器を振り回してただけでレベルのおかげで何とかなってきただろ。だから、武器の扱い方を位置から覚える必要があるんだ」


「なら、練習するしかないな。俺はやるぞ!」

「うん、僕だってするよ」

「私も勿論するんだけど、支援役にスキルは必要かな? 魔法は二個しか使えないけど、レベルが上がると杖が勝手に魔法の力を発揮してくれるから」


「そうだな。シエラの場合は杖さえあれば完璧だから、わざわざスキルを覚える必要はないかもしれないな。でも、もし支援役に適したスキルを見つけたら教えるよ」


流石はリュートだ。パーティー全員の意見をまとめるのが上手い。


「それじゃあ、レベル上げとスキルの取得をメインにやっていくぞ!」


•*¨*•.¸¸☆*・゚


それから一年が経った今、リュートたち四人のパーティーはどんどん名を挙げていった。


そして、とうとう最後のクエスト。魔王討伐を受ける前日だった。リュートからパーティーを追放されたのは。


「レッド。すまないが、パーティーから抜けてくれないか?」

「え? どういうこと?」


「あ、いや! 別にお前を嫌いになったわけじゃないぞ!」

「う、うん」


「ただ、な? わかるだろ。お前はかなり暗いんだよ。何言ってるか時々わかんねぇし、変な時に笑い出すしで、勇者パーティーには似合わないんだ。本当にすまないと思ってるよ。だが、これでは勇者の肩書きに恥かくことになる。ロッドとシエラには俺の方から理由をつけて話しておく。レッド、お前だって嫌だろ? 勇者のくせに陰キャかよって馬鹿にされるのは。勇者を名乗らずとも、レッドはもう十分強い。だから、ソロから始めても食っていけると信じてるぜ。レッドがいないのは心細いが、心配するな! シエラとロッドは俺が責任を持って守り抜く。魔王を倒したら、また四人で飲もうぜ! またな!」




……は?

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