婚約破棄の特等席はこちらですか?

A

第1話 序章、火の章

私、コーネリア・ディ・ギリアリアは婚約破棄がされたい。




 いや、それは語弊があるか。




 正確に言うと、私は推しメンであるクラウス王子が、私に婚約拒否を突き付けた後、同じく推しメンであるアリディア嬢に愛の言葉を捧げる場面を特等席で見たいのだ。








 私は三歳のころ、階段から転げ落ち、頭を打った際に前世の記憶を思い出した。




 それと同時に、この世界は私が泣きに泣き、ディスクが擦り切れそうなほどに遊んだゲーム『五色のペンタグラム』の中の世界だと気づいた。




 なぜなら、私はゲームにヒール役として登場する悪役令嬢、コーネリアと全く同じ名前なのに加え、彼女と同じく、その目立つ真っ赤な髪、真っ赤な瞳を持っていたのだから。






 それが分かった後、私が考えたことは何か。




 それは、どうしてもそのシーンを目の前で見たい、ということだった。




 まあ、コーネリアは婚約拒否をされても、四大公爵家の誰かと結婚させられるだけのソフトな展開だと知っていたからというのもあるが。










 ゲームの設定は魔力のあるものが必ず入学することになる王立魔法学園、そこで繰り広げられる学園ラブロマンスだ。




 ありがちな設定であろう。そして、攻略キャラは四人。




 空の魔力を持つ諦観系キャラ、この国唯一の王子、クラウス。私の推しメン。




 火の魔力を持つ俺様系キャラ、ゴーレスタ公爵家の嫡男フレイ。




 風の魔力を持つ飄々系キャラ、ゲルドレイ公爵家の嫡男ウィリアム。




 土の魔力を持つ温厚系キャラ、ゴーレスタ公爵家のアレン。








 え?水がいない?そりゃ私だもの。攻略キャラにはいない。




 空は王家のみ、火、風、土、水は四大公爵家の者しか持たない。他は基本的に無属性だ。






 話が逸れた、とりあえずこれら四人のキャラのうち誰かを入学から一年間で攻略するというのがこのゲームの基本となるのだ。








 まず、主人公のアリディア嬢(私はアリアちゃんと心の中で呼んでいる)は貧乏男爵家の出自。それは、両親も領民と一緒に農作業をするほどであり、親に楽をさせたいと思いで熱心に勉強してきたという経歴を持つ。






 そして、親に甘えられなかった幼少期を持つために同じ気持ちを抱える孤児院の子供達を想い、手伝いに行くようにもなる。






 つまり、めちゃいい子。






 ちなみに寂しさを家にあった本で埋めてきたこともあるのか無類の本好きでもある。婚約拒否後のエピソードで出てくるが、彼女の家の本は数冊しかないので、その全てが読み過ぎてボロボロになっているというほどであった。




 




 次に、推しメンのクラウス王子は王太子な上に完璧超人である。何もできないことは無いくらいの。




 彼は幼少期の多感な頃に楽しさを得られないまま過ごしてきたことで、どんな物にも心惹かれなくなってしまった。




 加えて、多くの人に自分の周りで甘い言葉を囁き、偽りの笑顔で接してくることに嫌気がさしており、軽い人嫌いでもある。




 ただ、その明晰な頭脳は悪感情を表に出すデメリットよりも出さないメリットの方を選択したようでいつも穏やかな笑顔を仮面のように貼り付け周りに接している。その心の内を隠しながら。




 その類まれな能力、当たりの良さそうな雰囲気から既に臣下、国民からの人気は現王を勝っているともゲームでは表現されていた。










 この二人が色々ありながらも結ばれていく。そんな二人の門出のシーンが私は大好きで、寝る時間も削るほどにゲームを繰り返しプレイしていた。


 故に、生で見れるならどうしても見たい。できることなら瞬きせずに見続けたい。












 目標のため、とりあえず、作戦を立て始めた。




 まず、登場人物は皆同じ年齢だ。そして、王子が十四歳の誕生日を迎える日、我が家から王家に婚約の打診がされ、十五歳で学園に入学、十六歳の誕生日に正式に婚約を結ぶことになっている。結婚式自体は卒業後、十八歳での予定なのだが。




 この不思議なタイムスケジュールはその設定によるものだ。


 当然、妃の立場を四つの公爵家全てが狙っている。だが、王家が通常婚姻の相手とする四大公爵家の他の家は男性ばかり、女性は私しかいない。






 そして、この世界では十三と言うのは良くない数字として考えられているので、その年を越えた時に、婚約を打診、その間に諸々の手続きや相手の見極めが終わり、この世界で成人となる十六歳の誕生日の日に婚約が正式に結ばれる形となっている。






 学院にいる間は結婚式をあげることはしないが、正式な婚約後に相手が変わることは無い。


 そのために打診から婚約の期間を開けているという建前もある。まあ、打診=婚約というのが貴族の中では基本なのだが。






 よって、クラウスが私の婚約拒否をするのも正式に確定してしまう十六歳よりも前、初学年を終えた十五歳の時のパーティで行われている。






 最低条件として、このパーティに私が仮婚約者として立っていることが必要だが、特に障害は無い。


 他に資格を持つものがいないのだから切符は既に持っているようなものだ。






 それ以外にしなくてはならないのは他三人の攻略キャラとアリアちゃんを近づけないことだ。ルートに入ってしまう最初のイベントは断固阻止。


 クラウス王子以外のスチルはノーセンキューだ。




 


 ルート開始のイベントはそれぞれ決められている。




 まず、フレイは最初の学力テストの結果発表の時。


 彼の性格は俺様気質でプライドが高い。彼はクラウス王子に対抗心を燃やしている。だが、何故か自分より上、クラウスの次にアリアちゃんがいることに対してつっかかっていくのだ。






 次に、ウィリアムはイジメへの参加を拒否した時。


 彼の性格は飄々としていて自分の意志を何よりも尊重する。


 珍しく魔力を持って産まれた平民の入学生をイジメようという貴族グループからの誘いを、アリアちゃんがはっきり断ったことで、周りの考えに流されない彼女に興味を持つようになるのだ。






 最後にアレンは孤児院の手伝いの時。


 彼の性格は穏やかで誠実。急な怪我により孤児院の大人が倒れたことで、アリアちゃんが募集していた手伝いに名乗りを上げる。そして、そこで彼女の優しさに触れ好意を覚えるようになるのだ。








 とりあえず、フレイ対策に勉強は必要。後は入学後にしか対策できないから放置かな。


 孤児院に資金を入れてもいいけどそれをするとクラウスのイベントで成り立たなくなるものがあるし。




 まあ、特に変なことをしなければ仮婚約まで障害は無いし、勉強しつつ、入学するまでは適当に過ごそう。



















 彼の十四歳の誕生日の後、婚約の打診が行われた。




 一応今日はその挨拶に行くことになっている。




 だが、これは正直さらっと流すだけでいいかなとも思う。入学後が本番だから前座に過ぎないし。




 それに、私はクラウス王子が好きと言うよりクラウス王子とアリアちゃんのカップリングが好きなのだ。




 前世の時は典型的な理系女子として生活してきたこともあって出会いもない上、それほど恋愛に興味があるわけでも無かった。




 だが、友達がゴリ押ししてきた乙女ゲーを暇すぎてやり始めた瞬間。私は生まれ変わったのだ。




 クラウス、アリディアのカップリング厨。通称クラリア派として。






 貴族的なマナーを強いられる王宮にはできる限りいたくないし、今日は挨拶だけして帰るつもり満々だ。


 あっ、ちゃんと人がいるところでは令嬢らしい振る舞いはしていますよ。やりたくないだけでやれる子なんです。








 城に到着し、案内役に付いていく。ノックの音の後に王子が入室を許可する。




 部屋に入るとクラウス王子が椅子に座っている。流石攻略キャラ、座っているだけで既にスチルとして採用できそうなほどだ。




 当然、王子には挨拶したことがある。今日は、婚約を打診したことで改めて挨拶をしに来ただけなのだ。






「ご機嫌麗しゅう殿下。この度は殿下に婚約を申し込ませて頂きました。今後はより深い関係を築いていけると幸いです」






 とりあえず、それっぽいことを言っておこう。






「いや、こちらこそ君に請われ、それこそ誇らしい気分だ。噂は聞いているよ、令嬢の中の令嬢だと皆が話している」






 彼は笑顔で言う。いやーこれは設定知らなきゃ偽りの笑顔だと全くわかりませんわ。




 まあ、彼は人と接するのがあんまり好きじゃないだろうし、私も別に長くいるつもりもない。




 義務は果たした。ウィンウィンの関係だし帰宅に面舵一杯をとらせてもらおう。






「いえ、そのような噂、身の丈に合わずお恥ずかしい限りですわ。


 ところで、本日殿下は政務をされておられたのですか。」




 後ろにある書類をチラッと見ながら聞く。




「ああ、そうだ。父の手伝いをそろそろしないといけないからね」




 それほど書類は残っていない。完璧超人だし処理速度が尋常じゃないのだろう。


 だが、残っているというのが今回は重要なのだ。




「そうでしたか。それでは、お邪魔しても悪いのでこれで失礼させて頂きますわ。御機嫌よう」






 体に刷り込んできたカーテシーをすると速やかに退室する。






「……は?」






 王子の声が聞こえたような気がするが既に扉は閉まっている。




 まあいいや、帰ろう。あんまり仲良くしてもどうせ婚約しないしね。

















 ついに……ついにこの日まで来た。今日は学園入学の日だ。




 打倒フレイのための頭の出来もばっちりだ。というか数学は前の世界より簡単だし、国語も幼少期から言葉に順応してきたから問題は無い。それに、設定集を読み込んだ私には歴史学もすんなり入ってきた。




 もしかしたら、コーネリアのハイスペックさなのかもしれないが、よくわからない。




 彼女の最初の出番は中盤からだ。そして、それもほとんどが直接出てくるわけではないのでいまいちスペックはわからない。






 性格は四大公爵家の令嬢としての自負もあり、プライドが高い。


 それに、その中でもたった一人の王子の年齢に釣り合う女性として育てられたため、まるで将来の妃のように丁重に、大事に扱われることも多かった。






 それ故、彼女は正式な婚約はしていないとはいえ、それをほぼ決まったことと考えていた。




 だが、クラウスは優しくしてはくれるものの常に一歩距離を取り続けており、今までの周りの男性達のように自分に傅くわけではない。






 なのに、だんだんとクラウス王子はアリアちゃんを気にかけていき、その表情も豊かになっていく。




 その様子にプライドを傷つけられたのだろう。




 直接かかわることは無いが、アリアちゃんを目障りに思っていく。




 そして、それが周りの者にも伝わり、イジメもエスカレートしていくのだ。






 それがいけなかったのだろう。




 クラウス王子はコーネリアを厭う。隣に立つものとして相応しくないと。






 そして、その逆に努力を続け、それを人に伝えるでもなく、その裏では孤児院の子供達や両親を常に気にかけているアリアちゃんに惹かれていくのだ。






 学院の中に向かう馬車の中でいろいろと考え込んでしまったらしい。気づいたら馬車は止まっていてノックの音が響いていた。






 今日は学園長の挨拶くらいでやることが無い。




 だが、私はこれから忙しくなるだろう。どれくらいの時期にイベントが発生するかは知っていても何日目の何時という記述はゲームでは無かった。




 だから、これから私は王子以外の不埒な輩がアリアちゃんに近づかないよう、陰ながら見守る役目を果たさなければならない。




 女同士ならばれても大丈夫!警備のご厄介になっても何とか言い訳できるし。それに最悪は実家の権力でもみ消そう。




 あのシーンを見るためにならこれまでほとんど使ってこなかった金と権力を使うことも吝かではない。



















 それから私は取り巻きになろうと近づいてくる者達を適当にあしらいつつ、密かにアリアちゃんのSPとして活動を始めた。




 まず最初は王子の出会いイベント。場所は図書館と分かっているので、最近の私は、毎日アリアちゃんが来る前にはそこに行き隠れ見るということを続けている。




 しかも、イベント発生時の音を集められるよう高価な風の魔道具をそこかしこに配置した上、中から一方的に覗き見れる様な持ち運び型の個室を運び込むという行為も躊躇なくやり終わっていた。




 カップリング厨を舐めて貰っては困る。それこそ人生をかけているのだから。








 この王立学園は改築が重ねられてきたとはいえ、建国時から続く歴史ある施設である。


 そして、古いものが多いものの貴重な本が山のように保管されている。




 本好きのアリアちゃんはここを天国のように感じているだろう。無表情ではあるものの、その足取りはいつもより軽やかで授業が終わるとだいたいすぐにここに来る。




 王家、公爵、侯爵といった上位貴族の子供とはクラスが違うので普段の様子を常に見れているわけでは無いが、彼女は学園の中で事務的な話をする人はいても親しくしている人はいないようだった。






 まずここに来ると本を両手いっぱいに抱え、もはや定位置となった席に腰かける。そこに根を張り、日が落ち文字が読めなくなってくると寮に帰るという生活を続けていた。




 


 今日も彼女が来た。既にかなりの本を読み切っており、その内容もだんだんと高度なものになってきているようだ。




 今読んでいる本のタイトルを遠視の魔道具で見てみると、私が以前読んだことのある本であった。






 題名は『数字の魅力:上巻』




 あの本は正直、大学までぶっ通しで理系女子を勤め上げた私でも難解に感じる部分が少しあった。




 そして、下巻で終わるかと思いきや謎の終巻と言う巻まで密かに発行されている。


 普通は下巻の先を探す人なんていないから、完全にマニア本だったのだろう。






 本は巻が進むにつれてその内容は濃くなっていく。


 特に終巻はそれまでの上下巻とは違い、ついてこれる人だけでいいというスタンスで教える気が無い。もう頭が良いという範疇を越え変態と言っていいレベルだった。


 まあ、作者の突飛な思考で逆に楽しめたけども。






 読む速度はかなりゆっくりではあるが、あれを理解しながら読めるアリアちゃんは流石ね!と我が子を見守るように誇らしい気持ちになってきた。




 




 そうしていると、どうやら今日がイベントの日のようだ。纏わりつく取り巻きから逃げ出して来たらしいクラウス王子が図書館に入ってくる。




 学園が始まってすぐ、その人間関係の構築に勤しむ人が多いということもあって今この部屋には私を除くと王子とアリアちゃんしかいない。




 誰もいないと思っていたここに人がいることが少し気になったようで王子がアリアちゃんに近づいていく。その瞬間、私は風の魔道具を最大出力で作動させ耳を澄ませた。

















「何を読んでいるんだい?」






 王子がアリアちゃんに話しかける。その甘い笑顔は普通の女子なら昇天ものだろう。






「…………どなたですか?」






 しかし、アリアちゃんには効果が無いようだ。その上この国の王子の名前すら知らない。


 まあ、貴族の端の端、ギリギリ乗っかっているくらいのアリアちゃんはもちろん社交界になど出たことが無い。領地がご近所の貴族くらいしか彼女は知らないのだ。






「……そうだね。突然すまない。私はクラウス・フォン・ロゼッタだ」






 普通ならかなり無礼な態度だが、彼女の服装や髪等を王子はチラッと見ると、平民よりは上等程度の格好のアリアちゃんから実情をだいたい理解したのだろう。


 特にそれを指摘することは無かった。






「ロゼッタ?……王家の方ですか!?申し訳ありません」






 流石に、この国の名前が名前についていれば彼女も気づく




 椅子から降りて謝罪しようとするのをクラウス王子は肩を抑えて止めた。




 ちなみに、その微かなボディタッチに私のワクワク度が益々上がっていっている。






「いや、謝罪は必要ない。名乗りもせずに尋ねた私が無礼だったんだ。


 それで、君は何を読んでいるんだい?」






 アリアちゃんは本に視線を落とすとおずおずとその本を差し出した。






「これです」






 王子がページをさらっとめくる。あれで読んじゃうとか王子はほんと半端ないな。






「……ふむ。こんな高度な本をいつも読んでいるのかい?」




「いつもではないです。でも、本が好きなので」






 彼女の側にある机に積まれた中に、王子が知ったものがあるのかもしれない。そちらを見て頷くと彼はすぐに手に持った本をアリアちゃんに返した。






「ありがとう。君はとても頭がいいようだ。私もその本に興味を覚えるほどの高度な内容だった。


 では、邪魔をしても悪いし私は立ち去るよ。ではな」




「はい」






 颯爽と歩きだす王子、この最初のイベントではまだ彼はアリアちゃんを少し気に留めるだけなのだ。


 毎度のテストの結果や孤児院で働く姿、いろんな彼女を今後見ていくことでその想いは徐々に育っていく。




 これよこれ!これを待ってたのよ。ああ、ついに始まる。




 私は余韻に浸るようにソファに深く腰掛け目を瞑った。

















 その翌日以降、私の心は常に漲っていた。




 そして、フレイルートの分岐条件になるテストの日、私は戦場に立つかの如き気合であっという間に問題を解くと、三回ほど見返し完璧なのを確認した。




 ゲームでのテストの結果は王子が満点、アリアちゃんが九十九点、フレイが九十八点と続く。




 私が九十九点をとってもフレイのプライドを刺激することはできるだろうが、同じ四大公爵家なら仕方が無いと考えられてしまう可能性もある。




 つまり、それではダメだ。アリアちゃんのインパクトを越えるためには王子に対抗心を燃やすフレイの内心を鑑みて、満点を取る必要があるだろう。その上で、喧嘩を売るかの如くチラッと彼の方を流し見れば完璧だと思っている。




 テストの終了の合図がされた。同じ部屋にいる王子はいつもの穏やかな顔、フレイはその彼の背中を見ながら自信あり気な顔をしているようだった。






 






 


 テストの結果発表の日、順位が張り出されまず私達たち上位の貴族組がそれを見に行けるようになる。そして、中位の貴族は翌日、アリアちゃんたち下位の貴族は二日後だ。




 フレイがいることを確認しつつ、彼にスピードを合わせてボードの前に来る。






【評価結果】


 一位:クラウス・フォン・ロゼッタ、コーネリア・ディ・ギリアリア


 三位:アリディア・クローゲン


 四位:フレイ・ディ・グレンドス










 よし!思った通りの順位ね。フレイの方をチラッと見る。




 彼は私の目線に気づいたようで、一瞬怪訝な顔をすると、すぐにその顔を憤怒に染めて近づいてくる。






「くそ!コーネリア・ディ・ギリアリア。調子に乗るなよ?こんなものはまぐれに過ぎない。


 勉強ができるだけでは戦には勝てん。お前が図書館の方に向かうことがあるのは知っている。


 だが、あそこにある昔の本など読んでも、そんなものはどうせかび臭い知識だ。そんなくだらないことをしている暇があればもっと王国のためになることをするのだな」






 彼は勉強で負けた相手に対し、その知識をつけた方法を否定するという謎の論理を展開している。


 まあ、彼の家は代々武力で名を馳せてきたし、女性を下に見る傾向が強い。


 私に勉強で負けたことがかなり腹に来てるのだろう。






「くだらない?いいえ、昔の本も大事よ。いいものはどれだけ時間が経ってもいいものなのだから。


 私が次のテストに向けて図書館をご案内して差し上げましょうか?」




 


 どれだけ時間が経ってもいいものはいい。それは本だけじゃない。




 前世の私は合理的に、古くなったら買い替えればいいというタイプだったので特に物の思い出を大事にするというタイプでは無かった。




 だが、『五色のペンタグラム』は違った。それを勧めてきた友達すらも記憶を手繰り寄せなければ思い出せないくらいの時間が経っても私はそれをやり続けた。




 いいものはいい。それはどれだけ時間が経っても、世界が変わったとしても。






「いらん!次はまぐれは無い。せいぜい今だけの幸運を噛みしめているがいい」






 荒い足取りで彼が去っていく。あの様子だと三位のアリアちゃんを探してつっかかりにいくというイベントは発生しないだろう。




 ふっ。計画通り。夜神さん家の息子さんのような顔で内心笑いながら立ち去ろうとすると突然声がかかった。








「君はよく図書館に行くのかい?」






 婚約者(仮)の王子が、入学後初めてあちらから声をかけてきた。


 予想外の出来事に少し動揺する。 






「え…ええ。ごく稀にですが」






 まあ、本当は毎日アリアちゃんを見に行ってるけど。






「そうか。ちなみにだが、『数字の魅力』という本を知っているか?」






 おっと、アリアちゃんの記憶がしっかり残っている。


 気になっちゃってるねー。いいぞ王子、もっとやれ。






「まあ、はい」






「読んだことはあるか?どれを読んだことがある?」






「いちおう、一通りは読みましたが。それが何か?」






 今日の王子はグイグイ来るな。なんだろう。






「いや、引き止めて悪かった。ありがとう」






 彼が去っていく。取り残される私。え?、なに?、なにがしたかったの?




 まあいいや。一仕事終えた私は達成感とともにいつも通り図書館へと向かった。















 テストの結果が発表された二日後、下位の貴族達も結果を見たのでそろそろ次のイベントが始まるだろう。攻略サイトでのイベントの呼び名は『悪意①』、悪意と言っても言葉だけのソフトなやつだ。




 テストで上位貴族と並んだからといって調子に乗るなといったものなので直接害はない。そして、今後のクラウス王子ルートが始まるには必須なイベントなので心を鬼にして見守る必要がある。






 アリアちゃんの後をこっそりつけていると、彼女は図書館に行く途中で他の女生徒に呼び止められる。そして、あまり人の来ない校舎の陰に連れて行かれた。






 近づきすぎるとばれてしまうので離れた草の陰から見守る。




 中位の貴族らしい女の子がアリアちゃんを取り囲んでいる。


 ハラハラしつつ見守っていると、すぐに取り囲んでいた子達は去っていった。






 くっ。何もないとは言っても見ているだけなのは辛い。ごめんね、アリアちゃん。






 


 アリアちゃんは少しの間そこに留まると図書館とは違う方向に足を向けた。


 シナリオ通り、彼女は息抜きに外へ出ていくようだ。






 私も少し離れて後を追いかけていく。この日のために既に平民の服に加え、髪や瞳の色を一時的に変える魔道具を手に入れている。そして、周囲の色を真似て色を変えるカモフラージュ用のマントも。


 これなら街でも目立つことなく追いかけられるだろう。






 この学園から出るには正面の門を使う必要がある。そして、外出する前には警備の兵に、目的や帰宅時間等を伝えておかなければならない。






 私は全速力で走り、外に出る。もちろん既に上には話をつけてある。大貴族、万歳!




 そして、外に止めていた馬車に乗り込むとすぐに目立たないように姿を変えた。そして、馬車を出ると警備の兵に合図を送る。




 すると、アリアちゃんの外出が許可され門を出てきた。後をつける私。馬車を用意した使用人や警備の兵は奇妙に思っているようだが、知ったことじゃない。




 誰にも言うなよと脅しはかけておいたし。








 彼女は特に何を買うでもなく街を歩いている。




 彼女はテストの結果から成績優秀者として認められているので学園に通う諸費用はかかっていないはずだが、両親の送ってくれるなけなしのお金にはあまり手を付ける気が無いのだろう。




 ただ街を散歩しているだけのようでその内、狭い路地に入っていった。






 この路地が孤児院関連の最初のイベントが発生する場所だろう。






 路地に入り、誰も周りにいなくなったところでマントを頭まで被り、壁に引っ付きながら歩いていく。






 すると、アリアちゃんの前に三人の子供達が錆びた包丁を手に立ちはだかった。






「か、金目のものを置いていけ!」






 声が少し震えている。それに、包丁もぶれているし。






「……何故それを欲しがるの?」






 一目で何か理由がありそうだからだろう。アリアちゃんは優しい声で問いかける。






「う、うるさい!!早く置いていけ」






「いいわよ。でも理由を話すって約束して」






 子供達が顔を見合わせる。どうする?といったような顔持ちだ。


 だが、結論が出たのだろう。 






「いいから黙ってこっちに寄こせ!」






 彼女は財布を前に投げ置く、そして、それを子供達が取ろうとした時、魔力を使って彼らの武器を引き寄せた。






「お前、貴族か!?」




  


 それほど、大きな力は使えないが学院にいる以上彼女も魔力を持っている。


 そして、多くの平民は貴族の魔法をとても怖いものだと思っているため、子供達が怯える。






「大丈夫。何もしないわ。だから、理由を教えて?」




 


 観念したようで彼らは理由を話し出す。




 彼らは近くの孤児院で生活している。だが、そこを取り仕切っている院長先生が風邪で寝込んでしまったらしい。少し高齢ということもあって心配するが、医者に通うお金は孤児院には無い。




 だから、せめて栄養になるものを買おうと今回の騒動を起こした。




 まとめるとこんな内容だ。






 そして、それを聞いたアリアちゃんは子供達に案内をさせて孤児院に向かった。




 流石に人の多いところではマントの偽装もバレるだろうし、イベントの発生は分かったのでこれで帰ろうと学院に戻った。この後の展開は知っているし。






 孤児院に着くと、彼女は院長の様子を見て、軽症だと判断すると自信の体力を分け与える魔法を使って院長を無事回復させる。




 そして、院長は子供達にげんこつを食らわせ、憲兵へ突き出すことだけはどうか勘弁してほしいとアリアちゃんに土下座して頼むのだ。




 もちろん、彼女はそれを快諾し、さらに今後の手伝いまで申し出る。




 いや、ほんと天使。直接見たわけではないが、その光景ははっきりと脳裏に映し出され、感動で涙がホロリとこぼれる。






 









 あれからアリアちゃんは図書館では本を借りれることも知ったので孤児院と図書館を定期的に行き来している。




 進展と言えば、王子が稀に図書館に行くようになり、彼女を見かけると二、三言は為すようになったことだろう。次のイベントはまだ先だが、これを見ているだけで少しキュンキュンする。いやー、ごちそうさまです。




 ちなみに、余談ではあるが私は孤児院すぐそばの建物を買い上げたので、彼女が孤児院にいる時はそこから見守るようになった。少しずつ子供達と仲良くなっているようで大変よろしい。




 他に特筆すべきことは無いが、そろそろ二か月に一度のテストも近づいてきている。




 彼のルートに入る可能性を微塵も残したくないので念のため今回も本気で行かせてもらおうと再び勉強に力を入れた。














 そして、第二回目のテストの日。




 フレイがこちらへ近づいてきた。




「コーネリア・ディ・ギリアリア。これで本当の立ち位置がわかるだろう。あと少しの間だけの栄光に別れを惜しんでいるといい。はっはっはっは」




 彼はこちらに一方的にそう言うと、こちらの返事も聞かずに去っていった。




 ごめんなさい、貴方に興味は無いけど順位だけは譲ってあげれないの。アリアちゃんは私が守る!




 それぞれの想いは噛み合わないままテストは進んでいった。 














 今日は結果の発表日、目の前には石像のように固まっているフレイ。




 そして、私の方に首を少しずつ向ける。以前の焼き直しのように彼の顔は憤怒に染まっていく。




 恐らく、そこにはドヤ顔の私がいたからだろう。






【評価結果】


 一位:クラウス・フォン・ロゼッタ、コーネリア・ディ・ギリアリア、アリディア・クローゲン


 四位:フレイ・ディ・グレンドス








 確かに貴方は強いわ。でも、私の方がそれより強かっただけ。ごめんあそばせ。と内心思っていた。


 前の世界も含めてあまりテストで負けたことは無いのだ。










「クソっ!何故だ。何故勝てない!!次こそ決める。首を洗って待っていろ!!」




 負けるお決まりパターンのようなセリフを吐くと、彼は去っていく。


 その嵐のような激怒が周りに伝わっているようで彼の歩く先はモーセの十戒のように道が開けられていた。




 


 それを見届けていると前回と同じように王子が声をかけてきたようだ。






「また並ばれてしまったかな。君も周りに天才と呼ばれているのかい?」






 君も、と普通の人が言えばちょっと勘違い男風になってしまうが、クラウス王子はそんな感じは全くしない。






「頭は悪くないと自分でも思いますよ。天才というほどではないと思いますが。


 ただ、努力は重ねてきましたし、その自負もあります。だから、結果もそれに伴っただけですよ。


 殿下も同じでしょう?ほら、この隣に載っている子も今回は順位を上げて並んでいますし」






 アリアちゃんはスポンジのようにみるみる知識を習得している。結果しか見ない人は天才というだろう。もちろん、彼女は頭が良い。でも、何もないところからはさすがに何も生み出せない。


 個人差はあるが、それでも努力をしてきたことだけは確かなのだから。




 


「…………そうだな。ありがとう。天才と軽々しく片付けるべきでは無かったかもしれないな」






 何か思うところがあったのだろうか。少し歯切れ悪く彼は言う。






「そうですね。結果だけじゃなく努力を褒めることは女性には大事だと思いますよ。


 次に誰かに言う時があればそうした方がいいかと思います」






 後で出てくるが、アリアちゃんは親の手がかからないように頑張ってきた。その過程を褒められた経験が少ないのだ。だからこそ、それを見て、認めてくれる王子に彼女も惹かれていく。




 王子は何も言わなくてもシナリオの過程でそれができるようになるが、まあ、これくらいの助言はいいだろう。 















 テストの結果が発表され、二日後、このタイミングで再び悪意イベント②が始まるのでアリアちゃんの後をずっとつける。






 このイベントは自分より格下の貴族が自分達より優れた成績を出していることに暗い感情を抱いている中位貴族達の暴走が理由ではあるが、それは隠され、コーネリアのために動いたという理由にされたうえで本人には無断で行われる。






 まあ、後で知ったコーネリア自身も王子と近づこうとするアリディアに少し警告をしたいという気持ちもあったのか、黙認することにしたので同罪っちゃ同罪だが。








 今回は、前回のように言葉だけでは終わらず、ビンタを食らったうえで泥水をかけられることになる。






 そして、寮に帰る途中でクラウス王子が偶然それを見つけるのだ。


 彼は彼女を気遣い、その努力を踏みにじる者達に怒りを覚える。




 人という生き物の醜さを改めて感じ、彼女に問う。報復したいか?と。望むなら、それを手伝ってもいいと。


 王子の人間嫌いは加速していく。恐らくアリアちゃんがそれを望んでいれば彼は闇に飲まれていたかもしれない。






 だが、彼女はそれを望まない。ただ、気にしていないとそれだけ言う。






 彼女は他人を中心に置くことが多い。だからこそ、そんな危うさを王子は感じ取り、さらに気にかけていくようになるのだ。








 この悪意イベントを見るのはかなり心が痛い。だが、どうしても必要なこと。貴方の幸せには必要なのよとアリアちゃんに心の中で声をかける。このイベントが無いことで彼女が幸せになれなくなる可能性があるなら、血涙を流しながら耐えよう。












 そして、図書館に向かおうとする彼女が以前と同じように校舎の陰に連れて行かれる。




 前のよりも人数が多い。それだけ、不満が高まっているのだろう。アリアちゃんは他の人とほとんど話すことが無いので、お高く留まっていると誤解されやすいのかもしれない。


 今回は見守りが基本スタンスだが、水の魔法を使って泥水をある程度操作するつもりである。




 このため、音を聞き取るための風の魔道具を使って状況把握に努める。










「貴方、ちょっとテストの結果が良いからって調子に乗っているんじゃないかしら?貧乏男爵家のくせに生意気なのよ」




「……………………」






 うわードロドロした女の嫉妬怖い。正直、お近づきになれないタイプだ。アリアちゃんは家族のことを愛しているので、貧乏男爵家という部分に反応したが、言い返したら長引くと思ったのだろう。何も口にしない。






「何か言ったらどうなの!?それに、最近図書館で貴方が殿下に話しかけている姿が目撃されたらしいわ。このことにコーネリア様は大層ご立腹よ。人の婚約者に無断で話しかけるなんて恥を知りなさいよ」






「…………別に私が話しかけているわけじゃない」






 違う女生徒がヒステリックに叫ぶ。いや、殿下から話しかけているし、私は逆に応援旗を振るくらいそれを後押ししているのだが。






「何よ!?殿下があんたに話しかけているとでもいうの!?都合よく記憶を捻じ曲げてるんじゃない?


 でも、どちらにせよコーネリア様と婚約者になることは確実よ。まだ正式な決定前とはいえね。


 だから、あの方は大層悲しまれ、同時に貴方に怒りを覚えているわ。


 それに何も思わないのかしら?あーこれだから田舎貴族は無節操ではしたない」






「…………本当にそのコーネリア様がそう思ってるの?」






 おや、何やら記憶とセリフが違う。


 彼女は一言発するとそれ以後は無駄だと悟って何もしゃべらなくなる。そして、ビンタと泥水を食らい終了するはずなんだが。






「……そうよ。私達が嘘を言ってるとでもいうつもり?」






「…………彼女には一度もテストで勝ててない。私が毎日のように勉強してるのに関わらず。


 そんな才能があるはずの人がそんな風に思うのがあまり信じられない」






 あーそれかー。確かに、本編ではコーネリアは常に上位十人には入っているものの一位争いには最後 まで食い込んでこない。つまり、アリアちゃんには一度も勝たずに本編が進む。




 嬉しいセリフではあるのだが、そのせいで若干シナリオがずれてきている。






「っ!!うるさい!!嘘なわけじゃないでしょ!?自分が頭が良いからってバカにして!!」






 いけない。彼女たちの魔力が放出されていく。


 それほど強力な魔法ではないだろうが、当たり所が悪ければ重症になるかもしれない。




 私は咄嗟に魔法を放つ。水の分厚い壁をアリアちゃんの前に作ると放たれた全ての魔法を打ち消した。






「……………………え?」






 何が起きたか理解できなかったような顔で全員が強大な水の壁を見ている。




 そして、近づいてくる私を見て血の気の引いた青い顔をする。






「貴方達は何をしているのかしら?魔法まで使って」






 さも、今来ましたムーブで対応する。少し速足で来たのは内緒だ。






「あの……これは……その……申し訳ありませんでした」






 その場でアリアちゃんを除いた全員が土下座する。


 理由を聞くかとても迷う。だが、後で過激な報復をしかねないのでくぎを刺す必要があるだろう。






「理由を聞かせて貰えるかしら?」






 彼女たちは顔を見合わせるだけで何も言葉を発しない。


 めんどくさくなってきた私はお決まりのセリフで対応することにする。 






「今すぐ話すなら、私に関係することでも不問にしてあげるわ」




 


 そして、観念したように彼女たちが話し始める。まあ、聞いていたので知っている。


 聞きながら、対応を考えていく。




 重要なのはアリアちゃんを庇う、もしくは味方をすることが婚約拒否の発生にどこまで影響を与えるかということだ。あれはアリアちゃんにとって王子と結ばれるために必須なのだから。




 少し考えて思う。あんまり影響ないなと。






 なぜなら、コーネリアは作中でも自分から動いてイジメに加担するというのはほぼ無い。


 目障りだとは思いつつも、それほど重要視はしていなかったのだろう。




 あくまで、イジメの主要因は取り巻きやそれを建前とした下の貴族の暴走だ。




  


 このため、王子がコーネリアに婚約拒否を突き付けるのは彼女を嫌いと言うよりもアリアちゃんを好きになり過ぎてしまったということが理由となる。




 アリアちゃんは相変わらず、努力家で、天使で、可愛い。ならば問題は無いだろう。




 そういう結論に達したので私はアリアちゃんの味方をある程度することに決めた。






 既に説明は終わっていたようで、中位貴族の女の子たちは、黙る私を怯えながら見ている。






「理由はわかった。まあいいわ。ただし、次は無い。いいわね?」






 それを聞くと、彼女たちは目に見えて安堵する。念のため、もう一言だけ付け加えておこう。






「それに、この際だから言っておくけど、この子に思うところは無いわ。殿下と話すことも含めて。


 私には及ばないけど、努力しているのでしょう。それを私はむしろ評価さえしているの。


 貴方達も精進なさい。この子と同じように期待してるわ」






 やばい。褒め足りない。しかし、ここは我慢だ。なんとか堪える。






「はっ…はい!!頑張ります!!!」




  


「よろしい」






 そして、次にアリアちゃんの方を見る。




 


「ごめんなさいね。私に免じて今回だけは見逃してくれるかしら?」




 彼女はこちらを驚いた目で見ている。四大公爵家の人間が謝罪の言葉を口にするのが珍しいのだろう。


 というかその顔はレアだ。スクショしたい。






「……いえ。気にしていません。それに、さっきの言葉、嬉しかったです」






 なにこの天使。撫でたい。というか部屋に持ち帰りたい。


 いや、待て、落ち着け。これは致命的なミスをする前に戦略的撤退が必要かもしれない。






「ありがとう。そろそろ、私は行くわ。じゃあね」






 打診だけとは言え婚約者候補だ。流石にその前では王子も口説けないかもしれない。


 血反吐を吐くくらいの覚悟で彼女との距離をある程度保とうと思った。自信はあまり無いが。

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