『おさしみセット』

やましん(テンパー)

『おさしみセット』


 今日は、ちょっと、無理をいたしまして。


 おさしみセットを、スーパーさまで買いました。


 一年ぶりか、二年ぶりか、です。


 おさしみといいますものは、なぜだか、高級食材なのです。


 海外の方には、信じがたい場合もあるようです。


 ぼくだって、仕事していた時代も、おさしみなんて、忘年会とか、送別会とか、お葬式くらいしか、なかなか、食べられなかったのですが。


 それはともかく。


 やれやれ、まあ、明日死んでも、仕方ないか、とか、役に立たないこと、考えながら、すぐ、寝てしまいました。


 すると、ふと、目が覚めると、おなかの中から、会話が聞こえるのです。


 『あらあ、あんたも、食われたかいな。』


 『はいー。やと、食われましたあ。まあ、バラバラではありますが、はははははは。』


 『いや、まんず、目出度い。これで、ようやく、逃げ回らなくてよくなるべ。』


 『うんだ。海のなかも、海の外も、こうして、見聞きしたし、心残りはないだべな。』


 『まんず、なんだな、溶けてきたなあ、』


 『うだ。胃液とかいうだべ。われらも、ちっちゃいやつ、たくさん、食ったしな。あい見互いとか。あた、なんか、気持ち良〰️く、なってきただあ。生まれた頃の、海の中みたいなあ。あんさん、天国で、いっぱい、やりますかな。ははははは。』


 『うんだ。まあ、…………………』


 『…………………。』



 会話は、それで、途切れたのです。


 なんと、見上げたものだと思いました。


 それに比べ、いじいじと、なんと自分は情けない。


 ぼくは、そのまま、また、寝ました。



 まさか、次の日の朝、侵入してきた、腹ペコの、最近は、温暖化の影響で、すっかり定着したらしい、アナコンダさんか、に、襲われた、なんて、嘘みたいです。


 なにかの、警報だったのかは、いまさら、わかりません。


 ぼくには、最後まで、話し相手がありませんでした。


 

       🐟➰🌊

 


 

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