234:コスプレサミットの打ち合わせ!②
「優希くん、優希くん、着いたよ?」
先輩が僕を呼ぶ声が聞こえる。
どうやら僕は知らない間に眠ってしまっていたみたい。
「ふぁ⋯⋯せんぱい、おはようございます⋯⋯」
「ふふっ、ぐっすりだったね」
「寝るつもりなかったんですけど、眠気には勝てませんでした⋯⋯」
僕がそう言うと、先輩が僕の頭を撫でてきた。
「ふぇっ!? せせせせせ、先輩!?」
「いつも頑張ってるもんね、優希くんは」
「あの、褒めてくれるのは嬉しいですけど、撫でるのはちょっと⋯⋯」
「あはは、ごめんね。 可愛くてつい⋯⋯」
「むぅ⋯⋯」
「いじけた顔も可愛いとか、反則だよ?
でもとりあえず、行こっか!」
「あっ、はい!」
僕は先輩に連れられて、打ち合わせの為の部屋へと向かっていった。
なんだか上手くあしらわれてる気がするけど⋯⋯まぁいっか⋯⋯
♢
「マネージャー、お疲れ様です」
「あら、遥ちゃんおかえりなさい。
優希ちゃんもよく来てくれたわね」
「橋本さんお久しぶりです!」
部屋に入るとそこにいたのは橋本さんで、幾つかの書類を見ながら悩んでいる様子だった。
「マネージャー、何を見てるんですか?」
「実はね、コスプレ作成に関して優希ちゃんに対してデザインを提供ないし、コラボをしたいって声をかけてくれている所があるのよ」
「えっ!? そ、そんな所があるんですか!?」
僕全く知らなかったんだけど!?
「前配信の時にうちの遥ちゃんと一緒に出場するって告知してたじゃない?
どうやらそれでうちのアニメとだとか、漫画となんて声をかけてくれる所があったのよ」
「流石優希くんだね⋯⋯」
「遥ちゃん、アナタもよ?」
「え? わたしもですか?」
先輩は想像していなかったのか橋本さんに聞き返していた。
「当たり前じゃない! それに今回応募して来たアニメや漫画のジャンル、百合系なのよ?」
「百合、系⋯⋯マネージャー、それってお持ち帰りも許可されますか!?!?」
「遥ちゃん、落ち着きなさい」
「わたしは冷静ですよ!!!???」
「アナタ、とんでもないこと口走ってたわよ?」
「⋯⋯あっ、それはマネージャーさんの勘違いですよ!」
二人で何やら話しているみたいだけど、僕は応募して来たと言う作品達のリストを読むのに集中しちゃって、あんまり聞こえていなかった。
「(⋯⋯良かったわね、優希ちゃん聞いてなかったみたいよ)」
「(いや、だからわたしが欲しいのは服の方で⋯⋯)」
「(⋯⋯あら、ごめんなさいね、アタシが勘違いしてたわ)」
「(そんな、ふわちゃんじゃないんですから⋯⋯ってこんなコソコソ話す必要性無くないですか?)」
「(そ、それもそうね⋯⋯)」
「ど、どう? 優希ちゃん、気になった作品はあったかしら?」
「僕のあまり読まないジャンルだったのでイマイチピンと来ないです⋯⋯」
「じゃあ、わたしが選んでもいい?」
「はい! 先輩にならお任せできます!」
「そう言われると⋯⋯責任重大だね」
そうして先輩もリストを読み始めると、気になる物があったのか、それを僕達に見せてくれた。
「これなんてどうかな?
漫画家志望の女の子が、百合モノの漫画を描くことにして、リアリティが足りないからって幼馴染の女の子とデートとかして百合体験して最終的にお付き合いしていくお話って書いてあるから、学生の優希くんでも似合いそうだと思いますけど」
「ブレザーでも良いし、セーラー服もイケると考えると悪くないわね。
でもそうすると個性が出なくないかしら?」
「あー、それだとこっちの魔法少女モノとかの方が良いですかね?」
「確かにそれはアリかもしれないわね」
僕にはデザインとかについてはとやかく言える知識が無いから、二人の会話に着いていけない。
「⋯⋯じゃあ、魔法少女ゆかちゃんで」
「ネコミミも捨てがたいわよ?
ヒロインの一人が着けてるけどかなり可愛いデザインしてるわ」
「その辺りは後で考えても良いんじゃないですか?」
「それもそうね⋯⋯」
そんなこんなで話は進んでいき、とある魔法少女百合モノの漫画とのコラボにしようかと言う事になった。
「(何で百合モノなんだろうって聞くのは野暮ってものかな?)」
心の中でそう考えつつも異論は無かったのでそのまま話を進めてもらう事にした。
ただ、ネコミミとか色々不穏な単語が聞こえて来たんだけど、全部盛りにしたりはしないよね?
「ふぅ⋯⋯こんなところかしら」
「ネコミミ魔法少女ゆかちゃん、これはイケますよマネージャー」
「そうなると問題は遥ちゃんの衣装よね」
「公式のカプ次第ですかね?」
「アタシとしては、このクール美女キャラが良いと思うのだけど、カプの相手が違うと解釈違いで荒れたりするのよねぇ」
「ネコミミの子のカプが誰なのかで大分変わりますよねこれ」
「もしこのフリフリの女の子だったら遥ちゃんがフリフリの衣装着る事になるわよ?」
「ゆ、優希くんと一緒なら耐えてみせます!」
「⋯⋯耐えるって言い方はどうかと思うのだけど」
「わたしが可愛い系着ないって知ってますよね!?」
「⋯⋯そう言われるとそうだったわね」
「あの、マネージャー?」
「次企画してたの、可愛い系なのよ⋯⋯」
「嘘と言ってくださいよマネージャー!」
「申し訳無いけど⋯⋯これが本当なのよ」
「うわーん! 優希くん! マネージャーがひどいよぉ!」
ぽけーっと二人を見ていたら突然先輩が僕に泣きついて来た。
「ふぇっ?」
「マネージャーがわたしに可愛い系の服着させようとしてくるんだよ!」
「えっと⋯⋯先輩なら、似合いそうだと思いますけど⋯⋯」
「えっ、そ、そうかな?」
先輩は思っていた反応と違ったからなのか少し困惑していた。
「ねぇ、遥ちゃん」
「マネージャー?」
「いっその事、ここで可愛い系の服着てみない?
そうしたら優希ちゃんに可愛いか、似合ってるか判断してもらえば良いと思うわ」
「うぐっ、確かに着ずに否定するのはナンセンスですよね⋯⋯良いですよ、着替えて来ますとも!」
「それじゃ、アタシが似合うと思う衣装を選定してあるからこの紙を渡すといいわ」
そう言って橋本さんがポケットから一枚の紙を取り出した。
「マネージャー、こうなるの分かってやりました?」
「そ、そんな事はないわよ?」
「⋯⋯まぁ良いですよ、それじゃちょっと行って来ますね」
そう言って先輩は部屋から出ていった。
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